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「【ドラゴンクエスト5】世界観崩壊でもいいじゃないか」
(第0部)[1/1]

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海を渡る船の中、一人の少年が夢を見ていた。
見覚えのない大きな部屋にある豪華な絨毯の上を落ち着かない様子で歩く父の姿。
その傍には見慣れない人達が父に声をかけていた。

やがて、静寂を破るような赤ん坊の産声を聞いた父は一目散に駆けだした。
たどり着いた大きなベットの傍には、憔悴しきった美しい女性と赤ん坊を抱える女性が父を迎える。
皆の表情は喜びに満ちていた。
しかし、何かに怯えるように赤ん坊が泣き出すと少年は夢から覚めていく。
目を開けると、そこは豪華な部屋ではなく木と海の匂いがする見慣れた船内であった。

「おう、アベル。目が覚めたようだな」
「おはようー、おとうさん」

備え付けのベットから起き上がると父…パパスが息子が目が覚めたことに気付いた。
少年の名はアベル。物心ついた時から父についていき旅をしている6歳の男の子である。

「そういえば、おとうさん…」
「なに?夢を見た?赤ん坊のときの夢で、どこかのお城みたいだったと?」

アベルが夢の内容を語ると、パパスはきょっとんとすると、口髭を揺らしながら豪快に笑った。

「わっはっは!寝ぼけているな。眠気ざましに外にでも行って風にあたって来たらどうだ」
「う〜ん…わかった行ってくる!!」
「父さんはここにいるから気をつけて行って来るんだぞ」
「はーい」

勢いよくベットから降りると愛用の紫色のターバンと、体をすっぽりと覆う紫色の外套をまとって部屋の外に走っていた。
その息子の後ろ姿をパパスは申し訳なさそうに見つめるのであった。

ストレンジャー号

パパスが船長と知り合いのため乗せてもらっている船名である。
魔物で荒れる海の旅は容易なものではなかった。
そのため船の数もめっきり減ってしまい、移動に難儀していた時に船長とパパスは再会した。
パパスの目的地であるビスタ港で雇い主を乗せることになっていたのでついでにパパス達も乗船させてもらっていた。

アベルは船室から飛び出すと、船員達にあいさつをしつつ甲板へと向かう。
屈強な船乗り達にも怯えず、元気な挨拶をするアベルに船員達は皆、親しみを感じていた。
それだけではなく、アベルの瞳をみた者たちは揃って穏やかな心になっていた。

甲板にたどり着いたアベルは心地よい潮風に気分を昂らせる。
すでに何日も船内で暮らしているが、全く飽きることはなかった。

「う〜ん、いい気持ちだなー」
「おう。パパスさんところの坊やじゃないか」
「あ、船長さん。おはようございます」

口にパイプ煙草をくわえながら、アベルに話しかけてきたのはこの船の船長だった。

「朝から元気がいいな坊や」
「うん、よく眠れたから」
「そうか、そうか。夜は結構荒れたんだが…おまえさん、将来は立派な船乗りになれそうだな」
「ほんとう!?」

船長の言葉にアベルは目をかがやかせる。
そんなアベルを見て、愉快そうに笑う船長はもうじき船が港に到着することを告げる。
その話を聞いた、アベルは父に伝えるために、急いで部屋に戻った。

「そうか港に着いたか!村に戻るのはほぼ2年ぶりだ……」
「そうなの?」

パパスがなつかしそうにするが、アベルはきょっとんと首をかしげた。

「アベルはまだ小さかったから村のことを覚えていまい。とてもよいところだ。
 しばらくはゆっくりしようと思う」

そんなことを話していると、港に船が着いた合図の音が聞こえる。

「さてとそろそろ港におりるとするかアベル。忘れ物をするんじゃないぞ。」
「うん大丈夫だよ、おとうさん」

甲板に出た二人は船長と船員達に別れのあいさつをもらった。

「パパスさん、襲ってきた魔物退治には助かりました、ありがとうございます」
「坊や、お父さんの言う事を聞いてい、元気にすごせよ!」
「二人とも達者でくらせよー」
「パパス、今回は色々とこちらも助かったよ」
「こちらこそ、船長には世話になった」

そうこうしているうちに船を降りる準備が整うと、港から上品な衣服に身をつつんだ親子が船に近付いてきた。
船長と会話をしていたパパスがその親子に気付く。

「おや?船長。どなたか船に乗り込まれるようだな」
「ああ。この船の持ち主だよ。この港で乗船することになっているんだ」

父親に連れらた青い髪の少女が頑張って船に乗ろうとするがうまくいかない。
その様子をみたパパスがそっと手を差し伸べた。

「どれ私が手をかしましょう。さぁ、どうぞお譲ちゃん」
「あ、ありがとございます…」

パパスに持ち上げられた少女は恥ずかしそうに礼をのべる。
ゆっくりと船に下ろしてもらった少女は、そばにいたアベルと目が合った。

「………わぁ」
「………あ。………ぽっ」

少女の容姿はアベルが旅の中で知り合った子達よりも可愛らしく、誰よりも目を惹きつけられた。
そして、意識をしていないのに胸に当てた手からは心音が今までにないほど脈打っているのを感じる。
少女もまた、同様に目の前にいる少年の顔から目を離せなくなっていた。

「………」
「………」

まるで、世界から互いに交わること強要されているかのようにいつまでも見つめあっている二人を
大人達は微笑まし光景を見るかのごとく眺めていた。
その様子をじれったそうに見ていたもう一人の少女が大人達を押しのけて乗船してきた。

「おじさんジャマよ!」
「ふにゃ!?」

パパスを避けて飛び込んできた少女の足はアベルの顔を踏みつけしまい、倒れてしまう。

「ああ!!だいじょうぶ?もう、デボラねえさん。いきなり飛び乗るなんて危ないですよ」
「そんなこと言ったて、もたもたしているフローラが悪いんでしょ。わたしはわるくないわ!」

倒れたアベルを介抱する青い髪の少女…フローラはアベルを気遣いつつも、注意をしていた。
フローラの言葉に詫びれもなく反論するする黒い髪の少女…デボラはアベルを一瞥すると赤くなった顔で話しかけた。

「あんた…小魚みたいな顔してるわね。…………ふん」
「もう!待ってください、ねえさん」
「こ、小魚?」

言いたいことを言い終わると、デボラは自分たちに用意された船室へと走っていく。
そんな姉をフローラも追って行ってしまい、あとに残されたアベルは茫然とするばかりであった。
大人達は無邪気な子供たちに笑みをうかべ、別れの言葉を述べる。
港に降りたパパス達はストレンジャー号の旅立ちを見送ると、港の守人から話しかけられる。

「おお!!パパスさんじゃないか、久しぶりだな!!」
「2年ぶりですな。久しぶりです」

知人との再会に話が弾むパパスを尻目に、アベルは早くこの辺りを探検したいのかうずうずしていた。
そんな息子の様子に気付いたパパスは懐から不思議な魔力を感じる巻物を取り出した。

「アベル。父さんはこの人と話があるのでそのへんで遊んでいなさい。
 とりあえず お前にこの地図をわたしておこう」

パパスから不思議な巻物を渡せれたアベルは持っていた『ふくろ』に入れた。

「その『ふくろ』と同じように父さんの昔の友だちが特別に作ってくれた大切な地図だ。
 なくさないように大事に持っておくんだぞ」
「うん、わかったよ。おとうさん」

アベルが持っている『ふくろ』もまた普通の袋ではなかった。

特別な魔法の技術が用いられ、どんな重量の物でも重さを感じることはなく、
どれだけ大量の荷物も入れられる『魔法のふくろ』。
世界から大地の情報を読み取り、巻物に書き写す『魔法の地図』。

世界に二つとない逸品である。

「あまり遠くに行かないようにな」
「はーい」

話しこんでいる二人を尻目にアベルは港の探索に向かった。
とはいえ、それほど広くはない港であったため、すぐに調べつくしてしまったアベルは
父の言葉を忘れ、港を出てしまう。

どこまでも広がる草原に足を踏み出すアベル。
そんな彼を草むらから見つめる三つの影が後に追る。
すぐに優れた感覚をもつアベルには影が放つ殺気に気付いた。

パパスに貰った『竹の槍』を構えるアベルに不意打ちは無理と覚った影が姿を現した。
うっすらと青みがかかったゼリー状の体をぷるぷると震わせ、アベルの周りを囲もうする魔物…スライムである。

「ま、魔物さん!?」

気配は判っていたものの、やはり驚きを隠せない。
その三体のスライムの中心に黒い塊があるのをアベルは感じていた。

優れた戦士ですら、見ることのできない黒い塊…
これは魔王の瘴気に毒されてしまい、操られている魔物の魂とも云えるものである。

(もう…この子達は………!あ、あの子はまだ間に合う!!)

二体の魔物の魂は完全に黒く染まっていたが、一体だけ小さな光が灯っているのがアベルには見えた。
それは魔王に毒されていない証。魔物本来の意識が残っている光だった。
アベルは竹の槍を強く握ると、その一体のスライムに向かっていく

「たぁぁぁ!!」
「ピキィ!?」

竹の槍で殴られたスライムは盛大に弾き飛ばされ、気絶してしまう。
そんなスライムの姿を見ていたアベルの目には纏わりついていた黒い瘴気が薄れていくのが見えた。

「や、やった!!」

喜ぶアベルであったが、仲間がやられた事に憤慨した二体のスライムが襲いかかる。
とっさに防御をするがスライムの体当たりで尻を地面についてしまう。

「わぁ!?」
「ピキィ!!」

再度、アベルを襲いかかるスライム達の前に一人の男が現れた。
港からアベルを追ってきたパパスだ。

「むん!」

まるで力まず、剣を振るうパパスの姿は一流の剣士の思わせる。
流れるように振るわれた剣はほぼ同時に二体のスライムを切り裂いた。
スライム達の体が崩れていき、世界に溶け込んでいく。

「あ、まって!!」

アベルは消えていくスライムに手を伸ばすと何かを握りしめた。
そんな息子の姿をパパスは剣を収めながら眺めていた。

「また何か拾えたのか?」
「うん!これみて!!」

アベルが開いた掌には『薬草』と複数の結晶があった。

魔物の魔力が世界に残ると結晶が生まれる。
それを共通単価…ゴールドと呼んで人間は物品のやり取りをしていた。

魔物は 世界に満ちるエネルギーの集合体であり、自然発生、動物の変化などで生まれる。
そして魔王の魔力によって自我を奪われ人間を襲う。

アベルが手にした薬草は魔物の魔力が消える前に形として世界に残ったため。
よほどの事がない限りこのような事は起きないのだが、アベルには魔物が消えようとする際に
捉えることが出来るのだ。

そんなやり取りをしていると、アベルが倒した魔物がもぞもぞと起き上がる。

「あ、あれ〜〜?。オイラいったい??」
「目が覚めたんだね。よかった〜」

今まで殺気を放っていたスライムが、目を覚ましたとたんに失せていた。
状況を理解できないスライムにアベルが声をかける。

「わぁ!?に、人間!!いじめられるーーー!!」
「だいじょうぶ。もう君をいじめる人はいないよ」

人に怯えるスライムにアベルは優しく微笑む。
怯えていたスライムもゆっくりとアベルに顔を向けた。
アベルの言葉や雰囲気を感じて、目を見つめるとスライムの怯えた表情は笑顔に変わった。
しばらくアベルとスライムのやり取りを見つめていたパパスは複雑な表情をしていた。

(マーサ……。私達の子供は君と同じか、それに近い力を秘めている。
 また君のように魔物が奪っていってしまうのかと不安になってしまうよ)

パパスの思いとは裏腹にアベルはスライムに別れの言葉を告げていた。

「ばいば〜い!もう人をおそっちゃだめだよー」

アベルの言葉に我を取り戻したパパスは本来の目的を思い出す。

「では行くとしよう!」
「うん!」

目指す地はサンタローズ。
この街から始まる果てしない苦難の旅を二人はまだ知る由もなかった。

・初めまして。
 中古でDS版DQVをやっていたら、書きたくなってしまいした。
 すでに同じような設定のSSもあるかもしれませんが、どうかお付き合いください。
 よろしくお願いします。

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