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「変態村」
(第1部)[1/1]

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 夜の闇ほど美しいものはない。漆黒の艶やかなベールは何もかも優しく包み隠してくれる。
 微温湯で白粉を洗い流し、クシで髪をとかすケフカ──暗鬱とした彼の裸体はまだ未完成ではあったが美しかった。
 華奢な肩幅、白い肌、石鹸水で泡立った細く括れた腰回りと静かな丸い臀部。そして股間から垂れ下がった真珠色の男性器。
 少女めいた少年の若々しい肉体──儚げな首筋から脇腹へと下っていくなだらかな美。
 項についた石鹸の泡を湯で流し、ケフカは刺繍の入ったビロードのズボンをはいた。
 それから化粧を直すとケフカは夜の闇へと繰り出した。向かった先はサンタローズの酒場だ。

 外へ出て、ケフカが下へと歩いていく。橋を渡って宿屋の前で止まった。酒場は二階にあった。宿屋の階段をあがっていく。
 酒場に入ると途端に安っぽい葡萄酒の酸っぱい匂いがケフカの鼻腔粘膜に触れた。
 バニーガールの衣装を纏った女が小さな闖入者のその出で立ちに一瞬驚き、それからクスリと忍び笑いを漏らした。
 「坊や、ここは子供が来るところじゃないのよ」
 「うるさい、安酒場の給仕めっ、それよりも俺様に酒を持ってこいっ」
 バニーガールに向かって、尊大な態度を取りながらケフカが空いていた酒場のテーブル席にドカッと腰を下ろす。
 「心配しなくても金ならあるぞ、ほれ」
 懐から取り出した皮袋から金貨を何枚か取り出すとテーブルの上にばらまく。
 ケフカの傲慢とも言える口調と態度にバニーガールが鼻白んだが、金を持っていれば客だと酒場のマスターが目配せをしてきたので、
 渋々ながら盆に酒瓶を載せた。
 カウンターの向こう側では魚の鱗を落とし、マスターが客に出す為の酒のツマミを作っている。
 運ばれてきた葡萄酒の瓶を受け取ると、ケフカは染みのついた古い木製カップに酒をそそいだ。
 <安っぽい酒場で他人を見下しながら飲む酒ほどうまいものはない>ケフカは葡萄酒を味わいながら
 、酒場の客達を眺めて物思いに耽った。
 程よく酔いが回り始めるとケフカが突然哄笑しだした。
 酒場に響き渡る異様に甲高い笑い声に客達がギョッとなってケフカのほうへと目を向ける。
 「フォホッホッホッホっ!!!」
 それでもケフカは笑い続けた。客達の視線など知ったこっちゃないとばかりに。
 そうしていると、酒場に新しい客が現れた。二十代絡みの太った出っ歯の気持ち悪い男性客だ。
 「マスター、いつもの奴を頂戴」
 「はいよ」
 マスターが酒壷の並んだ棚から乳酒の詰まった小壷を取ると、柄杓で中の酒をすくい、カップに注いで客に渡した。
 「キンス、また今日もお相手は見つからなかったのか?」
 キンスを呼ばれた男が額に手を当てて、嘆くように言う。
 「ああ、今日も見つからなかったよ……この村にはゲイは俺だけしかいないのかもしれない」
 バニーガールが二人の会話に割り込んできた。
 「そんな事ないわよ。ほら、あそこを見てごらんなさい」
 バニーガールがケフカの座るテーブル席を指差す。
 いつのまにか笑い声を止め、ケフカは先ほどとは打って変わって不機嫌な表情を浮かべていた。
 「ふん、つまらん……」
 山の天気のように気分がコロコロ変わるのもケフカの特徴だ。
 空になった酒瓶を振り回し、もう一本持って来いとケフカがバニーガールに怒鳴りつける。
 だが、バニーガールは嫌な顔一つせず、愛想笑いを浮かべるとケフカに新しい酒瓶を持って行ってやった。
 
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 黄金色に輝く太陽の陽射しがケフカの頬を叩いた。
 「んんっ……」
 洞窟の前でゴロリと寝転がっていたケフカが起き上がろうとする。だが、途中でケフカは動きを止めた。
 頭と肛門がズキズキと痛んだからだ。飲みすぎで頭が痛くなるのはケフカにも理解できた。
 特に安酒をガバガバ飲んだ翌日は、小人が内側からハンマーとノミで頭蓋骨を削るような激しい頭痛に襲われる事もだ。
 だが、ケフカは酒に酔って尻の穴が痛くなるという経験はこれまでにしたことが無かった。
 「僕ちんのお尻が痛いじょ……」
 とりあえず深呼吸をして息を整えると、太腿の付け根までずり下がったズボンを履きなおす。
 そして気を取り直すと、ケフカは目の前に広がった洞窟を興味深げに眺め、中に入っていった。
 洞窟の内部はひんやりと冷たく、どこか湿っぽい匂いがした。川から流れる水の音が聞こえてくる。
 真っ直ぐ歩いていくと、剥き出しになった洞窟の壁から生えた苔をセミモグラとスライムがムシャムシャと頬張っていた。
 いつものようにケフカが魔物達をさっさと始末してしまう。
 それからそこら辺をグルグル回ってケフカは洞窟を探索した。
 随分と洞窟の奥まで進んだなとケフカが辺りを見回すと、
 巨大な岩に押しつぶされそうになっている中年の男の姿が視界に飛び込んできた。
 「ううっ、苦しい、誰か助けてくれっ」
 助けを求める男のほうへと近寄って行き、ケフカが覗き込む。
 「お前、こんなとこで何やってんだ?」
 「ううっ、そこのオカマの坊やっ、すまないが助けてくれないか……」
 「僕ちんはオカマじゃないぞっ、それに助けを求めてる奴を助ける馬鹿なんていませんよーだっ」
 ケフカが笑い声を上げながら、無慈悲に言い放つ。
 「ううっ、それじゃあ助けなくてもいいから私を罵ってくれないか」
 それならばいいだろうとケフカが頷いてみせると男に向かって罵声を浴びせ始める。
 「この豚野郎っ、中年親父っ、お前なんかに生きる資格はないっ」
 「ああ……いいぞ……もっと罵ってくれっ、」
 「この変態ぺドホモ親父っ、マゾの癖に俺様に命令するんじゃないっ」
 そして岩に挟まれた男の口元にブーツを持ってくるとケフカが舐めて泥を取れと命じた。
 「くうっ、いい!おう!もっと、もっといたぶってくれっ!」
 ケフカの靴底をベロベロ舐めていた男の股間が盛り上がり、今や巨大な岩はぐらぐらと揺れていた。
 そして岩はついに横へと転がっていった。巨大な岩から開放された男がむくりと立ち上がり、ケフカに礼を言う。
 「いやあ、ありがとう、おかげで助かったよ。あっ、悪いけど実は急ぎの用があるんでね。
  道具屋に来てくれたらお礼をするから、この場は失礼させてもらうよっ」
  男が足早に去っていく。これ以上、ここにいても仕方が無いようなので、ケフカは洞窟から出て行った。

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