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「きんのゆめ、ぎんのゆめ」
(第0部)[1/1]

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そこは一つの世界だった。
剣の丘。そうとしか表現できないほど、目に見える全ての場所に剣が突き立っている。まるで、墓標のように・・・・・・。
誰もがこの世界を見ればこう思うのではないか。

なんと淋しい世界だろう、と。

まるで、生の鼓動など感じられないような世界にたった一人。
赤い衣服を纏った青年が立っていた。右手には、豪奢な装飾の長剣を握っている。
彼の体は、なぜまだ生きているのだろうと思えるほどに、ぼろぼろに傷ついていた。今にも崩れ落ちそうな体を、右手に握った剣を支えにどうにか立っている。

ああ、これはもうだめだな。
死ぬ。間違いないだろう。これだけの傷だ、ここまで戦えただけでも、よくもったほうだと思う。
死ぬのは怖くない――――と思う。
だけど、どうせ死ぬのなら。
あれ? 今何を考えてたっけ。声がきこえる?

「――――――――――――」

「契、約……?」

「――――――――――――」

それで願いがかなうなら。目を開けても見えるのは干からびた大地と、血溜まりだけ。

「我が死後を預けよう。だから」

目を閉じる。思い出せる、あの黄金を。

「シロウ―――――あなたを愛している」

そう言って消えた彼女と。間違いかもしれないけど。

「アルトリアと会いたい」

この気持ちはうそじゃないと思うから。
この瞬間、青年、衛宮士郎の意識は闇に沈んだ。
右手に握ったままの剣を感じながら。


意識が浮上する。ここはどこだ?俺はあの時
っつ! 何かに引っ張られる感覚!!
そして視覚が回復した。そして俺が見たものは。

「屋根!?」

落ちていた、それも頭から。とっさに体の向きを変えるだけで精一杯だった。
それはまさしく破壊音とでも言うのだろうか?
俺の体は、すさまじい衝撃をうけながら、屋根を突き破った。


痛みはなかった。あの速度で落下したにしては少々おかしい気がする。
そして周りを見渡す。居間、だろうか。ここまで来るともう感嘆するしかないほど、めちゃくちゃになっている。
む?これは……そういうことか。
頭ににさまざまな情報が流れてくる。すこしずつではあるが。
つまり俺はあのときの契約で、英霊になったということだろうか?
確かに死後を預けるといったが。やはりあの時私は死んだのだろうな。
しかし、どうも体が重い気がするのはどうしてだろう。何か問題でもあるのか?
むう、状況がどうも見えてこんな。
いまだ送られてくる情報は微々たる物。
わかるのは私が死んで、英霊になってここに落ちてきたということか。
まて! まさかあのときの願いもかなうのだろうか!!
瓦礫、といっても差し支えないだろう。もとはなかなかの調度品だったようだが、その上に立つ。
ん?視線が低い?おかしいぞ。この低さは。
そういえば自分の姿を見たか?
篭手、だと?俺はそんなものを着けていた覚えはない。
これではまるで、まさか――――――――

聖骸布。確かに俺はこれを着ていた。問題ないなろう。だけどこんな形じゃなかったはずだ。
鎧。俺が使っていたのはせいぜい革鎧で、ここまで見事な重鎧ではなかった。
篭手、そして小さくなったとしか思えない手。
鏡はないがやはりこの姿は。

「セイバー」

ああ、声も記憶にあるもの同じだ。力が抜けて、へたりこんでしまう。
だけどこれはないだろう?確かにアルトリアに会いたいと願いはしたが体だけ? 会っても。
これはまいった。アルトリアの体ということはやはりオレは女性になっているのか?
確かめる気にもならない。

「――――――」

目の前の扉から声が聞こえる。開けようとしているようで、取っ手がガチャガチャと動くが開かない。
当然だ。扉が大きくゆがんでいるのだから。
声からして女性、それもまだかなり若いようだ。
そういえば、まだこの家の持ち主にはあってなかったな。
その女性は何かを叫んだ後、扉を蹴破った。
そして出てきた女性は。

「遠、坂・・・・・・」

俺のよく知る人物の、懐かしい姿だった。

「・・・・・・」

不意打ちだった。遠坂に聞かれたかと思ったが、それは無いようだ。
ん?なんだ、呆然としているが、俺を見てそうなってるわけじゃないようだ。
その視線の先には。時計?なんでさ。
遠坂の視線が俺に移る。わずかに眼を見開いたような気がしたが。

「貴女、大丈夫?」

は? 聞き間違いだろうか。遠坂から、俺を気遣う言葉だと!?
呆然としてしまう。そんな、アリエナイ。

「顔真っ青だし、腰が抜けましたって格好だし」

「へ?」

そうだ、なんでか体がセイバーのものになっててそれで――――
くっ、落ち着け! なんかさっきから信じられんことばかりだが、全部真実だ。
ならば、いまできることをしろ!

あわてて立ち上がる。ちっ、予想以上に動揺しているらしい。

「だ、大丈夫だ。どこにも、問題なんかないぞ」

「そうかしら?思いっきり問題ありますって感じだけど」

「そ、そうかな」

だめだ。ごまかすのは失敗だ。くそ、どうすれば。
遠坂の顔は心配しているというよりは、呆れてるって感じに変わったような気がする。
そしてその顔が俺のよく知る―――――

「はいはい、大丈夫だって、別にとって食いなんかしないから。少し落ち着きなさい」

「お、おう!」

そのまま深呼吸をさせられる。ああ、なんだか、落ち着いてきた気がする。
遠坂はニヤニヤ笑っているけど。これ、弱みになるのかなぁ。
だが、遠坂の表情が真剣なものに変わる。
む、これは重要な話かもしれん。私も、思考を切り替えねば。

「それで、大事なことを聞きたいんだけど……。貴女は私のサーヴァントかしら? 」

だが、遠坂の言葉は、俺の予想を上回る。

「サーヴァント、だと?」


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