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「ヒナタを本気で幸せにするシナリオがあってもいいんじゃないか。(1)」
(第0部)[1/1]

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時、戻る


ここは木の葉病院のとある病室。清潔感溢れるこじんまりとしたこの部屋で、皆に見守られながらその命を終えようとする1人の男がいた。


本当ならもっと待遇のいい部屋がいくらでもある。そう、『火影』にふさわしい部屋が。しかし、狭くても人々が気後れせず見舞いに来てくれるほうがいいという彼の意向により、ごく普通の部屋があてがわれたというわけだ。


「ナルト……まさか、アンタが一番乗りだなんてねえ……」

「……サクラ、ちゃん……」


そう――8代目火影、うずまきナルトなのであった。


考えてみれば、別におかしなことではない。いくら九尾の力があると言えど……いや、九尾の力があるからこそ、ナルトは体を鞭打ちすぎた。火影になるまでは自分を疎う人々を見返すために、火影になってからは人々の期待を裏切らないために。


真の平和の実現の難しさに歯噛みしながらも、忍大戦で先陣を切って戦った。

火影の仕事である慣れない事務作業や政略思考に追われた。

幾度となく他国、自国問わず暗殺者に狙われた。

一生懸命頑張っても時には報われず責められた。

何より、自分のふがいなさのせいで犠牲となった人たちの存在が自身を苦しめた。


「72歳、か……。もうちと長く生きて、老後の隠居生活ってやつを謳歌してみたかったってばよ」


むしろ、この歳まで生きながらえたことを奇跡と呼ぶべきなのかもしれない。


「うう……ナルト、死ぬ前に何か食べたいものある?なんだって用意しちゃうよお」

「おいおい、ここまで来て食べ物かよ。……ナルト、お前がそう簡単にくたばるかよ。IQ200の俺が保証してやる」

「IQぜんぜん関係ないって。ほら、あんたが好きな花、持ってけドロボーって感じで繕ってきてあげたわよ〜」

「チョウジ、シカマル、いの……ありがとうな」


癖はあるけれど、大切な仲間。


「チッ、さっさと元気になりやがれ、このウスラトンカチが」

「サスケ……そんなに目を腫らしながら意地張っちゃって、かっこ悪いわよ」

「う、うるさいぞサクラ!人のこと言えるか!」

「僕はナルトに救われたからね、命に代えてもなんとかしてあげたいところだけど……あ、ついでに言うとナルトはまだ71歳でしょ、ボケた?」

「今日は俺が原因だけど……サスケ、サクラちゃん泣かすんじゃねーぞ。あとサイ、お前のその毒舌がなんだか心地いいってばよ」


思い出の宝庫の、新旧7班組。


残念だが、彼らともまもなくお別れだ。だが、やって悔やんだことはあれど、やらずに悔やんだことはない。自分の忍道は貫けたと思う。あとは……。


「なあみんな……ゴホッ……最後にさ、一つだけお願いがあるんだってばよ」






ナルトの病室からそれ程遠くない別の病室――一族の懇願でナルトの部屋よりはそれなりに立派な造りだが――に、もう1人の患者、日向ヒナタがいた。そばに控えるのは、班員だったキバとシノ、そしてネジ。リーとテンテンは、歳のせいで涙もろくなったのか号泣するネジにちょっと引いていた。


……失礼。火影婦人、『うずまき』ヒナタ、である。


入院理由はちょっとした流行り病。年齢と共に低下するもともと高くない回復力、火影婦人としての疲労の蓄積、そして運の悪さというファクターのせいで、合併症をもたらしてたちまち重篤患者となったというのだから笑えない。医療班曰く、『ナルト同様』もう3日持たない。


「あは……『これでナルトに置いて行かれずに済むね』って冗談言ったら怒られちゃったー」

「バ、バカ!ヒナタ、お前何言ってるんだ!……ちっくしょー、ナルトの死亡宣告で気が弱くなったせいだ!いつかあの世で会ったらあいつぶん殴ってやる!」

「それはやめておけ、キバ。何故なら、死人に口なし、死んでいった者の追い討ちを考えるなど建設的でないからだ」

「くうっ……ちょっと待ってください、皆さん!ナルト君は死んだりしません!どんなに低い確率でもひっくり返すど根性の持ち主、それが彼です!」

「ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様ヒナタ様……」

「ネジ、不謹慎と言われるかもしれないけど……アンタにその泣き方は違和感ある」


――みんなみんな、かけがえの無い仲間。感染の危険もゼロではないのに何のためらいもなく見舞いに駆けつけてくれて、とても幸せ。でも、その余韻に浸れるのもあと僅かみたい。ああ、最後に……。


「ナルトに、会いたい……」



「おう!会いに来たぜヒナタ!」


……………………


「え、ええええ!?」

「そんなに大声出しちゃ体に毒だってばよ……ゴホゴホッ」

「ナ、ナルトのほうこそ何してるの!?寝ておかないと駄目じゃない!」

「へへっ……なんだかさ、無性にヒナタの顔をみたくなったんだってばよ」

「…………ナルト」


おそらく、死を感じたのだろうとヒナタは理解した。自分の死か、相手の死か、はたまた両方か……一瞬絶望してしまったが、体を押してここにきてくれたことが何より嬉しかった。


「さーてと、じゃあ邪魔者はとっとと退散しますか」

「そうね」


不敵な笑みを浮かべるシカマルにいの。


「ど、どういうことですか?」

「いいからいいから。全員撤収〜」


サクラが首根っこ掴んで連れ出した朦朧状態ネジを含め、ナルトとヒナタ以外全員が去っていく。さすがサクラ、70過ぎてもあの怪力は健在だ。


「え?え?え?」


混乱するヒナタをよそに、ちゃっかりとベッドにお邪魔するナルト。……別にいかがわしい意味ではない、純粋に居座ることにしただけである。幸い豪華なだけあって2人で寝るには十分すぎる幅のベッドだ。


「ごめん、俺の独りよがりでさ。皆に納得してもらったんだ、『死ぬまで2人っきりにしてくれ』って。……怒る?」

「……怒る。私が言いたかったのに、ずるい」

「おお、ヒナタは信じられないくらい独占欲強くなったってばよ」

「ふふっ、自慢の愛する夫ですから」

「うわー、かつてなら卒倒必至の大胆発言!」


微笑みあう2人。とても死期迫る状況とは思えない穏やかな空気が漂う。そして、その穏やかさを確信していたからこそ、仲間たちは2人に全てを委ねる気になったのだ。回診や給仕を受け持った人々は口々に、その仲睦まじさを称えた。


そして――きっかり3日後。寄り添うようにして深い眠りに就く2人が確認された。
ちょうど、ナルトの72歳の誕生日のことであった。


偉大なる火影として名を残し、仲間たちのみならず里の者たちに惜しまれながら、ナルトはその生涯を閉じた。











「……はずなんだよ……な?」


あの世に着いた心意気で目を開けると、夢でも幻想でもない……少年時代のかつてのアパートで、かつての自分に戻ったという『現実』がそこにはあった。




 
初めまして。林檎です。
決してナルサク嫌いじゃないけど、二者択一なら99%ナルヒナを選ぶ人です。
主にアニメ由来で、神回『告白』を契機にいっちょやってみようかと無謀な挑戦。
ナルヒナ許すまじって人はまことに申し訳ありませんがお戻り下さい。
テーマとしては至ってありがち、『ヒナタと結ばれたナルトが逆行』。
感想、批判お気軽にお願い致します。

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