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「リリカルブレイカー」
(第0部)[1/2]

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2012/02/05 全話通じて加筆訂正。話の流れそのものは変えていないので、最新話だけ読んでも話が通じるようになっています


第1話 『この手に魔法を』


「おおっ!?」」

 背後から迫る気配に身を屈める。寸暇を置かず先ほどまで頭のあった位置を高速で飛来する物体Xが通り抜ける。
 前方から聞こえる爆砕音。
 顔を上げればこちらに向き直る黒い物体と粉々に砕かれた壁。
 うわぁい。あんなのまともにぶつかったら即死である。あはは。

「なんて言ってる場合じゃねーっ!?」
 
 手を着いて立ち上がり、再び走り出す。振り返らなくても黒い物体が後を追ってきているのを感じることができる。
 今の状況を一言で説明すると真夜中に謎の黒い物体と生死をかけた鬼ごっこ!
 笑えない。とても笑えない。
 興味本位というか保護欲というかそんな気持ちで首突っ込んで、不要な犠牲になって死ぬなんて嫌過ぎる。

 どうしてこんな事態に陥ったのか?現実逃避も兼ねて記憶を振り返ってみる。
 事の起こりは数時間前。




 助けて……

 何か聞こえた。ちゃんとした言葉ではないが、はっきりと聞こえた。
 小学三年生の春。学校からの帰り道に、その声は脳内にはっきりと響いた。
 私立聖祥大学付属小学校に通う小学生である俺、遠峯勇斗は特筆することのないごく普通の小学生だ。
 ――ただ一点、前世の記憶とでも言うべきものを持っていることを除けば。
 たまたまその中に、この世界での人物やこれから起こる出来事の知識があったとしても、それらを活用したり必要とすることもなく、普通に生活をしていた。
 俺の記憶にある高町なのはや月村すずか、アリサ・バニングスと言った少女らと同じクラスになったとしても、それは変わらず、これからもそうだと思い込んでいたのだが、ここはちょっとしたターニングポイントのようだ。
 確かによくよく思い返してみれば、小学三年生の春といえば、もう無印の開始時期だった。今まで特にこれと言ったイベントもなかったからすっかり忘れかけていた。っていうか本当に魔法イベント起きるのか。
 脳内に響いた声に、どうしたものかと考える。原作どおり進めば無事に事件は解決する。するのだが、必ずしも原作どおりに行くという保障はどこにもない。
 だからといって俺が手出して良くなる状況がさっぱり思い浮かばない。何しろこちらは特別な力も優れた知恵もないごく普通の小学三年生である。
 何が出来るとも思わないが様子くらいは見に行くべきか。なにより魔法絡みのイベントという誘惑には非常に心惹かれるものがある。
 原作どおりなら淫獣、もといユーノが拾われて愛さんの病院に連れてかれるだけだから危険はないだろう。そうじゃない場合はそのときに考えよう。
 いまだに聞こえてくる声を頼りに移動していく。見知った公園の裏道を進んでいくと、程なくして地面に横たわってる小動物を発見した。
 本当にいたよ、おい。
 慌てて倒れている小動物に駆け寄り、様子を見る。予想通りというか俺の知っている通りに、怪我はしているがちゃんと生きている。早めに手当てすれば大事には至らないのだろう。
 安堵のため息を吐いたまではいいのだが、高町達はまだ来ていない。早いとこ病院に連れていってやりたいが、こいつと高町の出会いフラグをブレイクするのは色んな意味でまずい。かと言って怪我した小動物を放っとくのは精神衛生上非常に後味が悪い。どうしたものか。高町達が来るのにどんだけ時間がかかるんだろう。ってか、本当に来るのか。
 なんて、うーん、うーん唸って周囲の警戒を怠ったのがまずかった。

「あれ、遠峯くん?」

 背後からかけられた声にビクゥッと振り返ってみると、そこには駆けよってくるクラスメイト――高町なのはの姿があった。

「どーしたのよ、なのは?」
「遠峯くん?」

 高町に遅れて、月村とアリサもやってくる。

「遠峯?あんた、こんなところで何やってるのよ?」
「いや、何って言われてもなぁ?」

 返答に詰まるが、脳内に声が聞こえたからここに来ました、なんて正直に言えば電波扱い確定である。

「俺のことより、フェレットが怪我して倒れてるんだけどさ」

 倒れてるユーノを指差して高町達を誘導する。
 後はそのまま成り行きで三人と一緒にユーノを愛さんの病院に連れていくことに。ユーノは原作どおりに見た目ほど大した怪我でなく、命に別状はないとのこと。
 一度、目を覚まして、高町の指を舐めるのはどうかと思ったが。
 もう細かいことは忘れたけど、動物形態だと行動までケダモノそのものになるんだろうか。
 精神は肉体に引きずられると何かの漫画で読んだことあるし、俺自身、今の体につられて精神的に子供っぽくなった節もあるのでその辺はなんとも言えない。
 素での行動だったら、人間形態のユーノとどう接すればいいのだろう。人として普通に接することができるんだろうか。
 色々と思うことはあったが、今この場で俺ができることは何もなさそうだ。高町があの場に現れたということは、ちゃんと魔法の素養もあるんだろう。男として情けなくはあるが、あとは全部高町に丸投げしておこうと、安堵する少女たちを眺めながら心に誓う。








 とはいえ、暴走したジュエルシードがユーノを襲うことを知っているだけに、そのまま気にすることなく眠りに付くというのも難しいわけで。
 なんとなく気になって家を抜け出し、槙村動物病院まで様子を見に行ったのがまずかった。
 ユーノが助けを呼ぶ声が聞こえ、それから少しして高町の奴が建物の中に入っていくのと、俺が槙村動物病院に辿り着いたのはほとんど同時だった。
 それはいい。が、しばらくして物が壊れたような音がしたと思ったら、すぐに暴走体に襲われた高町とユーノが飛び出していく。
 それを見て、思わず壁から身を乗り出してしまった俺。
 俺とバッチリ目が合う暴走体。

「こ、こんばんわ?」

 とりあえず手を挙げて暴走体に挨拶してみた。

「……」

 ぎゅるりと、首?を傾げて嘗め回すように見られたような気がしなくもない。
 何がなんだかよくわからない生き物?に対して手を上げてる小学生男子。実にシュールな光景だ。

「じゃ、そゆことで」

 何事もなかったかのように回れ右。そして全力ダッシュ。

「やっぱり、追ってきたーっ!?うわっ、うわっうわーっ!?」



「遠峯くんっ!?なんでここにっ!?」

 俺の叫び声が聞こえたのか高町がユーノを抱えて戻ってきた。

「と、とにかく走れーっ!!」
「何々っ!?何が起きてるのーっ!?」

 高町と並んで全力疾走。怖くて振り返れないけど間違いなく暴走体は追って来ている。
 ちくしょーっ!こんなことなら大人しく家で寝てりゃ良かったーっ!

「君達には資質がある。お願い、ボクに少しだけ力を貸して」

 高町に抱えられながらケダモノが喋りだした。っていうか君、この状況でよく平然と話せるね。

「資質?」
「おまえ……動物が喋っても普通に受け入れてるのな」

 順応早いよ、君。

「遠峯くんこそ」

 や、俺は最初から知ってるだけだし。

「えっと、説明を続けていいですか?」
「おう、とっとと手短に迅速に要点だけ話せ」

 おずおずと聞いてきたフェレットもどきにぴしゃりと言い放つ。聞かなくても俺は知ってるが、高町はそうもいかない。
 すぐ後ろに危機が迫ってるのでさっさと済ませて欲しい。俺が余計な突っ込みいれたせいだろという野暮はなしだ。

「僕はある探し物の為に、ここではない世界に来ました」
「んな前置きはいらんからとりあえず後ろのをとっととどうにかしろーっ!!」

 すぐ真後ろに暴走体がいるのに前置きから説明してる場合じゃねぇだろっ!?
 さっさとレイジングハートを高町に渡してどうにかしろと叫びたい衝動をグッとこらえる。

「―――っ!」

 全身に悪寒が走る。背後に迫っていたプレッシャーが一瞬喪失する。
 雄叫びは頭上から。

「危ないっ!」

 俺は迷わず高町を突き飛ばし、自らもその場を飛びのく。次の瞬間には一瞬前まで俺たちがいた地面が砕け散る。

「あ、危ねぇ……っ」

 一瞬でも遅れてたらあの暴走体の下敷きになっていたところだ。ってか、あんなのの直撃を食らったらマジで死んでしまう。

「大丈夫か、高町!?」

 モタモタしてる暇はなくマジで大ピンチだ。さっさと高町に変身して貰ってなんとかしてもらおう。

「きゅう〜」

 高町は思いっきり目を回して気絶していた。
 ……あれ?おーい?

「いやいや、目を回してる場合かーっ!?」
「きゅ〜」

 ガクガクと高町を揺さぶるが正気に戻る気配はない。

「おい、こらユーノ!?早くどーにかしろ」 
「これをっ!」

 ユーノが口にした赤い宝石を俺に差し出す。

「僕の力を使って欲しいんです。僕の力を……魔法の力を」

 はい?このケダモノは何を言ってやがりますか?

「アホかーっ!?今はギャグやっていい場面じゃないんだぞっ!?勝手に俺の死亡フラグを立てるなーっ!!」

 怒鳴りながら思わずユーノの首を絞めつける。

「レイジングハートを渡す相手は俺じゃなくて高町だろーがっ!?俺に渡してどーするっ!?」
「きゅーっ!?きゅーっ!?」
「俺に魔法の力なんてあるか!そんな冗談言ってる場合か、えぇ、おいっ!?」
「じょ、冗談なんかじゃありませんっ。あ、あなたも僕の声聞こえてたんですよね、ならその子とあなたには魔法の素質があるはずなんですっ!」
「……マジ?」

 言われてみれば高町以外の人間には聞こえていなかった念話が俺にも聞こえていたことを思い出す。
 あー、魔法の素質が無いと念話も聞こえないんだっけ?

「ぎ、ギブギブっ!」

 言われてユーノの首を絞めたままだったことに気付く。
 フェレットもどきがタップをしている姿は非常にシュールでもう少し眺めていたいところだが、そんな場合ではないので手を緩める。

「げ、げほっ。早くしないと手遅れになります」

 高町は目を回してダウン。目の前には今にも襲い掛かってくる気満々の暴走体。淫獣は魔力切れで役立たず。俺の手には赤い宝玉レイジングハート。

「……マジで?」

 俺の呟きに答えてくれるものは居なかった。


「俺が……レイジングハートを?」

 高町の代わりに俺がレイジングハートを使う。想像すらしていなかった事態に困惑してしまう。だが、それ以上に魔法の力という普通では持ち得ない力への渇望が心の奥底から湧き上がってくる。
 高町が魔法の資質を持っていようとも自分には持ち得ないのだと思い込み、初めから諦めていた。例え生きていた世界が変わろうとも自分は凡人としてありきたりの人生を送るのだと。
 だけど今。俺の手の中にはそれを変えることの出来る赤き石。ずっと俺が使い続ければ原作フラグを全力全開でブレイクして色々終わる気がするけど、一回くらいならばいいかなー、と邪な思いが過ぎる。
 魔法という未知なる力を得る。果たして力を持たざる人間の何人がこの誘惑に抗えるのだろうか?

「上等……やってやるっ」

 目を回してふにゃー言ってる高町を横たえ、暴走体と向き合う。その際に暴走体の注意を惹き、高町を巻き込まないように距離を取っていく。
 暴走体を真正面から注視する。黒い霧が球状となり、そこから黒い触手のようなものを幾つも伸ばした自然界では絶対に有り得ない異形。
 恐怖に体が震える。漫画や小説ではよくある表現だがまさか自身が身を持って体験するとは思わなかった。つくづく今までの自分は平和な日常を送ってきたのだと思い知らされる。震える指を握り締め、今すぐにも逃げ出したい衝動を必死で押さえ付ける。
 よくもまぁそこの気を失っているちびっ子は平然と向き合えたものだ。その胆力に感嘆を禁じえない。やはり戦闘民族である一族の血が為せる業なのか。末恐ろしい。

「今から僕が言う言葉を復唱して!我、使命を受けし者なり」
「我、使命を受けし者なり!」

 ユーノの言葉を復唱しつつ、暴走体の一挙手一投足を見逃さないように注意を払う。
 声を張り上げる中、体の奥から湧き上がる興奮が僅かずつではあるが恐怖を凌駕していく。

「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て」
「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て」

 ドクン。自身の心臓の鼓動と共に全身を何か得も知れぬ躍動が駆け巡るのを感じる。

「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に」
「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に!」

 今ならはっきりと感じることが出来る。自分の中に眠る力。魔力が全身を駆け巡っていくのを。

「この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」
「この手に魔法を。レイジングハート、セェェットアァァァップ!」

 全身を支配する高揚感のままにレイジングハートを手にした手を掲げ、咆哮する。全身から溢れ出す力。それが収束し、


『connect error』
「「え?」」
 

 全て霧散した。

 
「……………」
「……………」

 何も起きない。 バリアジャケットも発動しなければさっきまで感じていた魔力の奔流も今は無くなってしまった。

「おい、そこのケダモノ?」

 極めて冷静かつ理知的に声をかける。

「は、はいっ!」

 ケダモノがとても怯えているように見えるのはきっと気のせいだろう。

「何も起きんぞ?」
「え、えーと……っ」

 ユーノが気まずそうに目を逸らす。

「何にも起きんじゃないか、えぇ、おいっ!!なんだよ、人に期待させておいて不発とか何の嫌がらせだよっ!返せっ!俺のドキドキとワクワクを返せーっ!!」
「そ、そんなこと言われてもーっ!?」

 ユーノの首を絞めて揺さぶる。なんだよ、なんだよ!せっかく燃えてきたのに!裏切ったな!俺の純真無垢でささやかな期待を裏切ったな!

「――――はっ!?」

 背後から聞こえてくる獰猛な唸り声。

「ぬぁーっ!?」

 気付いた時には暴走体が目前に迫っていた。とっさに飛び退いて体当たりをかわす。
 暴走体はかわしたものの、暴走体がぶつかったことで砕け散ったブロック塀の破片が降り注ぐ。

「痛っ、痛っ!って、うわぁぁっ!?」

 小さな破片どころか、直撃したら子供の頭などトマトのように押し潰しそうなデカイ破片を必死でかわす。危ねーっ、マジで危ねーって!?
 まずいまずいまずいっ!冗談抜きで洒落になってない。このままでは本気で死んでしまう。
 肝心の高町はというと、電柱の影でまだふにゃふにゃと目を回している。ああ、もうっ、なんか泣きたくなってきた。

「おい、ケダモノ。こいつを持って高町を起こせ。こうなったらもうあいつに任せるしかない」

 自分よりちっさい女の子に頼るとは情けない限りだが、他に方法がない。
 握り締めたレイジングハートをユーノに渡し、砕け散ったブロックの欠片を両手にそれぞれ拾い上げる。
 自分がこれから起こす行動の先にあるものを想像して、深くため息をつく。はっきり言ってやりたくない。物凄くやりたくない。

「で、でもそんな時間は」
「時間なら俺が作る。後は……まかせたっ!!」

 今の台詞がヒロインに言ったもののならまだ格好が付くが、相手の見た目が喋るケダモノで魔法少女のマスコットである。カタルシスも何もあったものではない。正直萎えるのだが、元々自分の手落ちなので誰にも文句を言えない。
 手にした石を投擲し、素早く走り出す。石をぶつけられた暴走体の意識は俺に向けられ、狙い通り俺の後を追ってくる。
 全力疾走しながらつくづく思う。こんなことになるなら大人しく家で寝てるべきだった、と。






 以上、回想という名の現実逃避終わり。
 どう考えても自業自得ですね、こんちくしょうっ!
 走る。ひたすら走る。幾つもの曲がり角を越え、他の人が巻き込まれないように人通りの少なそうな道を選んで疾走する。

「って、なんか伸びてきたーっ!?」

 風を切る音と共に飛来する触手を無様に転げまわって回避。コンクリートの壁があっさりと貫かれる。背中を冷たい汗が伝う。
 いかん、一瞬でも気を抜いたら死んでしまう。

「こんな死に方嫌過ぎるぅーっ!!」

 再び全力疾走再開。しかし悲しいかな。今の俺は只の一小学生。ちびっ子の足と体力では逃げられる距離などたかが知れている。

「やべ……」

 無我夢中で走りこんでいる内に袋小路にハマってしまった。完全に行き止まりだ。壁に背をつけ、息も絶え絶えな俺とじりじりとにじり寄る暴走体。
 誰がどう見ても完全無欠のピンチで詰んだ気がする。
 さらに今ふと思ったことがある。目を覚ました高町はどーやって俺を見つけ出すのだろう。
 今更気付いてもどうしようもなかった。
 絶望感がさらに増しただけだった。

「ちくしょーっ!せっかく魔力あるとか言われたのにこんなオチかーっ!!凡人は凡人らしくストーリーの本筋には関わらず、端っこでギャグでもやってろというのかーっ!?」

 世の理不尽を嘆いてみたが何も変わらない。暴走体が身をかがめ、俺に襲い掛かろうとした瞬間――


 桜色の光が溢れた。


「封印すべきは忌まわしき器。ジュエルシード!」
「ジュエルシードを封印」
『sealing mode. set up. stand by ready.』

 桜色の光に包まれた暴走体が瞬く間に宝石へとその形を変え、学校の制服を模した白いバリアジャケットに身を包んだ少女が手にした杖――レイジングハートの宝玉部分へと吸い込まれていく。
 どうやら間一髪命拾いしたらしい。流石主人公と書いてヒーロー。タイミングが絶妙すぎる。
 安堵のため息と共に脱力し、へなへなと座り込む。あぁ、疲れた。

「大丈夫、遠峯くん?」

 ジュエルシードの封印を終えた高町が意識を失ったらしいユーノを抱えてやってきた。

「疲れた。もー走りたくねぇ」
「あはは。お疲れ様でした」
「おまえさんもな。お疲れ様さん。おかげで助かったよ、ありがとう」
「ううん、こっちこそ。遠峯くんがいなかったらどうなっていたことか」

 高町の何気ない言葉がグサリと俺の胸に突き刺さる。

「あ、あはははは」

 ごめんなさい、ごめんなさい。俺がいなかったらもっとすんなり上手くいってました。などと口にすることもできず、心の中で平謝りしながら乾いた笑いを浮かべることしか出来ない。

「そ、それよりもどうやって俺の居場所調べたんだ?」
「え?えーと」

 俺の問いに高町はきょとんした表情を浮かべ、その視線を別の方向へと向ける。

「あ〜、なるほど」

 その視線を辿れば自ずと言わんとしていることが理解できた。視線の先には暴走体による破壊の後。これがあれば後を追うのはわけないよね、と。
 冷静になって考えてみれば暴走体の発する魔力探知という手もあったかもしれない。人間テンパるとまともに思考もできないもんだなぁ、としみじみ反省していると、遠くからサイレンの声が聞こえてくる。
 暴走体による破壊の痕跡を誰かが通報したのだろう。深夜とはいえ、あれだけ派手にやれば当然だ。逃亡していた俺らがたまたま一般人に遭遇しなかったのは僥倖だろう。

「も、もしかしたら私達、ここにいたら大変アレなのでは?」

 暴走体のせいで愛さんの病院も道端の壁とかエライことになっているし、俺が走ってきた道も見るも無残な状態だ。

「と、とりあえず遠峯くん、って、あれ?」
「おーい、置いてくぞー?」
「はやっ!?いつの間に!?」

 言われるまでもなく、誰かが来る前にずらかるしかない。事情聴取なんてされても困るし、何しろ見た目子供なのだからこの事とは無関係に補導されるのは確実だ。
 これでも品行方正で通してる身だ。わざわざ補導などされて面倒ごとに巻き込まれたくない。
 しっかし、これからどうするべきかね。
 待ってよー、と追いかけてくる高町の声を後に、今後の動向について思案する俺であった。
 
 


 
 とりあえず人気のない公園まで退避。

「ま、ここまで来れば大丈夫だろ。ゼェ…ゼェ…」
「う、うん。そーだね。ハァ…ハァ…」

 散々走り回ったせいか高町は完全にバテててベンチに座り込む。そーいや、こいつ運動はからきしダメだったけ。
 かく言う俺も暴走体から逃げ回った分、高町と同じくらいバテている。バテてはいるのだが、高町に対する後ろめたさから、すぐに座り込むのを我慢する。

「ちょっと、待ってろ。飲みもん買ってくるから」
「う、うん」

 息を切らしている高町にユーノをまかせ、足早に自販機まで走る。
 あー、足元がふらついてる。こんなことになるんだったら日ごろからもう少し体を鍛えておけばよかったかもしれないと思ったが、一人でそんなことを初めても三日坊主で終わるのがオチである。

「ほい、オレンジでよかったか?」
「うん、ありがとう」

 自販機から戻ってきたころにはすっかり回復していた高町に缶ジュースを渡す。成り行きでここまで一緒に来ちまったけどこれから先、俺やることねーなぁ。
 そろそろ体力も限界なのでベンチに座ってぐったりともたれ掛かる。あー、疲れた。当分走りたくねぇ。

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