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「『NARUTO』 能ある狐は九尾を隠す〜第百一話〜」
(第0部)[1/1]

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背の高い木々がまるで雑草に思える程の巨体を誇る双方。

蝦蟇一族の総締め、ガマ親分ことガマブン太。

歴代の風影に封印されし生霊、砂の化身である守鶴。

溢れ出る殺気と闘気を露程も隠さず、一歩ずつゆっくりと歩みを進めた。

歩みを進める度に木々が倒れるが、不思議な事に鳥や獣達の喧騒は一切聞こえない。

ガマブン太と守鶴の放つ凄まじい威圧感で逃げ出したのであろう。

そんな時、巨体を誇る双方が互いの間合いに入った。

異様な光景である、手を伸ばせば確実に届く距離なのだ。




≪噂には聞いとる…守鶴っちゅージジイが成仏もせんで見苦しいとのう≫

≪蝦蟇一族…弱肉強食の最下層に存在するクソガエルだったかァ?ヒャッハーッ!!≫




互いが軽い罵声が浴びせた瞬間、双方の右腕が大きく振り上げられる。

そして力任せに相手を殴り付け、衝突した独楽のように弾き飛ばされた。




≪猫の便所風情が舐め腐ったクチィ聞きよってからにッ!!≫

≪テメェ…蛇の餌如きが粋がってんじゃねェぞッ!!≫




大きく吹き飛んだ双方だが無論、物理的なダメージは皆無。

今のはホンの挨拶程度でしかなく、互いの力を計っただけだ。

その証拠にガマブン太と守鶴に不適な笑みを浮かべている。

≪我愛羅ァ、アイツは俺様の獲物だッ!!≫

右腕を大きく振げ、膨大な量の空気を取り込んだ腹部に叩き付けた。




『風遁 練空弾ッ!!』




極限まで圧縮された空気の塊が放たれ、弾道にある木々が全て吹き飛ぶ。

しかしガマブン太も両手で印を結び、口腔一杯に水を溜め込んでいた。




『水遁 鉄砲玉ッ!!』




凄まじい勢いで吐き出された水塊が凝縮された空気塊と激突し、空間が爆ぜた。

その結果、辺り一帯に凄まじい量の雨が降り注いで視界が悪くなる。

≪ナルトッ、あの野郎はワシが殺るッ!!≫

そんな事はお構いなしにガマブン太が咆え、種族特有の脚力を持って全身で突っ込む。

視界が悪かろうが所詮は雨、蝦蟇にとっては不利になる筈がない。

≪命ァ…取っちゃろうかのうッ!!≫

腰に挿した愛用のドスを引き抜き、逆手に持って斬り付けた。

受ける側に回った守鶴は片腕に砂を更に集め、盾の形状を取る。

そして一閃―日中だと言うのに凄まじい輝きを放つ火花が霧散。

≪甘ェぜ…クソガエルッ!!≫

≪ぬお…ッ!?≫

ガマブン太のドスを盾で捌き、もう片方の腕を股座に押し込んで豪快に投げた。

山の如き体躯を誇るガマブン太が宙を舞い、追い討ちとばかりに膨大な空気を取り込む。




『風遁 多段・練空弾ッ!!』




先程よりも小さいが、速射性を向上させた空気の塊を連続で放つ。

ちょうど着地する寸前を狙った為、守鶴の攻撃を全て喰らうガマブン太。

そのまま弧を描くようにして地面に轟音と共に撃墜。

落下の衝撃で大地が砕け、その破片がかなりの高さまで飛ぶ。

≪ヒャッハハハッ!!もっと喰らわせてやるぜェ!!≫

大きく右腕を振り上げ、空気の張り詰めた腹部に振り下ろした瞬間…




『水遁 水砲弾ッ!!』




先程とは桁違いの大きさを誇る水塊が守鶴に直撃。

その凄まじい水圧によって守鶴の体が大きく揺らぎ、砂塵からもう一つ影が飛び出す。

≪今のはチィと効いたけんのうッ!!≫

抜き身のドスを片手に構えたガマブン太が凄まじい速度で突貫。




『奥義 蝦蟇ドス斬ッ!!』




今度は両手で柄を握り、地面を削りながら下から振り上げた。

ドスの刀身が鈍い光を輝かせ、守鶴の肩口に吸い込まれて行く。

そして次の瞬間、高く上げていた片手が斬り飛ばされて宙を舞う。

ガマブン太はそのままドスを振り切り、守鶴の後方へ間合いを離して急停止。

抜き身のドスを地面に突き刺し、キセルを口にしたまま大きな声で笑った。




≪ガハハハハッ!!ワシのドスは良い切れ味じゃろうてッ!!≫


≪よくも…よくもオレ様の腕をやりやがったなァ!!≫




片腕を切り飛ばされた守鶴は何処かしら苦しんでいる表情を浮かべている。

残虐非道を繰り返した砂隠れの老僧である守鶴、既に身体は朽ち果て霊魂だけの状態。

―にも関わらず、物理的ダメージが有効なのは何故か?

【ガマブン太…奴は生霊の筈、何でダメージを与えられる?】

ナルトも疑問に思ったのか、ガマブン太に尋ねた。

≪良い所に気付いたのう…それはワシと守鶴が同類だからだ≫≫

【……同類?】

≪ワシらは本来、『妖魔』の類に数えられ…面白い法則が存在する≫

【お前が妖魔…?】

≪最後まで聞けい。飽く迄も妖魔の『類』じゃ…そこらの蝦蟇は口も聞けんし、術も使えんじゃろう?≫

【ああ、お前が印を結んだ時に凄く驚いたからな】

≪人語を解し、術を行使する事のできる異形の存在…それが『妖魔』と呼ばれとる≫

【成る程な…九尾の奴と同じだ】

≪それで面白い法則とはな、『妖魔』同士での戦いは必ず傷を負うっちゅー代物じゃ≫

【奴みたいな生霊でも…か?】

≪元は人間だが永い間、生霊やっとったら例外じゃねェけんのう≫

今までの話を聞いていると一つの疑問が生まれる。

【奴は損傷した個所に砂を集めて再生する…この場合はどうなるんだ?】

≪言ったじゃろうて…面白い法則だと≫

ガマブン太の口の端が釣り上がり、不適な笑みを零す。

≪再生もクソも在りゃせんわ…自然治癒でしか治らん≫

今度こそナルトは驚きを隠せなかった。

明らかに自分達とは異なる法則、正真正銘―死ぬか生きるか。














≪傷が治らねェだと?…クソッ、どうなってやがるッ!?≫

斬り飛ばされた肩口を押さえ、悪態を付く守鶴。

≪オマケにこんなハッキリとした痛みなんて数十年振りだぜェ≫

かつて人間で在った時に感じた痛みと同様の代物。

生霊と化してから久しい感覚に何故か守鶴は喜びさえ感じた。

≪この感じだぜェ…殺すか殺されるってのはこうじゃねェとなァ≫

「遊んでいる場合か、早く奴を殺せ」

先程、ナルトと戦った時のダメージが大きいのか所々に傷が見える。

≪分かってる。まずはクソガエルをブチ殺すッ!!≫

天に向かって咆哮する守鶴、片腕を失っても戦意までは失っていない。

更なる凄まじい戦いが繰り広げられる予感。

否―それは最早、決められた事なのだ。
























(痛ッ…全身が軋みやがる)

「サスケ君、気が付いたのね」

意識が覚醒した瞬間、全身が悲鳴を上げる程の激痛がサスケを襲う。

呪印の暴走と蓄積されたダメージが少しでも回復した証拠だ。

「サクラ…戦いは終わったのか?」

「まだよ。ナルトが戦ってる」

「…だったらオレも…痛ッ!!」

「ダメだったらッ、後はナルトに任せてサスケ君は休んでて…」

サクラ達が避難した場所は辺りが一望できる小山の頂上。

戦闘区域からかなり離れた距離であり、此処ならば被害は及ばないだろう。

「やっとお目覚めか…うちはの小僧」

「なッ…お前はッ!?」

「騒ぐな。オレ達は敵じゃねェ…少なくとも今はな」

「再不斬さん、そんな言い方はダメですよ」

サスケの視界に映ったのは霧隠れの鬼人と呼ばれた再不斬と付き人の白。

以前、波の国での任務で戦って相手である。

白に至っては殺されかけた覚えも在った。

「何でお前達が…」

「騒ぐなと言った…無駄口を叩いてると殺すぞ」

首斬り包丁の切っ先をサスケの喉元に押し付け、低い声で脅す。

「ちょ、ちょっと止めなさいよ。サスケ君は怪我人なのよ!?」

「だったら大人しくさせとけ。無駄な面倒を増やすな」

それだけ言って切っ先を引き、興味が失せたと言わんばかりに背を向ける。

「済みません。別に機嫌が悪いんじゃなくてアレが再不斬さんの普段なんです」

無愛想な再不斬に代わり、サスケに謝罪する白。

だがそんな白に対してサスケは憎悪の視線を向けた。

「何でテメェが此処に居る?」

「恩返しの為です」

「…何?」

「詳しい事は又の機会に…今は身体を休めて下さい」

サスケの身体を気遣う白、そこに再不斬が声を掛けた。

「大した野郎だぜ、あの狐の小僧もよ…オレの予想を覆しやがる」

「珍しいですね。再不斬さんが他人を誉めるなんて…」

再不斬と白の会話の中に出て来た内容に反応するサスケ。

「里の被害は軽微と言ったが、木ノ葉に戦争を続ける戦力は残ってねェ」

「じゃあ、ナルト君が負けたら……」

「壊滅とまでは行かねェが、寸前まで行くだろうな」

「…ッ!?」

白の口からナルトの名が出た瞬間、サスケの表情が憎悪に彩られた。

間違いなくサスケが表したのは明確な殺意と敵意。

(サスケ君…何て表情をしてるの)

今までそんな表情を見た事がないサクラは、背筋に冷たい物が駆け抜ける。

呪印に侵食され、暴走した時でさえそんな表情は浮かべていなかった。

「クソガキも目覚めた事だ…そろそろ場所を離れるぞ」

「離れるって…ナルトはどうするの?」

「あん?俺達は兎も角、下忍のお前達じゃ邪魔になるだけ…安全な場所に行って貰う」

首斬り包丁を背中に担ぎ、再不斬はハッキリと理由を述べた。

「聞き捨てならねェ…」

「サスケ君ッ!?」

満身創意な身体を起こし、サスケは再不斬を睨み付ける。

「あん?」

「アイツが戦ってんのに…逃げられるかよ」

「どうしようもない馬鹿だな。勘違いしているようだからハッキリと言ってやる」

半ばサスケを見下すような視線を向け、再不斬はゆっくりと口を開いた。

「テメェと狐の小僧じゃ『質』が違う。死にたくなけりゃ黙って逃げる事だ」

相手を気遣う、と言った行動が最も不得手とする再不斬。

その正直過ぎる物言いにサスケのプライドが深く傷付いた。

「何で他の奴らはアイツを……」

今まで『落ちこぼれ』と思っていたナルトが評価され、自分は蔑ろにされて来た。

忍者アカデミーに通っていた頃とは全くの逆。

所詮、サスケを見ていたのはうちは一族の血筋と容姿しか気にしない奴らだけ。

自身の実力を試す為、様々な猛者と出会ったが殆どナルトしか見ていなかった。

久しく感じ得なかった劣等感がサスケの心と誇りを苛む。

「オレは『うちは一族』だぞ…あんな『落ちこぼれ』の奴に負けてたまるかッ!!」

鬱憤を晴らすかのように叫んだ瞬間、サスケの双眸に『写輪眼』が発動。

更に一度は退いたと思った『呪印』が浮き始め、全身の9割以上を侵食。

そして一気に崖を飛び降り、ナルトと我愛羅が戦っている場所に駆けて行った。

「あのクソガキッ、打っ殺されねェと分からないらしいなッ!!」

身勝手な行動を目の当たりにし、再不斬は瞬時にして頭に血が昇る。

「白、お前は小娘を連れて行け…」

「再不斬さんはどうするんです?」

「うちはの小僧を死なねェ程度に痛め付けて連行する」

再不斬の眉間にシワが寄っており、時折痙攣を起こしていた。

久方ぶりに見た本気で怒っている再不斬の表情。

「……本当に死なない程度にして下さいよ」

白はそう言うしかなかった。

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