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「【チラ裏から移転】タツミーをヒロインにしてみるテスト【オリ主】」
(第0部)[1/1]

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※ ハーメルンにて、『rikkaのメモ帳』内にて投稿しております。
 また、改訂版の『とある記憶喪失者の活動記録』をよろしくお願いいたします。



※ 途中ID、トリップが変わっていますが本人でございます。ご了承ください。






 彼女は考える。人間はいつだって、出会った人を判別する時はまずはその人の外見で判断する様に出来ている……と。

 服装一つとっても、色合いは自分にとって好ましいものか。その場所に適したものか。それが顔や体つき、更には肌の色や持っているカバンや時計等で大体の印象を決めつけてしまう。

 だが、それは果たして正しいのだろうか? 確かに身だしなみ等は大事かもしれないが、人の身体的特徴を勝手な偏見で見てしまうのは許されざることだ。そのような悪習に、人は一丸となって立ち向かっていくべきである。いや、いかねばならないのだ。


つまり――


「学生証まで見せたのに、鼻で笑って私を大学生だと決めつけたあの受付の女性には、どれだけ時間が掛かろうとも断固抗議をするべきだと私は思うんだ」

「いや待てとりあえず落ちつけ。男の俺を引きずりかけてる今の勢いで行ったら店員さんマジ泣きするからな!?」






『Phase.0 篠崎葵』






 褐色の肌を持つ長身の女性――龍宮真名をなだめながら、篠崎葵は深いため息をついた。

 時間は放課後、二人が来ているのは麻帆良学園内でも有名なスポーツショップだった。二人が所属しているバイアスロン部にて、ちょうど二人ともスキーウェアが買い替え時だったので、高校生以下なら学割が効き、その割引率が同じ系列の店の中でもっとも高いと噂の店に立ち寄ったのだが……

「すまないな葵先輩。代金はこれでいいかい?」

「ん、え〜と……。うん、ちょうどだな。まま、これでちゃんと割引で買えたし? そろそろ機嫌を直してくれ龍宮」

 結局二人で色々話し合った結果、葵が一度まとめて購入するという形を取ったのだ。龍宮としては自分が中学生だということをなんとしても納得させたかったらしく、断固抗議するという龍宮を篠崎がなんとか説得してこのような形に落ち着いた。

「さて、とりあえず道具もちゃんと揃ったし、この後はまた部活か……」

「おやおや、乗り気ではないようだね? そうか、また追いかけられて欲しいのかい?」

「いや、もう勘弁してください。てかなんで追いかけてきたんだよ! 結構本気で怖かったんですけど、主に風を斬りながら飛来してくる500円玉とか弾丸とかが!!」

「ハハハ。いやなに、芹沢部長と以前、大会前に逃げる部活生を捕まえたら食事をおごってくれるという話をしていてね」

―― ……あのイケメン部長、ちゃっかりやることはやってるんだなぁ。

 と、取りとめのないことを考えながら、なんとなくやるせない気分になる葵。
 とりあえず龍宮をジト目で睨んでみながら、

「確かに大会前はあれだけどさ。佐々木副部長の鬼のしごきには耐えられん。そもそも俺が部活に顔出した理由は龍宮も知っているだろう?」

「あぁ、もちろんさ。……記憶を取り戻す手掛かりにならないか? だろう?」

 篠崎葵は、半年前の夏休みに家族旅行で京都に行っていたのだが、その帰り道にて居眠り運転をしていたトラックと正面衝突。
 葵は幸い、軽い怪我で済んだのだが両親は二人とも帰らぬ人となった。
 そして、葵もまた頭を強くぶつけたのか、病院で目が覚めた時には自分の名前すら分からない状態だった。

 その後、3週間の検査入院という妙に長い検査入院を終え、新学期に麻帆良学園に――自分が通っている高校に帰ってきた葵にとって、目に入る全てが初めてのものだった。今まで親しかったという友人も、自分に優しくしてくれる先生も、まったく覚えがない。

 なにより、彼らは一様に自分にどこか『以前までの自分』を求める所があった。それがたまらなく嫌になった葵は人を避けるようになり、クラスでも孤立して……気が付いたら一人だった。

 その後寂しさも手伝ってか、断片でもいいから記憶を取り戻そうと、(あるいは自分を知らない知り合いを作ろうと)葵が、外部参加者として所属していた麻帆良大学の『バイアスロン部』に顔を出してみた。

 そこで待っていたのは、自分がその部活内ではあまりパッとしなかったという事実と龍宮真名という奇妙な友人。そして――




―― 鬼教官と恐れられる副部長の地獄の特訓だった。




「あれ絶対おかしいよね? 皆スキートラック5周の所が病院帰りの俺だけ『俺がいいと言うまで走り続けてろ! 休むことも笑うことも泣くことも許さん!!』ってどこの軍曹だよ。しかもホントに休憩ないんだけどあの人。筋トレから何から何まで」

 文字通り、副部長の特訓は地獄だった。それはもう、ベッドの上で3週間ゴロゴロしていた人間には明らかにキツすぎる特訓だった。

「そりゃ、確かに俺も部活を軽く考えていたのは悪いさ。しかしここ最近試験勉強やら、掛け持ちしていたらしい部活の整理とかで、ほぼ無休だった所に、一日位は休みが欲しいと思っていた所なのに……まさか追いかけられるとは思わなんだ……」

「あー、佐々木副部長は帰って来てからの先輩に目をかけてたらしいよ? 動きが日に日に良くなってるって。うん、芹沢部長も認めていたよ。もちろん私もだ」
「……ほう」
 
 なんだかんだで、葵も、そういう風に期待をかけられていると聞くのは、悪い気はしなかった。
 退院してから人と繋がりがなくなってというもの、この男、褒められるという行為に非常に弱かった。
 頑張って葵も不機嫌を装っているが、少しニヤけているのがバレバレである。部活に関しても今日はもう少し真面目にやろうかという考えが浮かんで――

「特に副部長は、私から逃げ切ったあの逃走劇を見ていたらしくてね。なんでもそろそろ特訓を3倍ほど密度上げるかって言って……そうそう、私も先輩の監督をするように言われている――。あれ、葵先輩? 急に走り出してどうしたんだい?」




 ―― 即座に投げ捨てた。




「ふざけんなあの鬼教官、俺を殺す気か! 龍宮、悪いが今日は俺部活を休むぞ―― うおっ! もう真後ろに張りつかれてる!?」

 葵が後ろを振り向いた時には、既に龍宮が追いかけて来ていた。




 すっごくいい笑顔で。



 それはもうすっっっごくいい笑顔で。



 ついでに言うなら、両手にエアガンらしきものを握り締めている。





―― ちくしょう、やっぱり逃がしてくれないか!!


 葵はとっさに辺りを見回して、逃走経路を探す。が、ちょうど葵達がいた場所は開けた地形で逃げる所は見当たらない。彼女を撒けそうな路地裏に入れる場所はここから少し離れている。


問題:逃げ道がとても遠い上に、すでに真後ろには怖い後輩が追いかけてきています。どうすれば?


結論:全速力で逃げ切るしかありません。


「ハハハ。そうか先輩、今度も私の目の前から逃げ切れると考えていたのか。うん、この間はまさか逃げ切れられるとは思っていなくてね。正直あの時は本当に……それは本当に悔しかったんだ。そんな私に雪辱の機会を与えてくれるとは――」




――先輩は本当に……優しいね?




 『優しいね?』という言葉を聞いた瞬間、葵は体中の毛が逆立つのを感じた。

「イヤイヤ、そんな気持ち一切ないから! 今の俺に優しさなんてバファリンの欠片程すらないから!! むしろ今優しさが必要なのはお前の方だと思うよ!? ほら俺こんなに疲れてるよ?!」

 必死に弁明(?)をしながら全力で逃走する葵。だが、龍宮にそれが聞こえた様子はなく、


「なら、その優しさにお答えして……少し本気でいかせてもらう!!」

「龍宮、この……! お前、俺のこと嫌いだろうっ??!!!」




 ―― まぁ、聞こえていたとしても意味などなかっただろうが……







 バイアスロン部でも有名な、驚異的な身体能力と射撃能力を併せ持つ、常に頬笑みを絶やさないクールビューティ『龍宮真名』と、その龍宮と数ヶ月前からよくよく一緒に行動しており、時には彼女と漫才じみた会話を繰り広げている、一部には彼女の『相方』として認識されている男、篠崎葵。

 この『麻帆良』という、色々な意味で特殊な場所でそこそこに目立つ男女がいきなり飛び道具アリの本格的な逃走劇を始めると、一体どういうことになるのか。




 答えは簡単『お祭り騒ぎ』である。





―― うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!

 いきなり熱を上げ出し、観客と化した生徒達を片っぱしから殴り倒していこうか等と物騒な事を、割と本気で考えながら葵は街中を駆けていく。



―― あの女の子が男を捕まえるのにファミレスの割引券5枚賭けた!

―― 俺は男の方にJoJo苑のサービスチケット10枚だ!!

―― 龍宮先輩頑張ってください! 私応援してます!! 男は豆腐の角に頭からダイブして死ねっ!!

―― 美女に追いかけられる男なんて死んでしまえばいいんだぁぁぁぁっ!!!



「てめぇら人が必死に逃げてんのを勝手に賭けのネタにしてんじゃねえ! それとそこの二人は後でぶっとばすからな!? 顔覚えたからな!!?」

 トトカルチョを始めだした集団に向かって罵声を上げ、ついでに自分を呪ってきた女生徒と男の顔を頭に刻み込みながら、葵はシミュレートした逃走経路に沿って全力で駆け抜ける。


「ハハ、先輩? 私が珍しく少し本気を出して追いかけているというのに、そんな簡単に他人に目移りするなんて……。妬いてしまうじゃないか」

「やかましいわっ!!!」








 記憶を失くし、自分が自分であるという自身も失い、友人達からも離れていった少年――篠崎 葵。

 未だに自らの存在に負い目を感じている少年だが、少なくとも今はこの退屈しない……もとい、退屈出来ない、少々過激な日常に幸せを感じて――


「よっし! 路地裏まであと少し、あそこに入り込めば――」

―― タンッ!  タンッ!  タタンッ!!

「うぉ、ちょ、待って龍宮これ洒落になってない! 牽制だとしても洒落になってないから!!」

「さすがだね先輩。まさか全て紙一重で避けるとは……っ!」

「当てる気満々だった!?」

「当ってもいいんだよ、先輩? なに、ただちょっと死ぬほど痛いだけだ」

「いいわけあるかぁぁっ?!」





―― 幸せを感じていると信じたい。








≪コメント≫(6/12 20:40)
 初めて投稿した作品ですが、嬉しいコメントからありがたい指摘まで頂いて、本当に感謝しています!
 初めてこのように物語を書くにあたって、頭の中の妄想を文章にするという行為が非常に難しく、皆様からの指摘に……答えられるようには努力したいと思います。

 改めて、コメントをしてくれた皆さん、本当にありがとうございます!

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