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「アスカのアスカによるアスカのための補完【完結済】」
(第0部)[1/1]

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当作品は私の前作「シンジのシンジによるシンジのための補完」及び、その後日譚「〜Next_Calyx」の外伝にあたります。
 
この作品だけでお読みくださっても大勢に影響はないと思いますが、よろしければ、そちらの2作にもお目通し戴けると幸いです。

なお、Arcadia様への投稿にあたり、当時一般公開しなかったエピソードなどを追加した増補版としてお送りいたします。

                   Dragonfly 2007年度作品



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アスカのアスカによるアスカのための補完 プロローグ


いきなり目に飛び込んできたのは、見知らぬ街角と、そこに立つファーストの姿。
 
アンタ、そこで何してんのよ。と言ったつもりだったのに、言葉が出ない。
 
「えっ僕? だっ誰?」
 
代わりに紡がれたのは、喋るつもりなどなかった言葉。
 
問題は、それがなんだか聞き覚えのあるような声だったってコト。
 
何に驚いたのか、鳥の羽音。気をとられて振り仰いだらしく、視界が振り回された。自分の意志と連動してないから、なんだか酔いそうだわ。
 
飛び立ったのがハトだと判って向き直った視界の中に、ファーストの姿がなかった。
 
「まぼろし…? 幻聴だったのかな?」
 
実際に声を出している感覚はある。だけど、自分が喋ろうとしたワケじゃない。自分の体が勝手に喋り、勝手に動いてるみたいな…?
 
試しに手を上げようとしてみたけれど、ぴくりとも動かないし。
 
 
考えろ。考えるのよ、アスカ。
 
冷静に、自分の置かれた状況を分析するの。
 
さっき、この体が勝手に喋った時の声。あれってシンジの声に似ているような気がする。
 
骨伝導の関係で自分の声は低く聞こえるっていうから、たぶん、そう。
 
とすると、これはシンジの体なのかしら。今も勝手に歩いてるし、きっとシンジの意志で動いてんのよね。
 
 
…でもって、ワタシは?
 
憶えてんのは、シンジに首を絞められたことと、状況がわからずに反射的に言ってしまった「キモチワルイ」の一言。
 
ワタシ、あのまま死んじゃったのかしら?
 
それで幽霊になって、怨みを晴らすためにシンジに憑りついた?
 
…状況的にはそんな感じだけど、ぼそぼそ怨み言を言うのって卑屈でヤだな。趣味じゃない。
 
 
まっ、なんにせよ現状確認が第一だわ。ここがドコで、今が何時なのか確認しなきゃ始まんないもの。
 
さっきの感じからすると意志の疎通は出来そうだし、訊いてみるのが一番よね。
 
『ねぇ、シ…』
 
普通に喋るような感じで語りかけた途端、突風が体を振るわせた。ぶんぶんと電線が唸ってる。
 
シンジが振り返った先、山影から国連軍のらしい重VTOLが後退るように姿をあらわす。
 
それを追いかけるようにして現れた巨大な影は、
 
『第3使徒っ!』
 
「えっ? ダイサンシト? …て言うか、誰? どこにいるの?」
 
シンジの誰何が爆音に掻き消された。こんな街路を這うように飛ぶなんて、今の、巡航ミサイル?
 
『…効くワケないわ』
 
ワタシが喋ろうとした言葉は、やはり実際には発音されてない。でも、シンジには判るみたいね。今も、声の主を探そうとしてか、きょろきょろ。
 
『ちょっと!振り回すんじゃないわよ、酔うでしょ!』
 
「ごめん…」
 
『そうやってすぐ謝って!ホントに悪いと思ってんの?』
 
シンジに説教している場合じゃなかった。使徒に攻撃されたVTOLが落ちてきたのだ。
 
腰を抜かしたらしく、すとんと視界が低くなった。
 
幸い直撃コースじゃなくて、離れた位置に墜落。でも、途端に使徒に踏まれて火花が散る。
 
『こ〜んの、バカシンジっ!!』
 
腕でかばったぐらいで防げるわけないでしょ!とっとと逃げんのよ!
 
と、思ったところでシンジの体が動くわけがない。
 
ワタシも一緒にご臨終か、と覚悟しかかったところにタイヤの軋む音。シンジは気付いてないっぽいけど、何か車輌が割り込んできて爆風を遮ってくれたらしい。
 
一拍遅れて、シンジが目を開ける。
 
「ごめーん、お待たせっ」
 
見えたのは青いクーペで、ミサトがドアを開けたところだった。
 
 
                                        はじまる

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