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「ドラゴンクエスト5 宿命の聖母(DQ5 女主人公再構成 完結済 補遺追加)」
(第0部)[1/1]

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 大海原を滑るように一隻の船が行く。波は穏やかで船の揺れもよほど弱い者でなければ、酔いを催すほどのものではない。むしろ眠りを誘うほどだろう。
 その事を物語るように、船室では客の一人が穏やかな眠りの中にあった。しかし、船が大きく回頭し、船体が傾いたのを感じたのか、その客は目を覚ました。
「む、起きたのか? リュカ」
 船室にはもう一人客がいた。軽装の鎧を身にまとった、屈強な男だ。特に防具も無く剥き出しの腕は、しかし防具など必要ないとさえ思わせるほどに鍛え上げられた筋肉に覆われ、無数に走る傷跡が彼の潜り抜けてきた歴戦の跡を物語っている。
 姿こそ粗野だが、その風貌には気品と風雅さえ感じられる、見る者全てにこれは只者ではない、と思わせる男……彼の名はパパスと言う。
 一方、パパスに名を呼ばれたリュカと言う客の方は、まだ幼い子供であった。それもそのはず。リュカは今年で六歳になる、パパスの子供である。黒い髪と瞳はパパスとの血縁を窺わせたが、それ以外はあまり似たところの無い親子ではあった。しかし、二人はもう数年の間旅を共にし、心の底からの情愛で繋がっていた。
「おはようございます、父様」
 リュカはまだ眠そうな表情をしてはいたものの、丁寧に挨拶をした。
「ああ、おはよう。そろそろビスタの港に船が着く頃だろう……ん? どうした?」
 リュカが何か言いたそうな表情をしているのに気づき、パパスは尋ねた。
「妙な夢を見ました……どこかのお城の中で、父様が生まれてきた子供にリュカと言う名前をつけていました」
「なに?」
 パパスは一瞬真剣な表情になったが、すぐに破顔してリュカの肩を軽く叩いた。
「そうか。夢の内容をはっきり覚えている者は、高い魔力の持ち主と言う。お前は将来良い魔法使いになるかも知れぬな」
 褒められたリュカはにっこり笑った。
「ありがとうございます、父様。でも、父様のような強い剣士にも憧れます」
 パパスは頷いた。
「お前がそうなりたいなら、いつでも稽古をつけてやろう。それより、そろそろ港も近いようだ。世話になった船の人たちに挨拶をしてきなさい」
「はい、父様」
 リュカは頷くと、船室を出て行った。パパスは再び真剣な表情になり、日記をつけていた帳面を閉じた。
「あれほどはっきりとした夢を……それも生まれた時の光景を覚えているとはな。リュカはマーサに似ていると思っていたが、これも血か」
 パパスは一人ごち、遠い目をした。

 その頃、リュカは船長に挨拶をし、そろそろビスタ港であると教えられていた。ビスタ港はラインハット王国の南西地方にある小さな港で、リュカの家があるサンタローズの村の最寄港である。本来は定期船が通るような港ではないが、今回は特別に寄航してくれることになっていた。
「私はパパスさんの古い知り合いでね。パパスさんにはいろいろ世話になった。このくらいはお安い御用だ……リュカと言ったね。君もお父さんからいろんな事を学んで、立派な大人になるのだよ」
「はい、船長さん」
 リュカは頷き、船長の邪魔をしないように操船台から降りた。すると、台所の方に別の船員を見つけた。その船員にも挨拶しようと近寄ったリュカだが、その船員は背を向けていたにもかかわらず、リュカの接近に気づいていたらしい。いきなり振り返ると、大声で叫んだ。
「がおーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「きゃっ!?」
 その咆哮に驚き、尻餅をつくリュカ。その姿を見て、船員はしてやったり、と言う風に笑った。
「わはははは、こんな事で驚いては強い大人にはなれないぞ、坊主……」
 その笑いが急速にしぼんだのは、尻餅をついたリュカの姿を見て、ある事に気づいたからだった。転んだ表紙にリュカの服の裾がめくれ、そこには……と言った所で、リュカがさっと服の裾を押さえ、真っ赤に上気した涙目の表情で船員を見上げた。
「み……見ましたか?」
「へ? い、いや……その……す、済まん。見るつもりは無かったんだ。と言うか知らなかった。本当にすまない……まさか……」
 そこへ、船の司厨長がやってきた。先程の咆哮を聞きつけてやってきたのだろう。そして、どうやら状況を悟ったらしく、非難の目を船員に向ける。
「まーたお前は子供を驚かせて。悪い癖だぞ。リュカちゃんは……」
 司厨長はリュカを支えて起こしてやりながら言った。
「女の子なんだからな」
 その時、見張り台からの声が台所まで聞こえてきた。
「港だ! ビスタ港が見えるぞー!!」

 これは……数奇な宿命と血脈に導かれた、一人の少女の物語。

 ドラゴンクエスト5 〜宿命の聖母〜


−あとがき−
 はじめまして。航海長と申します。こちらへの投稿は初めてです。

 と、言う事で女の子版主人公によるドラクエ5再構成です。某所で見た女主人公のイラストがあまりにも可愛かったので、発作的に書きました。反省はしているが後悔はしていない。
 なお、話が進むにつれて若干原作とキャラの設定が違う面が出てきますが、あらかじめご了承ください。




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