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「第101話 君は俺のメイドなんだからな」
(第1部)[1/2]

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達也専属のメイドのシエスタ。
メイドとはいえやっている事は達也の妹の真琴の遊び相手が主である。
これは便利屋扱いではないのかと彼女はふと思うのだが、達也はシエスタに対して、

『いつもありがとう』

と感謝の意を(一応)送っている。
また彼女の為にリフレッシュ休暇も設けている。
おおよそこの世界におけるメイドへの待遇としては破格すぎる。
そんな休暇の日にシエスタはトリスタニア・チクトンネ街にある『魅惑の妖精』亭に来ていた。
シエスタの格好はメイド服ではなく、淡い草色のワンピースに白いリボンのついた麦藁帽子を被っている。

「で、休暇を出された理由が新しいメイド服を準備するからって、何よそれ」

魅惑の妖精亭の看板娘でシエスタの従妹でもあるジェシカが呆れたような表情で言う。
シエスタは実家から送られてきた野菜を届けに来たのだがそこで彼女に捕まってしまった。

「学院支給の服じゃ専属って気がしないからって・・・」

「いや〜、大事にされてるわねぇ〜」

一見酷い扱いのシエスタだが、真琴を任されているほどの信頼度はあった。
シエスタとしては信頼されているのは嬉しいのだが、もう少し何というか、関係を進めたいというか。

「シエスタ、その様子じゃタツヤをモノにしていないみたいねぇ」

「ジェシカ・・・第一タツヤさんは奉公先のご主人様のうえ、恋人だって・・・」

「へえ・・・恋人ね」

「いいんだ、私は二番目で。二番目に愛される女性でいたい」

「それは典型的な負け犬思考よシエスタ!私なら恋人?問題ないね!と言うわよ!」

「タツヤさん、かなり一途みたいだし・・・ジェシカでも無理じゃないの?」

シエスタの指摘にジェシカは固まる。
ジェシカはかつて達也を誘惑したが鼻で笑われた屈辱の過去があるのだ。
今でもその時の事を悪夢として見る。
自分を鼻で笑ったあの男は今は一領地の主である。

「捨て身で誘惑するべきだったかも・・・」

「ジェシカ?」

「いいえ、何でもないわ」

未練タラタラの発言を誤魔化し、ジェシカはシエスタに意識を向けた。

「シエスタ、二番目でいいだなんて消極的な考えはいけないわ。そんなんじゃ何時まで経っても駄目駄目!」

「そうかなぁ・・・」

「そんなアンタに私からプレゼントがあるのよ」

ジェシカはポケットから紫色の小壜を取り出した。
壜の形は何故かハートであった。

「昨日、これを私に飲ませようとした馬鹿な貴族がいてね。怪しいから問い詰めたら、飲んだ人の魅力を向上させるとか言ってたけど、これ絶対惚れ薬よ!」

「惚れ薬!?それって禁制の品じゃ・・・」

「この薬の効果は1日しか効かないらしいわ。だからばれないって!これをアンタが飲んでタツヤの前に立てば、タツヤは一日だけアンタにメロメロのはずよ!」

「メロメロ・・・」

シエスタの頬が赤らむ。
この子は根は純粋なのだ。誰がなんと言おうとも!
ジェシカが無理やりシエスタの鞄に、謎の薬をねじ込む。

「たまには夢を見たっていいはずさ。恋愛ってのは戦争さね。恋人がいるからって容赦しちゃ駄目だよ」

シエスタは思わず頷いてしまった。


さて、翌日の夕方、魔法学院のルイズの部屋に戻ってきたシエスタは、机に肘をつき、謎の薬をじっと見つめていた。
これを使えば・・・これを飲めば・・・達也は自分に振り向いてくれるのか・・・?
いや、こんな怪しい薬で人の心を惑わすのは卑怯だ。
ルイズを見ろ!モンモランシーの失敗作の薬を飲んで、妹だとか訳の分からんことになったじゃないか!
魔法の薬は怖い!人の心を簡単に書き換えてしまう!
シエスタは達也とルイズの仲の良さは微笑ましく見ていたが、アレは正直話を聞いただけでも爆笑ものだった。

好き好きと達也に言われたら気持ちいいだろう。
1日だけなら・・・いやしかし・・・いやでも・・・
そんな葛藤を繰り返すシエスタ。まだ効果も分かっていないのに幸せである。
しかし・・・自分がこれを飲んだとして、もし達也以外の人物と鉢合わせしたら?
想像したらぞっとした。
きゃあきゃあと言いながら、シエスタは悶えていた。


モンモランシーは最近、不安でたまらなかった。
理由はそう、彼女の彼氏である、ギーシュ・ド・グラモンの事である。
最近付き合いが悪いと思えば、風呂を覗いたりしている。
原因はティファニアの不自然なアレか?と問いただしたら、彼は自分の姿しか見ていないと言った。
・・・いや、それはその、ちょっと嬉しかったのだが、そんなわざわざ覗かなくてもねえ?
彼は自分になかなか手を出そうとしない。
・・・まさか、自分に魅力が足りないせいか?あと少し成長するのを待っているのだろうか?
モンモランシーは自分の胸部を眺めた。・・・普通より小さいが形には自身はあるのだが・・・。

「ううむ・・・たまには私の方からアイツを喜ばせなきゃいけないかしら・・・」

モンモランシーは考えた。
要はもう少し自分が大人っぽくなればいいのだ。
惚れ薬はいけないことだが、自分を磨く為の薬の使用は禁じられてはいない。
まあ、塗り薬とかで顔の皺やシミを消す魔法薬とか売ってるしね。
人の精神に作用する薬じゃないから問題ないでしょ、と彼女は考え、薬の調合をする事にした。


そんなことを彼女が考えてる事など露知らず、ギーシュはいつもの溜まり場で酒を飲んでいた。
隊員達にあまり羽目を外さないように忠告したのだが、酔っ払いに何を言っても無駄であった。
あの覗き事件以降、自分達の地位は一部隊員を除き、最下層に落ちてしまった。
あれだけ女の子の話をしていた団員達も、次々と愛想をつかされ、毎晩自棄酒の日々である。
自分の彼女、モンモランシーはよく許してくれたと思う。
本当に涙が出るほど良い彼女をもった。たまに殺されそうになるが。

「諸君!所詮女など星の数ほどいる!学院にいる女が全てではない!彼女達は男達の熱き挑戦が理解できぬ愚か者たちである!むしろそのような女達から逃れられて幸運だったと思おうではないか!!」

「よく言ったギムリ!そうさ!女なんて此処にいるだけじゃないよな!」

「勇敢なる水精霊騎士団の隊員達よ!我々の戦いはまだこれからである!嘆く暇などない!この杯に誓おうではないか!賢い女を娶ろうと!」

酔っ払いたちが賛同するかのような咆哮をあげる。
こいつらは現在、学院の女子生徒達から虫けら以下の扱いである。
ギーシュですら虫けら同等の扱いなのだ。
正直後悔の念しかないが、自分がやった事を認め、反省の行動を示すしかない。
そんな酔っ払いの騒ぎに参加していない二人の隊員にギーシュは気付いた。
達也とレイナールである。
今やレイナールは騎士団1の女性人気を獲得している。
彼も内心満更ではないはずだ。この前なんか下級生に手作りのクッキーを貰って隠れて食べていたし。

・・・そして達也は相変わらず女性人気は低いままである。
まあ、一旦変態たちを逃がしてるからという理由もあるのだが、自分達の人気が下がった分、レイナールに人気が集中してしまったので、達也の人気は殆ど変化なし。正直物凄く不憫である。しかしこれが現実。達也もそれを受け入れていることであろう。

「レイナール、何故かお前の評価だけ上昇したよな」

「・・・僕だけは客寄せパンダになるつもりはまったくないんだが」

「またまた。鼻の下伸びてたくせによく言うぜ」

そう言って水を飲み干し、新しい水をグラスに注ぐ達也。
ギーシュに気付いたのか手招きしている。
気が紛れるかもしれない。ギーシュはそう思って、二人のいる所に移動した。

ギーシュが騎士団の連中の馬鹿騒ぎから少し離れて飲んでいたので、俺はギーシュをこちらに来させた。

「しかし、これから如何する?僕たちの評価は完全に地の底だ」

「・・・奉仕活動及び、与えられた任務で戦果をあげるしかないね・・・」

「社会的地位が底値状態で与えられる任務なんて大したもんじゃないだろ。軽率すぎだなお前ら。もしあの浴場に真琴がいたら俺は追っ手の中に加わっていたぜ?」

「・・・もし追っ手に加わっていたら如何するつもりだったんだ?」

「ん?そこに噴水のある泉があるじゃん?そこに裸で逆さ吊りにして、水に入れたり出したりを繰り返す」

「そういうことを素晴らしい笑顔で言うの止めてくれない?」

ギーシュが呆れたように言うが、それぐらいしないとわからんだろお前ら。



俺がルイズの部屋に戻ると、張り紙がしてあった。
どうやら俺の事を考慮してか、真琴が文字を書いているようだ。

『おにいちゃんへ。ただいまおままごとをやっています。おにいちゃんはおとーさんやくですので、がんばってね!まこと』

・・・意味が分かりません。
とりあえず俺は扉を開けてみた。
・・・何故シエスタが三つ指ついているのでしょうか?

「お帰りなさいませ、旦那様」

何だよ旦那様って。
俺が周りを見渡すと、ベッドの上でルイズがげんなりした表情で、

「おぎゃー・・・おぎゃー・・・」

などと言っており、それを真琴が、

「あらあらルイズちゃん、おねえちゃんの子守唄がいやなの?」

などと言っている。
・・・えーと、何これ?
真琴がこっちを向いて、シエスタを指差す。
・・・ふむ、シエスタはお母さん設定か。

「ただいま」

仕方ない、付き合うか。
誰の脚本か全く分からんが。
シエスタが激しく頬を染めている。息も荒く目も血走っている。

「だ、旦那様、お食事に致します?それともご入浴ですか?あ、あ、あ、そ、それとも・・・」

シエスタはシャツのボタンを握り締め、目を潤ませて言った。

「わたし?」

俺は即答した。

「寝る」

「第4の選択肢!?」

シエスタはよよよ・・・と崩れ落ちるが、そのうち何かに気付いたように顔を輝かせる。

「寝るという事は三人目が欲しいというアピール・・・!!なんて事・・・!旦那様の気持ち、しかと理解いたしました!」

「真琴ー、一緒に寝るかー」

「無視!?夫婦生活倦怠期の設定なんですか!?」

シエスタが俺の足に縋り付いてきた。

「後生です旦那様!シエスタを捨てないでくださいませ!」

「ええい!お前はルイズの世話があるだろうが!離せ離せーィ!」

「いいえ!私は今日は旦那様と寝るのです!」

「娘を優先しろー!?」

夜中に何をやっているんだろうな俺たちは。
食事お風呂私就寝の四択から、倦怠期の夫婦の悲しい現実を演じて如何すると言うのだ。
誰だよこの設定の演出は。



使用人女子寮の厨房に手伝いに来たシエスタは深い溜息をついていた。
そんな彼女の様子を見て、同僚達はシエスタに話しかけてくる。
彼女達はシエスタの恋の行方を応援しているので、色々世話を焼いてくるのだ。

「シエスタ、この香辛料を試してみなさいよ!彼なら喜ぶんじゃない?」

「いや、彼はパン作りが好きなんでしょう?やっぱりここはこの小麦粉でしょう」

「タツヤ君って、今や土地持ち貴族なんでしょう?シエスタ凄いわよ!アンタ見る目あるわ!」

使用人から達也は君付けで呼ばれている。
それは彼が厨房に出入りするようになってからずっとであり、貴族になっても誰も達也を様付けしていない。
貴族の人気度は男子からはそこそこある達也で、女子からはほぼない達也だが、平民からの人気は結構あった。
悪魔と呼ばれようがなんだろうが、平民出身で特に威張らず、目覚しい功績を残している達也は平民の星であった。
といっても熱狂的人気ではなく、あくまで「あの人はパネェ」という程度の人気であった。
まあ、知名度は凄いのだが。何故か様付けする平民より、若やら君付けする平民の方が多い。これはどういうことなのか!?

「タツヤ君は普通の貴族とは違って元は平民だものね。それにあのミス・ヴァリエールと仲が良いだけあって気さくじゃない」

「何度も手柄を立てた殿方ですものね。貴族のお嬢さん達からはあまり人気がないのが信じられないわ」

「甘いわね、ローラ。タツヤ様は量ではなく質で勝負のタイプよ、きっと」

「何ですって、ミレーユ、それは一体どういう事!?」

全く、いくら暇だからって盛り上がりすぎだろう。
シエスタは料理を作りながら同僚達の色恋沙汰の話に耳を傾けていた。

「そういえばシエスタ。その服はどうしたの?」

シエスタの着ているメイド服は学院支給のものではなかった。
達也がシエスタの為に製作を依頼したメイド服は学院支給のそれよりスカートの丈が短く、膝ぐらいの長さしかなかった。
フリルが多めで、胸上の赤いリボンがチャーミングだった。足にはニーソックスを履いていた。
全体的に学院支給のそれより、女性陣の評価は高そうなメイド服である。

「タツヤさんに頂いたの」

「まあ、羨ましいわ!」

基本的にメイドは自分達が何かを貰うということはない。
だが、シエスタの雇い主は違うようだ。
そういう雇い主に雇われたシエスタは、同僚達から羨ましがられていた。

「でもね、シエスタ。タツヤ君を振り向かせるなら、素肌にエプロンぐらいしないと!」

「無茶苦茶な・・・それははしたないのでは・・・?」

「もう裸も見せてるのに何言ってるのよ。裸エプロンは殿方の夢だって小説にも書いてあったわ!」

「そうよ!本当は大きなお皿に貴女を載せて、『私を食べて』という手もあるんだけど、それは流石に引くわ」

「だ、駄目よ!タツヤさんの妹さんのマコトちゃんもいるし・・・」

「あー・・・タツヤ君、妹さん想いだからねぇ・・・そんなことしたら怒るか・・・」

「くっ!他に手はないと言うの!?」

「皆の気持ちだけでも嬉しいわ。ありがとう。私は私なりに頑張ってみるわ」

シエスタは微笑んで言う。
その表情を見ると、同僚達は何も言えなくなるのだった。


そのチャンスはいきなりやって来た。
何と今日は達也は飲み会がなく、更にルイズと真琴は一緒に風呂に入りに行ったのだ!
つまり現在、シエスタは達也と二人っきりである。
真琴がいたらやれない裸エプロンだが、やるなら今である!
シエスタは達也から死角になっている場所で、服を脱ぎ始めた。

シエスタがお茶を持ってくると言って数分が過ぎた。
俺はぼんやりとお茶が来るのを待っていた。

「お待たせしました、タツヤさん」

「ああ、有難う・・・って何だその格好は!?」

シエスタの格好は男が一度は夢想する、裸エプロンだった。
裸の癖に黒ニーソとカチューシャはつけている。なんとマニアックな。

「暑いんです」

「今日はどちらかと言えば冷えるからお茶をお願いしたんだが」

「暑いのです」

「今すぐ外に出てみろ」

「嫌です。寒いじゃないですか」

「矛盾してるよね!?」

こんな冷える夜に裸エプロンなど自殺行為にも程があるだろう。
シエスタが風邪をひいてはいけないと思った俺はルイズのベッドから毛布を拝借し、シエスタの身体にかけてやった。

「タ、タツヤさん・・・」

「君が風邪をひいたら、困る」

何せ彼女が体調を崩したら真琴を見てくれる人がいないからな。
ルイズは真琴を見る目が怪しすぎるからな。シエスタに任せるのがベストなのだ。
まあ、ド・オルエニールに行けばマチルダというプロがいるが。

「今日は冷えるらしいからな。そんな格好は視覚的には素晴らしいが、それで君が体調を崩したら意味がないだろう。無理すんな。というか無理はさせない。シエスタ、君は俺のメイドなんだからな」

雇い主として彼女が体調をこのような無謀な行為で崩すのは見過ごす事は出来ない。
シエスタは感激したような面持ちで俺を見て、頷いた。
シエスタの寒そうな格好を見てたら俺まで寒くなってきた。

「じゃあ、俺はトイレ行くから、ちゃんと服着ろよ?」

「はい、お気遣い有難う御座います」

いや本当に服着ろよ?目の毒だし、普通に風邪ひくから。
俺は震えながらトイレに向かった。


部屋に一人残されたシエスタは鞄からジェシカに貰った謎の薬を取り出す。
お茶の入ったグラスを見て、シエスタは思う。
これをお茶に注いで達也に飲ませたら、自分は何もかも捨て去って彼に迫ることが出来るのではないのか?
だが、それは卑怯ではないのか?薬の力を借りてだなんて情けないにもほどがある。
うん、私はありのままの私で戦おう。
シエスタはハート型の壜の蓋を開けて、壜ごと薬を窓から投げ捨てた。
闇夜に壜が消えたその時、シエスタはほっとした。
同時に肌寒さに身を震わせ、着替えの為に服を取りに行った。



「うん、これで調合完了ね」

モンモランシーはスズリの広場で薬の調合を完成させていた。
夢中になっていたら夜になっていた。
今日は肌寒くなるのに迂闊だったか。
広場で取れる薬草を現地で調合するのに少し手間取った。
モンモランシーはビーカーに入った緑色の薬品を手に、部屋に戻ろうとした。
後はこれを自分の部屋に持ち帰って、自分で飲んでみる。
調合は間違っていないから、飲めばきっと胸が大きくなる筈!それも気持ち悪くない程度に!
笑いを堪えるモンモランシー。彼女は大人っぽいというのを少し勘違いしていた。
その天罰なのか、彼女の頭に何か落ちてきた。

「あ痛!?」

その何かはビーカーにも当たったような音をさせて地面に落ちた。
モンモランシーが頭をさすりながら見ると、そこにはハートの形をした壜が落ちていた。
中には紫色の液体がちょっとだけ残っている。

「これは・・・魔法薬?」

モンモランシーは壜を拾い上げて匂いを嗅いでみた。
この香りは・・・ん?
モンモランシーは自分が持っていたビーカーを見た。
緑色だった液体の色が黄色くなっていた。

「・・・まさか・・・混ざってしまったと言うの!?」

モンモランシーは泣きたくなった。
こうなっては当初の効果は期待できない。
はっきり言って今の自分にはゴミも同然である。

「処分しなきゃ・・・」

モンモランシーが肩を落としながら踵を返すと・・・

「お風呂気持ちよかったね!ルイズお姉ちゃん!」

「そうねぇ〜。また入りに行きましょうね。それより喉が渇いたわー。あら、モンモランシー」

「ルイズ?」

「おお!?モンモランシー!それはもしかしてパインジュース!?丁度喉が渇いていたのよ!」

「あ、ちょっと待って!?」

モンモランシーの制止も聞かず、彼女が持っていたのがパインジュースと勘違いした上機嫌のルイズは、ビーカーに入った液体を一気飲みした。
・・・学習能力がない女である。

「おねえちゃん・・・それモンモランシーお姉ちゃんのジュースだよ?め!」

「あはは・・・ごめんごめん!それよりこれパインジュースじゃ・・・うっ!?」

突然ルイズは胸を押さえて苦しみ始めた。

「お姉ちゃん!?どうしたの!?」

「ルイズ!?言わんこっちゃない!大丈夫!?」

「うううううう・・・!!か、身体が熱いわ・・・!!」

良くみたらルイズの身体から煙のような蒸気が出ている。

「しっかりしなさい、ルイズ・フランソワーズ!」

「おねえちゃん!」

真琴は苦しむルイズを見て涙ぐんでいる。

「う、う・・・うわあああああああああ!!!」

ルイズの絶叫が広場に木霊したと同時に、彼女の身体から一気に蒸気が噴出し、彼女の姿が完全に隠れた。

「ルイズ!ルイズ!?」

モンモランシーは真琴を庇う位置に立ちながら、ルイズに呼びかける。
やがて蒸気は晴れていく・・・その中から人影が見える。

「ルイズ・・・大丈夫・・・?」

「ええ・・・モンモランシー・・・大丈夫よ・・・」

どうやら命に別状はないようだが、何だか妙である。
何故か声に艶がある気がするし、第一、ルイズの身長はあんなに高かったか?キュルケぐらいの背丈が・・・

「大丈夫どころか・・・いい気分よ・・・」

「おねえちゃん・・・?」

「ル、ルイズ・・・なの!?」

モンモランシー達の前に現れたのは妖艶な雰囲気を纏ったピンクのブロンド美女だった。
服のサイズが合わないのか、臍は丸出しで、スカートもあきらかにぱっつんぱっつんだった。
だが、それでもモンモランシーはその存在がルイズだと分かった。
・・・だって胸はそのままだもん。
そう、達也がいれば言うだろう。彼女達の目の前にいるのは『まな板カトレア』と形容するのが相応しい大きいけど小さいままのルイズだった。
ルイズはにやりと色っぽい笑みを浮かべ、モンモランシーに語りかけた。

「生まれ変わった気分だわ・・・自分が自分じゃないみたい。体中に愛が満ち溢れる感じ・・・お礼を言わなくてはね、モンモランシー」

「そ、それはどうも・・・!」

「この溢れ出る愛情を貴女達にも分けてあげたいと私は考えるわ・・・」

瞬間、モンモランシーの身体に悪寒が走った。
これは・・・ヤバイ!

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