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「ドラクエ?──ケフカが花嫁(FF6×ドラクエ5)」
(第0部)[1/1]

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焼け焦げて脆くなった建物が目の前で倒壊する様を見た。少年が巻き添えを食らう様を見た。
砕けた煉瓦の破片が瀑布となって、少年の頭部に降り注ぐ様をこの眼で見た。
道端に転がったゼリー状の球体──赤い網膜に覆われた少年の眼球。生温い風が首筋を舐める。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
答えるものは何も無い。何も無い。動くものは何も無い。何も無い。煤で汚れた煉瓦の破片が転がり続ける。
胸元が汗に濡れてべとついた。むかつくようにべとついた。脇下が滑る。汗で滑る。不快に滑る。
裁きの光が激しく眩いだ。
草も土も木も水も、全ては炎に包まれた。忙しなく蠢く太陽/踊る/踊る/ケフカは踊る。
人も燃えた。家も人も燃えた。建物も家も人も燃えた。屋敷も民家も人も赤ん坊も野良犬も燃えた。
裁きの光が激しく眩いだ。
黄色く汚れた歯も、赤い唇も、しわがれた喉も、朗らかな嬌声も灰にまみれて……目眩く黒い灰にまみれて……
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
太陽の熱気、かぐろく艶っぽい髪を垂れ下げたしゃれこうべの頭上に熱の雨が降り注ぐ。
ぽつんと生えた針金の雑草。ぽつんと生えた惨めな針金の雑草。光に晒されてぽつんと生えた黒く惨めな針金の雑草。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
血の気配に/肉の気配に/骨の気配に/存在の気配に/死の気配に異常な執着心を見せながら、黒蝿がたかり群がる。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
くばかりの太陽は腐敗の象徴に過ぎず──太陽の熱があらゆる骸を腐らせる。腐らせる。
腐肉の匂いに誘われた虫どもが亡骸を黒く塗り替える。
毒の太陽、毒の熱、毒の光、毒の雲、毒の空。太陽を殺せ。昼を殺せ。太陽を殺せ。昼を殺せ。太陽を殺せ。昼を殺せ。
黄白色の蛆虫どもがウゾウゾと蠢き、眼窩から這いずり出ては地面へとこぼれ落ちる。
灰色に濁った眼球が紫の菌糸を引いて眼穴から地面へとこぼれ落ちる。
毛穴からにじみ出る脂汗が蒸発する。蒸し暑い。蒸す。蒸す。湿りと熱が屍の肉を痛めつける。
砕けた道の端では、陽に焼けて垢と埃にまみれて不健康に黒光りする肌をした母親が赤ん坊に乳を与えていた。
でも、娘は栄養失調で乳房からはもう乳の水気は失われていた。
痩せ細った母親の乳首を懸命に吸い続け、一滴の母乳も飲めないまま、赤ん坊は母親の腕に抱かれて愛らしくつつましく息を引き取った。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。
なんて美しい光景なんだろう。ケフカは微笑を浮かべた。全くなんて美しい光景なんだろう。
踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。踊る/踊る/ケフカは踊る。


私は天使。私は残酷な天使。私は心無い天使。私は復讐の天使。私は楽園から追放され、地上へ堕ちた天使。

私は滅びた。私の肉体は滅びた。私の壊れた魂は闇の中を彷徨い続けた。私の呪われた魂は当ても無く彷徨い続けた。

一体誰なんだ。私/俺/俺様/ぼくちんにこんな酷い孤独をもたらしたのは。一体誰なんだ。

……フォホッホッホッホ!!!


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ビスタの港に漂う香りには、磯の匂いなど何一つ感じられなかった。あるのは白い腹を見せている死んだ魚の生臭い悪臭だけだ。
道化じみた色とりどりのカラフルな衣装の上から真紅の外套を羽織り、極楽鳥の羽根を髪飾りのように頭の後ろに差した金髪の少年が、
目の前に広がる広大な地平線を見渡す。
顔中に塗りたくられた白粉、唇は濃いルージュに彩られ、その容貌はどこからどうみてもまともな奴には見えない。
というよりもキ○ガイそのものだ。そして実際の所、彼はまさしく正真正銘のキ○ガイだった。
「どうだ、ケフカ、調子のほうは?」
パパスが幼い息子に尋ねた。それに対して返ってきたのは
「シンジラレナーイッ、なんだ、このど田舎はっ!」
というケフカの辛辣な返事だった。
「そうか、喜んでくれて父も嬉しいぞ」
「シンジラレナーイッ、シンジラレナーイッ」
はしゃぎ回るケフカに優しげな視線を向け、パパスは微笑みを浮かべた。
だが、その表情はどこか歪であり、疲れ果てているようだった。狂った我が子でも実の息子ほど愛しいものはない。
行く先々で問題を起こすケフカに何度も手を焼きながら、それでもパパスは懸命に息子を守ってきたのだ。
時に神経をすり減らし、またある時は夕陽に向かって意味も無く叫び声をあげながらも。
「それじゃあ、私は少し用事があるから、ケフカはここで遊んでなさい」
パパスが最後まで喋り終える前にケフカの姿はもうどこかに消えていた。
相変わらずだなと思いながら、パパスが小用を済ませようと港にいる知人の待つ小屋へと赴いていく。
その足取りは重くぎこちない。全てはケフカの非行ならぬ奇行によるストレスが原因だった。

一方、ケフカはといえば、港をさっさと出ると三匹のスライムを見つけたのでいつものように焼き殺して遊んでいた。
「弱いっ、弱いっ、弱っちいスライムは焼けちゃえっ、ファイアっ!」
ケフカが汚物は消毒だと言わんばかりにスライムにファイアの魔法を浴びせる。ケフカの辞書に慈悲の文字はなかった。
逃げる間もなくオレンジ色の毒々しい炎に包まれ、スライム達が一瞬で蒸発していく。
苦しまずに死んだのがせめてもの救いというものか。
興に乗ってきたケフカは草原を駆け回りながら、手当たり次第に目に付いた魔物達をファイアの呪文で原子レベルにまで分解していった。
というのはケフカのファイアの呪文はあまりにも強力で、もはや炎というよりも数十万度の熱を誇るプラズマジェットと化していたからだ。
数十秒後、魔物を殺すのに飽きたケフカはつまんない、つまんないと喚きながら青草を蹴りつけ、花々を踏み潰していた。
彼の行動は常人には理解できないが、理解したいと思う人間もいないだろうからここでは説明を省かせてもらう。
とにかく、彼は今新たなる人生の一歩を踏み出したのだ。

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サンタローズの村は鄙びた……といえば聞こえが良いが何の特産品も目新しい物も無い寂れた村だった。
昔は貴重な宝石の原石が取れたと言われているが、昔は昔、今は今である。
こうしてサンタローズの村では、ベッドの上で無駄な余生を送り、緩慢な死を迎えつつある痴呆症の老婆のように時間が過ぎていくのだった。
「シンジラレナーイッ」
何が信じられないというのだろうか。この村のうらぶれた有様にか、それとも村の入り口で立ったまま寝ている門番にか。
いや、どれも違った。ケフカはその目ではっきりと見たのだ。
巨大なイボのような魔物が村の北からこちらに向かって走ってくる様子を……。
そのイボみたいな奴の輪郭が近づいてくるたびに鮮明に浮き上がり、そしてケフカはついに結論に達した。
これは恐ろしく太った、ただの親父であると。
暑苦しく胸を上下させ、肩で息を切らす人間ボンレスハムがパパスの手を両手で強く握り締めた。
「お帰りなさいませ、旦那様!」
汗でべっちょりと濡れた掌で握られながらも、パパスは表情を崩す事も無く言った。
「久しぶりだな、サンチョ」
「ええ、本当にお久しぶりです。それにお坊ちゃまも……」
久々にパパスとケフカに再会を果たしたサンチョ──しかし、彼の目に飛び込んできたケフカの姿と格好には、
赤ん坊の頃の可愛らしい面影など何一つ残されてはいなかった。
サンチョの受けたショックは押して知るべしだ。
「シンジラレナーイッ」
これはケフカではなく、サンチョの叫びである。

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ダンカンの妻とビアンカが唖然とした表情を浮かべていた。理由はケフカの珍妙な身形のせいである。
気を取り直し、ビアンカはケフカに挨拶を交わした。
「お久しぶりね、ケフカ、あたしの事覚えてる?」
ビアンカが一歩進み、ケフカに握手を求めるように手を差し出す。ケフカはビアンカに言った。
「性病持ちっ!」
その場にいた全員が固まってしまう。だが、これはケフカなりの挨拶の意味があったのだ。
そしてそんな挨拶など狂人以外に通じるものではなかった。

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