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「王様の魔法の世界物語 (ネギま×FATE)」
(第0部)[1/2]

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 どうもはじめまして、ヴォルフといいます。この度こちらに私のssを投稿させていただきました。
 以前、少しだけではありますが書いていました。しかし、至らないところが多々あるかと思われます。表現が適切ではなかったり、間違った言葉を使ってしまうこともあると思います。
 そのような時にはどうぞご指摘ください。

 この作品はFATEとネギまのクロスになっておりますが、私の中での自己解決、および勝手な解釈があるかとおもあれます。設定はなるべく守るようにはしますが、もしかすると勝手な解釈によって読む方々に不快な思いをさせてしまうかもしれません。

 その場合には読まない方がよろしいかと思われます。

 これからよろしくお願いいたします。





「今度の眠りは…少し…永く―――」

 そう言って彼女は目を閉じた。
 傍らで看取ったものはその場から去り、その場に人の姿は無くなった。

 深い森の中に眠るようにして残された彼女。その前に二人の人外がどこからともなく現れる。
 その一人、ローブを被った者が彼女に歩み寄る。

「―――かくして王の下に持つべきものが戻り、王は眠り続ける。その夢の続きは決して見れぬ、遥か彼方の幻となった。
 しかし王よ、私は貴女がこのままここで眠り続けるにはあまりに惜しい。
 いずれ“目を覚ます”というのに、あなたの知る場所、知るものはおそらくなくなっているのだから。

 なれば、今この時から新たな道を歩むのもあるでしょう。
 王でも騎士でもなく、一人の少女として…夢の続きを見るのではなく、自らの手で創る。貴女らしい物語を創るのです。

 友よ、面倒をかけるが頼む」

 もう一人の老人がその言葉に頷き、何かの詠唱を始める。
 彼女の傍らに孔が開き、その孔はどこかに繋がるものだった。魔法使いの一人であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの技。

「これでどこかの世界に繋がる。
 しかし、良いのか? この孔に落ちたならば命の保証はできなくなる。それは望むことではないだろうに。
 それでも尚、こうすることを望むのだ?」
「…責務を果たし、間違ったことを望んだ。しかし、間違いに気づいたのだ。
 微笑むことがなかったその身に微笑みができた。初めからそうしていれば外見通りの少女。
 今まで微笑むことのなかったのだ、その分を微笑む時間ぐらいはあってもいいはずだ。
 
 命の保証ができない、そのような可能性に手を出してでも私は彼女をここから送り出すだろう。
 この世が必然で動くならば、その必然によって導かれるだろう。笑うことのできる世界に―――頑張ってきたご褒美が」

 そう言い、ローブを被った者は指を鳴らす。
 すると、すぐに大きなカラスが降り立つ。その姿は透けており、水晶のようだ。
 カラスは使い魔。それも時間がたてば崩れて消えてしまう。

「人目のつかないところまで運びなさい。
 向こうに着き、お前が動ける間は守りなさい」

 カラスはこくりと頷く。
 ゼルレッチは彼女の首にネックレスを付け、もう一人は彼女の腕にブレスレッドを付ける。一つは第二魔法の効果が秘められた物で、この世界と彼女を繋ぐたった一つだけのライン。もう一つは向こうの世界へ行った時の保険として、彼女を護る結界を張るためのもの。
 彼女の髪を織り込んで作られた結界は対魔力の強い彼女専用のもの。一般人には当然気付かれることはないし、もしも向こうの世界に魔術師がいても悪意を持った者がこの結界を突破しようとすれば相応の反応が返ってくる。
 これほどのものを作れるのは数少ないことだろうが、それを可能にするのはこの魔術師の技術の高さを伺わせる。


 そしてカラスが彼女を掴んで孔に降りて行くのを二人は見送る。
 ローブを被った者が口を開いて目を開けぬ彼女に声をかける。

「このマーリンの珍しい善行ですぞ。
 いずれまた出会えた時に貴女の笑顔を見てみたいですな。

 アルトリアよ、幸せな夢を―――」

 最後まで言葉を聞かせられはしなかった。それでも後悔はなく、マーリンは優しく笑っていた。

「そして貴女が楽しく困る世界であるよう願うとしよう」

 その笑みをいたずら好きの顔に戻しながら二人は消えていった。




 カラスがセイバーことアルトリアを降ろしたのはまだ朝には早く、月と星だけが空を彩っているどこかの森の中。
 元の世界と違う並行世界、平和とは限らないかもしれないだろうが、それでもこの森の中は眠っている。動物のほとんどが眠っている。
 ここは森のかなり深くに位置する場所で人は来ないと言っていいだろう。

 未だにアルトリアは起きる気配はなく、カラスもアルトリアの側を離れることはない。
 カラスに与えられた時間はほんの僅かしかない。それでもカラスは命じられたことを果たすために側を離れない。

 二日が過ぎた。
 カラスに残された時間はあと僅かしかない。ここに来てから動物は何匹か来たが、いずれもカラスの方に警戒を向けてすぐに去ってしまう。アルトリアには気づくことはない。


 そして音もなくカラスは消えてしまった。


 

 もう何年経っただろうか。
 春が過ぎ、夏が訪れ、秋を伺わせ、冬の空になる。それが何度も過ぎて行った。
 それでもアルトリアは眠り続ける。
 結界と言っても存在を隠すだけのもの。それでは雨も雪も風も通る。なのにアルトリアは眠り続ける。
 ドレスは汚れ、所々破れているところもある。だが、その美しさだけは損なわれることはない。
 眠れる森の王は眠り続ける。



 ある日の夕暮れ。小さな足音が聞こえる。人ではない足音。それはアルトリアに向かって近づいてくる。
 それは小さな白いオコジョだった。しかし、オコジョにどうにかできるはずはない。大きさも重さも全く違うのだから。
 少しするとオコジョは去った。


しかし、しばらくすると遠くから足音がする。動物でない足音。おそらく人間だろう。
 足音が近づいてくる。
 アルトリアが見える位置まで来たときは、人は走り寄って来る。
 共に来た白いオコジョを追い抜いて。


 少年がアルトリアを運んでくる姿を見た村の人間は驚いた。だがすぐに表情を変えて少年からアルトリアを代わりに運んでいく。
 運ばれていく姿を少年とオコジョはしばらく見ていたが、少年が口を開いた。

「カモくん、教えてくれてありがとう」
「どうってことないっスよ。
 それにあのままにしてたら熊に襲われていたかもしれないしな。でも何で近づくのに勇気がいるんだろうな〜?
 最初に声をかけるとか出来たのになんかしなかったんだよな」
「やっぱり不要意に話しかけたらいけないって思ったんじゃない? 抱えるぐらい近づかなかったら魔力の気配なんて分からなかったし、あんな結界があることも全然気が付けなかったよ。
 でも綺麗な人だったね」
「お、ネギの兄貴もそういうこと興味を持つ年になったのか?」
「? そういうことってどういうこと?」
「…やっぱまだ早いか」

 カモと呼ばれた話すオコジョはやれやれと言った感じでネギと呼んだ少年の肩にかけのぼる。

「アニキももう少しで卒業になるのか。遠くに行ったら寂しくなっちまうな」
「うん、僕もカモくんと会えなくなるのは寂しいけど立派な魔法使いになる為にはどこか遠くにいくことも必要になるからね」

 彼、ネギ・スプリングフィールドはもうすぐ魔法学校を卒業することになっている。立派な魔法使いになる為にはどこか遠くに行くことが必要になるかもしれない。
 しかし、彼はそれを不安に思いはすれ、必要なことだと思いどこへ行くことになっても頑張ることだろう。


 ネギはアルトリアを運んでから村の大人に詳しい事情を話した。
 カモが教えてくれたということは伏せたが、ネギの話を大人たちは信じて離れて行った。

 だが、大人たちが去ってからもネギはその場に佇んでいた。
 ネギはアルトリアが気になっていた。何故、あの場所に眠っていたのか。何故、ドレス姿だったのか。
 何より、魔力を感じたということはあの人は魔法に関わる人間だということ。
 疑問が浮かび上がるが、今の自分には何もできないと割り切ってその場を離れることにした。



 夜になり、自身が“おじいちゃん”と呼ぶ校長に呼ばれた。
 話の内容はアルトリアのことだった。

「どうだったんですか?」
「うむ、外傷も何もないが今は眠り続けておる。
 それにお前が気にかけておるように魔法使いに関わっているとみて間違いないじゃろ。だがワシにもわからぬ魔法の品が身に付けられておる。一つは魔力の残滓じゃが、ネックレスは全く理解できん。
 下手に調べたり魔法で何かしようとすれば何が起こるか分からん。それが彼女の眠りを続けさせる要因になっているかもしれんし、そうではないかもしれん。
 …これをもしも悪い考えを持つ者に知られたら彼女に何をされるかわからんしの。リスクはあるが彼女はこちらで保護することにした。
 今はネカネが面倒を看ておるよ。少なくとも触れたりして何か起こるものではないようじゃ」
「そうですか…」

 ネギは安心した。
 見ず知らずの人だからといってどうなってもいいという感じには思っていないからだ。
 

 校長の所から出て、ネギは姉の所へ行くことにした。
 

 ネカネが世話をするアルトリアを見たネギは目を奪われた。
 本当に綺麗な人だと思ったのもあるし、ただそこに寝ているだけでも絵になったからだろう。

「お姉ちゃん、どう?」
「うん、何も問題はないわ。
 本当にただ眠っているだけみたい。身体も拭いて綺麗にしたし」

 確かにネギが運んだ時には身体は汚れていた。でもそれが拭かれただけでここまで変わるものかと思った。
 


 ネギがウェールズにいる間にアルトリアは起きることがなく、ネギは麻帆良へ向かうことになった。




 ネギが麻帆良に行ってから約二か月。ウェールズは変わらぬ日々を過ごしていた。
 ネカネは時折アーニャの様子を見に行ったりと、普段の生活にそこまで大きな変化はなかった。

 今日もアルトリアの世話をしに行き、身体を拭いたりしていた。
 そして世話をする中で一つ不思議なことがあった。
 アルトリアの髪が伸びないのだ。個人差はあってもここまで髪が伸びないことに不思議に思っていたが、それも最近ではあまり気にしないようになっていた。
 今では意味はないと理解していながら眠り続けるアルトリアに話しかけるようになっている。
 ネカネが世話をするようになってからここに来ることが日課になっているのに加えてネギがいなくなってから寂しくなったというのもある。
 話す内容はなんのこともない日々のことだ。生徒が悪戯をした、今日は花が綺麗に咲いたなどだ。

「今日はね、ネギに手紙を送ったの。
 こっちでちょっとした事件があってね。ちょっとあの子にも関係があるしね。
 そろそろ私は帰ろうかしら。お夕飯の用意もしなくちゃいけないし。
 また明日ね」

 ネカネは立ち上がり、扉を閉めた。 
 しかし、少し歩いてから部屋の中に荷物を置き忘れていることに気がついてもう一度部屋に入った。

「あはは、忘れ物しちゃ―――ウソ…」
 
 ネカネはそこで信じられないものを見た。 
 部屋の中には上半身を起こしてこちらを見ているアルトリアがいたからだ。

「こ、校長―!!」

 あまりの驚きに部屋を飛び出して校長を呼びに行くネカネ。
 部屋に残されたアルトリアはこの状況を全く理解できずにただ呆然としているだけだった。
 何故、ここに自分が存在しているのかと…



「自分が誰かわかるかの?」
「私は…」

 アルトリアはそこで黙ってしまった。
 自分が何者であるかは理解している。だが、自分の名前をここで明かしていいものかと迷っていた。
 自分の名前を驕っているわけではないが知名度がある。それをここで明かしてしまったら厄介なことにならないだろうか。
 もう一つは何もなく、ただの名前だけ同じということで済まされるかだ。後者であったならば問題はない。だが、もしも自分の存在を目の前の人物たちが知ってしまって悪意ある者であればただでは済まないだろう。

 そして自分が何故ここにいるのか未だにわからない。予想もつかない。自分はあの森の中で死んだはずではないのか? なのに何故、自分はここでベッドに横になっているのか全くわからない。

「安心してよい。ワシ等は君を誰かに渡したりしないし、どうこうするつもりもない。
 じゃが言いたくなければ言わなくてもよい」

 優しく語りかける校長。
 人を見る目がないわけではない。アルトリアはこの人物達が信用の置ける者だと思うのだが、今はまだその言葉に甘えることにした。

「申し訳ありません、今は名を明かすことを控えさせてほしい」
「うむ。
 それでどうかな? なにか不具合はあるかな?」
「そうですね…身体が鈍っているようです。少々、動きがぎこちないかと」
「そうか。まぁ、当然じゃろうな。
 君を見つけてから約四か月、マッサージやストレッチはしておったがそれだけでは鈍っても不思議はないじゃろ」

 四か月という言葉に少々、疑問を持ったがそれ以外のことがわからないので話を聞くことにした。

「君を見つけた者の話では君は森の深い場所でドレス姿で眠っていたそうじゃ。
 君の周りには結界が張られておっての。かなり近づかなければわからなかったそうじゃ」
「結界? …やはり貴方達は魔術師ですか」

 アルトリアはネカネや校長に魔力が感じられることから魔術の関係者だろうと考えていた。

「? 魔術師とな? ワシとネカネは魔法使いじゃが」
「! 世界に五人しかいないという魔法使いが何故ここに…」
「はて、魔法使いはもっとおるが…この村にも少なくとも100人はおるのじゃが」

 アルトリアは会話が噛み合わないことを疑問に思った。
 凛から魔法使いが5人しかいないということを聞いたことがあったが、それが少なくとも100人? 何故?

「記憶の混乱かの?」
「まさか…ここはどこですか?」
「ここはイギリスのウェールズじゃが?」

 アルトリアは自分がべディヴィエールに看取られたはずのあの森の中から離れている。あそこはウェールズではない。

「今は西暦何年ですか?」
「今は2003年じゃが」

 千余年という年月が経っているということに驚き、それが眠っていたとしてもたった四か月しか眠っていないはずがない。
 

 アルトリアは地図を持ってきてもらい、おそらく自分が死んだと思っていた場所と発見された場所を見比べたが、明らかに違っていた。誰かに移動させられたという考えが思い浮かんだが、発見された場所に置かれてそのままというのはさすがにおかしい。
 それに結界まで張られていたというではないか。自分の対魔力から考えたら自分に掛ける結界すらも打ち消してしまいそうだが…いくら眠っていたからといって対魔力がないという訳ではないだろう。
 それでも結界を張ることができた。それはアルトリアという人物を知っていたからかもしれない。
 並大抵の魔術は効かないというのに、それでも結界はアルトリアを包んでいた。自分の他に自分のことをよく知っているとしたら、記憶としてちゃんと実感できるあの聖杯戦争で共に戦ったあの赤毛の青年…衛宮士郎と遠坂凛。そして―――マーリンしかない。

 しかし、それだけではこの噛み合わない話の説明がつかない。魔術師ではなく魔法使い。5人しかいないはずの魔法使いがこの村だけで少なくとも100人。
 アルトリアの知っている知識と所々違う。
 夢を見ているのか、それとも現実なのか…今は身体を実感できているから現実である可能性が高いと思われる。

 いや、もしかしたらマーリンのいたずらという可能性も…


 唐突にアルトリアは校長の髭を掴んで―――引っ張った。

「痛たたたっ!? な、なにをするんじゃ!?」
「マーリンではないのですか?」
「少なくともワシの知り合いにはそのような名前の者はいないが?」

 引っ張られた髭を労わるように髭を撫でる。
 この反応がマーリンではないことをどことなく感じ取ったアルトリアはますます訳がわからなくなった。

 目の前の人物達が嘘を言っているようには見えないし、周りからは他に何も気配を感じない。
 もうそろそろマーリンがアルトリアの狼狽を見て嬉々とした表情で出てきてもおかしくはない。

「大丈夫かの? 顔色が優れないようじゃが」
「いえ…大丈夫です…」

 
 少し話をすると、ここが自分の知っている知識のイギリスであるということはわかった。
 しかし、自分はあの時、消えたはずだ。衛宮士郎に告白をしてあの森の中でベディヴィエールに看取られた―――そこでそうだと思った。
 可能性の一つとして衛宮士郎と遠坂凛がいるかもしれないということに。
 もしも自分が消えた時代の延長線でここにいるとなれば、衛宮士郎や遠坂凛がいるはずだ。可能性としてはありえないことではない。

「あの、申し訳ないのですが私の知人に連絡を取ってほしいのです」
「ほう、それはどこに住んでいるのかな?」
「はい、日本のF県冬木市の衛宮士郎という人物なのですが…申し訳ありません、詳しい住所等は覚えていない…
 それともう一人、遠坂凛という人物を調べてほしいのです」
「ふむ…まぁ、なんとかなるじゃろう。日本には知人がおる。その者に連絡を取って調べてもらえばおそらくわかるじゃろ。
 しかし、それには多少時間がかかる。わかって連絡が来るまではここで生活してもらいたいんじゃがいいかな?」
「はい、構いません。
 申し訳ありません。ここまでしてくれることに感謝を」



 連絡が来るまでここで生活することにはなったがアルトリアには生活能力は全くない。食事を作ることはできず、ただ食べることしかできない。
 なので食事はどうするかと聞かれた時にお腹が鳴ってしまったことはアルトリアにとっては不覚だったかもしれない。

 会話を重ねていく中でアルトリアはこの人物達が信用の置ける人物であるということを確信した。アルトリアに向けるものに悪意はない。
 今はまだ早いが、衛宮士郎達から連絡が来た時には名を明かしてもいいかもしれないと思っていた。


 今この時までは。




 四日が過ぎ、アルトリアはネカネの料理に舌鼓を打っていた。
 イギリス料理は不味いというのが記憶の中にあり、それが士郎の料理によってしばらく忘れていた。
 しかし、今いる場所はイギリスのウェールズ。最初にイギリス料理が出てきた時にはアルトリアの顔を強張った。
 また、あの不味い料理を食べるのかと思った。

 しかしネカネの料理はとても美味しかった。それはアルトリアから涙が出るほどに。
 アルトリア曰く。

「成長したのですね…」

 そしてネカネはアルトリアの細身のどこに大量の食事が入るのか不思議でならなかった。
 ネカネの食事の軽く数倍は食べるアルトリアは姿勢も正しいしマナーも正しい。なのにふと目を離すと皿の上の料理はほぼ無くなっている。

「セイバーさん、本当に食べるの早いですね」
「はい、ネカネの料理が美味しくて食が進みます」

 何かと呼ぶことに不便だと思い、便宜上セイバーと呼んでもらうことなった。
 ネカネは人当たりも良く、怪しい人物であることには変わりはないだろうアルトリアには優しく接してくれている。
 それに彼女の職場である生徒もアルトリアのことを受け入れて、ここがとても居心地の良いものだった。


 その日の夕方、校長から学校に来てほしいということで学校に向かった。
 アルトリアの頼んでいたことがようやく調べられたらしい。
 そのことにアルトリアは喜びを隠せないでいた。この時、アルトリアの中では連絡が来たということが衛宮士郎と連絡がついたものだと思っていたからだ。

 それなのに―――

「冬木という土地はあったが、そこに衛宮士郎という人物はいないという連絡が入った」

 そう切り出された。
 アルトリアは目の前が真っ暗になるような錯覚に襲われた。

 最初に考えたはずだった。衛宮士郎がいるかもしれないという可能性が、この数日が楽しかったからかもしれない。
 衛宮士郎がいると…心の底できっと衛宮士郎がいると思っていた。それがどうしたことだろう。アルトリアの言った冬木には衛宮士郎はいないのだと、そう言われたことが衝撃だった。

 
 自分の愛した者が―――ここにいない。

 
 ネカネや校長はアルトリアの落胆の様子が尋常ではないことに心配になる。
 つい先程までは連絡がきたということに期待の表情を隠せないでいた。その表情はここにいる間の中でも最も輝いていた。
 それがここまで絶望の淵に追い詰められた表情するとは思いもしなかった。

 だが、校長はさらに言葉を続けなければならない。

「遠坂凛について何じゃが…彼女は見つかったよ」

 俯いていた顔を上げるが、それでも最初に聞いた言葉の影響が大きすぎたのだろう。アルトリアの眼に光はない

 その表情をさらに暗くしてしまうのではないかということに校長は切り出すことに躊躇う。
 だが、隠していた方が辛いこともある。

「じゃが、彼女は全く魔法とは関係の無い家系じゃ。
 冬木の地で宝石商を営み、どこにでもある家族じゃったということじゃ。四人家族で父母と娘二人の四人家族じゃ」

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