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「【完結】サモンナイト3 〜不適格者〜」
(第0部)[1/1]

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 第一話 始まりは必然で





 少女は真っ白になっていた。
 華麗に舞う。
 彼女の動きに合わせて、その姿から彷彿させる流麗さとは裏腹に嵐が生まれる。
 ここは舞踏会などではない。
 戦場だった。




 あ、また一匹吹き飛んだ……。
 ずしゃぁ!っと粘り気のある身体が粉々になるのを遠い目で見送る。
 目の前のゼリーっぽい軟体召喚獣の数を盛大に減らしていく女の子を、俺はぼーっと見つめていた。
 ……この娘ナニモノ?
 おっかしーなぁ、俺ってば先生として呼ばれたと思ってたんだけど。
 一日も経たないうちに(体感時間)生徒のが強いと判明。想定外ですよ。マルティーニさん、マジ何考えてんですか?
 なんて考えるうちにもまた一匹お星様になった。ナムナム。
 さすがに召喚獣も学習したらしく散り散りになって逃げ出していく。
 あっという間に消え去り、周囲には俺と白少女、そしてピンク色の豚のような物体Xだけとなった。

 と、白少女が突然俺の知っている姿に戻った。
 そういえばいつの間にか彼女は剣握ってたけど、今は無手になっている。
 はて、あの剣や白髪化は特殊技能なのか召喚術なのか。でもあんなデタラメな召喚術聞いたことないし。憑依にしてもあそこまで反則的なパワーを生み出すものなんてあるものなのか?
 などと、適当なこと考えてると、元白少女が振り向いた。満面の笑みである。

「え……」

 あれー?
 俺の顔見た瞬間に困惑の色を浮かべていますよ元白少女アリーゼさんってば。
 これはちょっと傷つきますね。
 でもそんな考えおくびにも出しませんよ、男の子だからね。

 俺はアリーゼの元へ向かい、

「大丈夫かい、アリーゼ?」

 心配そうな、だが暖かい笑みを浮かべる。
 どうよ? これが大人の対応ってやつですよ。
 実は白少女化してたアリーゼにめっちゃびびってたけどさ。今も若干腰引けてるけどさ。いや、なにあの白髪鬼って思うよ普通。こんなジェノサイドっぷりを見てて平静を保つのは一苦労です。
 そんな俺の心労は知らず、アリーゼは困惑した表情で辺りを見回している。
 
「探しもの?」

「あ、はい……その、他にだれかいませんか……?」

 ……ああ、そういうことか。
 不安げな彼女の問いに、俺は答えてやることが出来なかった。



 工船都市パスティスへ船で向かう途中に遭遇した嵐。
 船の中から投げ出されたアリーゼを救うため、俺は荒れ狂う海へダイブした。もちろん溺れた。
 気がつくと、見知らぬ砂浜に漂着していたのだ。
 奇跡的に俺の身体に異常はなく、また、俺の記念すべき初生徒となったアリーゼも特に怪我もせずに、俺のすぐそばに倒れていた。恐ろしいくらいの不幸中の幸いだ。
 
 まずは自分のいる場所を把握しようとアリーゼを背負い周囲を散策すると、わらわらといるわいるわゼリー軍団。
 到底迎え撃てる数ではなく、俺は迷わず逃げようとしたが、背中のアリーゼが突然の白化覚醒。
 いつの間にいたのか、ゼリー軍団中央にいるピンク色の豚のような召喚獣Xへ向かってアリーゼはまっすぐ疾走し、ゼリー大量虐殺が開幕したのだった。



「そんなはずありません!」

 俺たち以外の人は見ていないと言うと、アリーゼは絶叫し一人駈け出した。
 あー、またゼリー大量発生してたらどうすんねん……って自力でなんとかできるのか彼女は。
 ふと、視線を感じ振り向くとそこにはピンクの豚。

「キュピ」
「………」

 視線を交わし、同時に頷く。
 俺たちはアリーゼの後を追って走りだした。

 自力でなんとかできようと、放っておくわけにはいかないでしょう。俺の記念すべき初生徒なんだし。
 先生よりも優秀っぽいけどさ。




 翌日。
 結局アリーゼはあれから方々走り回っていたが、突然糸が切れるようにぱたんと横たわってしまった。
 体力の限界だったのだろう。気を失っていた。
 幸運なことに野宿ができるレベルの気候だったので、なるべく柔らかそうな草場に移動し、アリーゼを隣に寝かせ俺は周囲を警戒しながら一夜を明かした。
 このときピンクの豚はアリーゼの隣ですやすや休んでいた。召喚獣というよりペットだよこの豚。

 日が昇ると同時に活動開始。
 まずは船から流れ着いた使えそうなものを回収。
 使う人いなさそうだしね。頂戴します。

「……ん」

 アリーゼが起床し、俺の顔を見て「あっ……」と気まずそうに目をそらす。

 なにこれ……俺どんだけ嫌われてんの?
 でもめげない。先生ですから!



「というわけで、腹ごしらえに魚を獲ります」

 アリーゼを連れ使えそうな枝を探して削って、流れ着いたものを解体したりして即席の釣竿(仮)を作る。
 ぱぁっとアリーゼの目が輝く。
 島へ来て、いや、出会ってから初めての好意的な視線だ。嬉しい。
 だが、お嬢様であるアリーゼが釣竿(仮)にこんな興味を持つとは意外だ。
 どうせなので彼女の分も作成。

「ありがとうございます」

 いえいえ、この程度なんてことないよ。
 と応える間もなく、アリーゼ、海岸の岩場へ向かい岩をひっくり返しています。
 手早くミミズを針に貫通させ海に向かって大上段からの素振り。セット完了。

 ……このやり慣れてる感はなんですか。

 釣り好きなお嬢様ってめずらしいよね、ていうか行動がワイルドだよね。
 などと思いながら隣に座ってセット。待機。
 静かな規則正しい波の音をバックに、俺はようやくひと心地つくことができた。

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