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「奪われた名声と自由」
(第0部)[1/4]

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此処はバストゥークより南へ徒歩で三時間ほど離れたダングルフの涸れ谷
最近此処でアイテム収集をしている一人の冒険者がいた
 
(奪われた名声と自由)   

(プロローグ) 

「ふぅ、これ位にしとこうかな」
私はすわり心地のよさそうな場所を選び腰をおろす。
そしてつい先ほど拾った……というよりは奪い取ったともいうアイテムをサックにつめ込んだ。
クリスタルに素材に薬草金目になるものがごっそり詰まっている
「もう入りきらないや」
私は重い腰を上げ帰宅準備をする。      
「よいっしょっと」
モンスターから奪い取ったアイテム類で、ひしめき合っているサックを左腕で担ごうとした瞬間左肩に激痛がはしる。
「痛ぁ〜ナンダァ?」
痛みは左方のショルダー辺り。私はショルダーを外し痛みのあった部位に触れてみる。
「ふんぐぁぁ」
あまりの痛さに声が出ない。しばらく悶絶した後ようやく落ち着き、左肩を見てみることにする。
「あちゃーこりゃ酷いわ」
どうやら最後の一匹との戦闘で相手の太刀を食らったみたいだ。
かなり傷が深く出血もひどい。
「あーもぅやってくれちゃって」
私は負傷していない右手を患部にかざす。
「ケアル」
その言葉を発した瞬間かざした右手が白く輝く。
輝きは徐々に薄れてゆきそれと同時に傷口もふさがってゆく。
「よっし完璧ぃ〜」
左腕をぐるぐる廻し様子見をする。
「さって帰ろっかな〜」
サックを肩に担ぎ、帰ることにするが何か忘れているような気がしてならない。
「あっ忘れるところだったよ」
私は先ほど外したショルダーに気がつき拾おうとした。
が私はショルダーを見て目が点になってしまった。
見事に割れている……
最悪である。昨日修理から戻ったバッカリの私のショルダー……
しかも修理不能なまでに派手に割れて……修理費が……
「もしかして今日稼いだアイテムでチャラってかぁ?」
腹いせに割れたショルダーを蹴っ飛ばした。
「これじゃ仕送り出来ないジャンよぉ〜あーんゴブリンの馬鹿ぁ〜」
その場にしゃがみ込み絶叫、しかし帰ってくるのは山びこだけ。
「虚しい帰ろう……」
小声で呟き谷を出ることにした。
谷を出ると広い荒野が広がっている。日没にまだ程遠いのかポツポツと冒険者の姿も見える。
派手に戦っている者や休息している者、はたまたモンスターに追いかけられてる者……
もう少し稼げたかもしれない、しかしショルダーが無い今は無謀な事。おまけにサックは荷物でパンパンだ。そう思いながらぽてぽて歩いていた。
右前方をダチョウほどはある大きい鳥が人を乗せ走っている。チョコボである。
「いいなぁ〜あれ」
羨ましげに見つつ、いつも必ず休息をとっている場所までたどり着く。
一息ついたがそろそろ歩くのにも疲れてきた。
サックも荷物が多くて重くてかなわない。
「近道して帰ろっと」
普段は急いでいるときしか通らない道がある。三十分位は短縮できる。
が少々厄介なのだ。あるモンスターの縄張りを横切る事になるからだ。
しかしこの行動で後の冒険生活がガラリと変わる事など今の私には到底予測出来なかった。

一.(お馬鹿な人間のこと)

抜き足・差し足・忍び足……
息を潜めて慎重に進む。
ようやく近道も残り半分……
モンスターウェルサイドポイント(化け物の井戸端会議場)に差し掛かる。
私たち冒険者はモンスターの群れる場所をこう呼んでいる。
「さて今日はだいじょうぶかな」
岩場の影からポイントを覗くとモンスターが四匹群がっている。
クゥダフだ。
「あちゃ〜」
こいつらは私達同等の知恵を持ち、魔法もある程度だが使う者もいる。
四匹まとまってこられたら装備不十分の今の私には勝ち目があるだろうか?
「距離五十メートルってとこかな」
私は携帯用の計測スコープを右目にあてつつ、頭をポリポリ掻きながら得策を考える。
「走って逃げ切れそうなんだけどなぁ〜」
推測だと逃げ切れる。が、万が一予定外の事態が起こったときは死がまっている。
確実な方法ではないが限りなく安全な策を思いついた。
上手い具合に共同団体らしき冒険者の団体がいる。
『共同団体』
気のあった冒険者同士複数で行動をともにしている、いわゆるチームである。
「よしっ一丁やってやりますか」
私はその団体の目の前にストーンを放つ。
無論岩場の影からばれない様にクゥダフが仕掛けたと見せかける為に。
我ながらアクドイ方法だな。自分でもそう思う……でも死にたくないし。
「おっ引っかかった引っかかった」
団体はクゥダフに襲い掛かっている。
推測どおり彼らは『共同団体』だったみたい。
ひょっとすると私達のほうが馬鹿なんじゃ?とかつい思う……
自分を含め馬鹿な団体さんを後にして私は近道を抜ける事に成功した。

二.(柄の悪いお兄さんのこと)

バストゥーク商業区出口ようやく帰ってきた。
出口辺りは少々人も多いし、ここを待ち合わせに指定する人もいる。
現に二十人程度はいるみたいである。
「そいつをよこしな。ショートカットのお嬢さん」
追いはぎか……
その中の一人の男が私のサックを指差し舌なめずりしている。見たとこ戦士かそこら。
冒険者生活は裕福である。わずか一日で一般人の月給に等しい収入がある。
安定はしてはいないが食いっぱぐれる事はまず無い。
故にワーパー『働き者』と呼ばれる特別な冒険者もいる。
かくいう私もその一人なのだ。
「何寝ぼけたこと言ってるの?自分で取ってくりゃいじゃん。アイダーさん」
『アイダー』冒険者から『怠け者』のレッテルを貼られた称号である。
くすくすと笑い声が、野次馬の中からが聞こえてくる。
「てっめぇ覚悟はできてるんだろうな」
男の顔がみるみるうちに真っ赤になる。
すでに鞘から剣を抜いてるし……
やっぱ怒ったか……ほんとのこといったんだけどなぁ……
「あんた達いい加減にしなよ」
割って入ってきたのが一人のタルタルだ。
好奇心旺盛な小人タルタル。大人でも私たちの腰あたりの背丈で愛くるしい顔立ちである。
ちょっと今出てこないでよ……まずいよタルタルちゃん……
「うるさいっ!てめーは引っ込んでろ!」
アイダーは左手の盾でタルタルを城門の壁に吹っ飛ばしてしまった。
タルタルは、打ち所が悪かったのか左足をおさえて悲痛な叫びを上げている。
続いてアイダーの放った太刀が私に飛んでくるが、しかし太刀が私の目の前で止まる。
「っくそってめぇ赤魔道師か」
『パライズ』
黒魔法系麻痺呪文。タルタルが飛ばされる前に放ったが少し遅かったようだ。
私もちょっとムカついて来たぞっと。
「ミスラさん、これ持っててくれる?」
固まったアイダーをよそに近くにいたミスラに声をかけサックを渡す私。猫のような耳と尻尾の可愛らしい姿をしている。
『ミスラ族』
私達ヒュームの男性にもかなり人気がある。
「えっあっはい」
ミスラは私のサックの重さで転んでしまった。
「何これ重いぃー」
今日はさすがに採りすぎたかな?
さってと……私はアイダーのほうに振り向き
「で?だったらどうする?」
私は剣を抜きアイダーを睨む。
「女は犯すに決まってるだろ」
剣を構え直したか……ちぇっ効果が切れたよ……サンドバックにしてやろうと思ってたのに。しょうがないなぁ……
鞘から剣を抜きアイダーに切りつける……が盾に弾かれる。
「剣で勝てるわけ無いだろ?お嬢さん?」
憎たらしい目つきでこちらを見下している。
「それはどうだろうねえ」
そう言いながら私は剣と盾を持ち替え構えなおす。
相手は右利きと踏んでの行動である。
「馬鹿か?てめーはショルダーもねぇくせに」
アイダーはそう言い放ち剣を振るう。
ぎぃぃぃいいいん!
鈍い金属音が響きわたる。剣を盾代わりに相手の太刀を受け止める。
そのまま右手に持った盾で相手の盾を弾き飛ばし十メートル前後辺りでぽとりと落ちる。
「すっすごい」
私の荷物を持ってもらってるミスラが驚きの声をあげた。
周りからも歓声が聞こえ始める。
「何ぃ!?」
アイダーは何が起こったかわかってないみたいらしい。
「両ききだとこういう芸当もできるんだよ〜」
そう言い放ち私は相手を蹴り飛ばし距離をとる。
盾を地面に置き右手を地面にそえる。
「木々を育む偉大なる大地よ!その姿、怒りに変えて我が壁を砕け!」
呪文と同時にアイダーの立っている地面から鋭い岩の塊が襲い掛かる。
『ストーン』
黒魔法系精霊術
アイダーは私の術で串刺しになる予定だったが、剣に命中し破壊……
外した?いやよけたか……
「覚えてやがれこの糞アマっ」
出ました悪党の『名台詞』、参りましたって事で解釈してよさそうだな……
アイダーはいちもくさんでその場を走り去っていった。
私は彼が使っていた盾を拾いいい考えが浮かびあがった。
「これ鍛冶屋でショルダーに加工してもらお」
我ながらナイスアイデアじゃん。
「はい、これお返しします」
自画自賛してる私にミスラから声がかかる。
「ありがとうね重かったでしょ?」
私はニッコリと微笑み可愛いネコ耳のミスラに軽く挨拶を交わす。
そして集まった野次馬を掻き分けて先ほど飛ばされたタルタルのところへ向かう。
「大丈夫?」
タルタルに声をかける。後でさっきのミスラも不安そうにしてる。
「さっきのネーちゃん?」
タルタルは私を恐る恐る見上る
私は目線をあわす為しゃがみ怪我が無いか伺うことにした。
勿論彼を治療する為に。

三.(偶然の出会いは奇跡なりのこと)

「乾杯〜」
私たちは、ジョッキになみなみと注がれた麦芽酒で、食事を満喫していた。
テーブルに置かれた食べきれない程の料理の数々。
ミスラとタルタルそして私……
普段めったなことでは他人とはかかわらないのだが、今日は特別である。
負傷したタルタルの治療をした事と、このタルタルと冒険団を組んでいるミスラからのお礼。
そして先ほど撃退したアイダーが、結果的にバストゥーク自衛団により束縛され国から謝礼が出た事をかねた、いわゆるお祝いというやつだ。
「あんまり飲みすぎちゃだめですよ?ロッド?」
ミスラはタルタルにジョッキを取りあげようと必死になっている。
無理もない。あの小さな体で私たちと同じジョッキを抱え込んで飲んでいるのだから……
「いいじゃんショーテル。お祝いなんだしさぁ」
タルタルも必死でジョッキを奪われまいと抱え込んで離さない。
「レイピアさんもロッドにいってやってくださいよぅ〜」
ほとほと困り果ててるご様子……
「いいんじゃない?ショーテルさん死にゃしないでしょ。」
私はローストチキンを片手にふりふり麦芽酒を一気に喉に流し込む。そしてチキンにかぶりつきながら。
「ひょとして心配症?」
とショーテルに問う。
すると勢いよくどんとジョッキテーブルに置き
「そうなんだよレイピアのネーちゃん、心配症なんだよショーテルって」
口を手でぬぐいながら羊肉にかぶりつくロッド。
「さっきだってあんなにひどい怪我したじゃない」
ロッドを睨みつけ
「もう死んじゃったのかと思ったじゃないですか!」
ちょっと強めの口調でショーテルの説教が始まった。
正直私も治療できるか分からなかったのだ。かなり派手に壁にブチ当てられたのだから。
「でもネーちゃんの治癒術すごいよね。おいら片足ちぎれかかってたのに」
ショーテルの説教から逃れようと考えたのか、私に話をふってくる
「そうですよね、私もあんなに凄いケアルは初めて見ましたよ」
ショーテルも釣られて目を輝かせてこちらを見つめている。
「あれはね、治癒魔法の術の重複作用なんだよ。」
私はそう答えると二人は声をそろえて……
「重複作用?」
『重複作用』
それは同じ魔法を同時に複数かさねて『かける』ことで、術の効力を増す方法である。しかし私はまだ二つしか重ねがけすることが出来ない。
魔法力の少ない魔道師が無茶な重複をすると精神崩壊することがある。
魔道師の中では『三流魔道師は呆けるのが早い』
という言い伝えがあるが、こういう意味なのかもしれない。
とくに治癒術以外の魔法は重ねがけが困難であるが、二人には話す必要が無いのでそっちは飛ばすことにする。
ロッドはシーフ。ショーテルはモンク……魔法には縁がないであろう。話も一段落着き、私は麦芽酒を一口。んーんまい!
「でもよかったねロッドちゃん大事に至らなくて」
そういいつつもう一口。幸福のひとときである。癒されるよねこの一杯!
「ちゃんはやめてよ。おいらこう見えても二十七なんだよ」
ロッドの言葉に思わず口の中の物を噴出す。
「タルタル族って年はとっても体形は変わらないんですよ。しらなかったんですか?」
ショーテルの言葉でさらに驚いた。体型が変わらないってもしかして?
「それって老けないって事?」
恐る恐るたずねてみる。
「そうなりますね。ただ寿命は私達とかわりませんけど」
ショーテルから詳しいことを聞いた。
タルタル族は生まれてからある一定期間成長するとそこから死ぬまで成長が止まり、脳以外は細胞分裂が一定だそうだ。要するに呆けてもおじいちゃんか青年か判断できない。
私はショーテルに一言、羨ましくないそれって話を持ちかけた。
「そうですね、死ぬまで若いままなんていいですよねぇ〜」
私とショーテルはロッドをみつめながら激しく羨ましがった。
こっちは必死こいてケアしてるっつうーのにまったく持って不公平だよ神様!……
「そういうネーちゃんは幾つなのさ?」
こんどはロッドが私に問いかけくる。
「ん?私は十八だよ」
そう答えると今度はロッドが麦芽酒を噴出した。それも私の顔めがけて
「うわっきったな〜い」
そう答えながらハンカチで顔を拭く私……ちょっと飲んじゃた……
「それってもしかして?うそでしょ?本当なんですか」
ショーテルも驚いてるようなんだけど?
「冒険者許可証取得可能年齢って確か」
ロッドがショーテルに何か確認を取るような感じで話しているけど?
「十八ですねたしか」
ショーテルは驚いた表情で私の顔をまじまじと見つめる。
「なによぅ。なんかまずかったの?」
何かいけないことをしたのかな?少し焦る私……
「ネーちゃんワーパーなんだろ?」
ロッドは確認を取るように聞き返す。
「そうだよ許可証も持ってるよほら」
ロッドに私がワーパーである証明許可証を見せた。
「本当ですね……ワーパーには冒険者に認定されてある程度名声が無いと取るのは難しいって聞きましたけど」
ショーテルが私の許可証をまじまじ見ながら首をかしげている。
「あっそれね私試験受けてないんだシードでパスしたんだけど?」
「シード?特別認定ですって?いったいどういうことなんですか?」
目を丸くするショーテル。
「私の親父も冒険者やっててさ、もうあっちの世界に逝っちゃったけどね」
「親父の娘だって事が分かったらすぐに認定されちゃった」
私はペロッと舌をだす。
「ねえネーちゃんのフルネームはなんていうの」
ロッドは自分の麦芽酒を横にどけテーブルに乗り出す
「レイピア・チェイルメイン」
そう一言いったら二人とも口をそろえて
「まさかセイバー・チェイルメイン??」
あれっ、なんで親父の名前を……
「そうだけど?親父の名前何で知ってるの?」
そういうと二人とも椅子から立ち上がり
「それほんとうなのぉ〜」
酒場に割れんばかりの大声が響き渡った。
「それ人違いなんじゃない?」
麦芽酒に飽きた私は、果実酒に舌鼓を打ちつつ否定していた。
『セイバーチェイルメイン』今からさかのぼる事八年前
ジュノを約百体のクゥダフの大群が襲ってきたことがある。
その大群をたった一人で撃退した戦士がいた。
彼の振るう剣は一太刀で四体を仕留めることが出来たとい英雄。
そしてジュノを救い自らも朽ち果ててしまったという伝説の人物。
だが人違いだろう。同姓同名はよくある話。うちの親父とは比べようもない。
実際私の親父は只のワーパーだった。幼いときに母をなくし親父とその妹、いわゆる叔母さんと生活していた。
親父は暇さえあればいつも私に剣術を教えてくれていた。
いつも筋がいいと褒めてくれるのが嬉しくて私は剣術に励んできた。
だが私が十歳の時信じられない出来事が起こってしまった。
一通の緊急報告書が我が家に届いた。
親父が罪も無い一般の人を殺めてしまった。法により処刑されたという内容だったのだ。
当時の私には信じられなかった……
あんなに優しくて強かった親父が殺人を犯すなんて。
村のみんなも信じてはいなかった。
村の為に一生懸命だった親父。
親父が持って帰る財産で村が成り立っていたのだ。
このままでは村が無くなってしまう。
私がワーパーに……父さんの代わりに……
十三の時に決心し、独学で魔法学や剣術を磨いた。
私が冒険者になるきっかけだった。
酒場を後にし、競売場入り口で三人で話を聞くことになった。
「じゃなぜシードで通ったんですか?」
ショーテルが不思議そうに首を傾げている。
ふと疑問点が浮かんできた。処刑された年と伝説の人物の死が一致していること。
親父の名前でシードに選ばれたこと。ジュノにいければすぐに分かるのだが……
今の私はそんな金も暇も無い。村の仕送りを止めることも出来ない。
ロッドがショーテルに何やら耳打している。
「あら、いい考えじゃないですか。ロッド」
「でしょ?おいらあったまいい」
なにかいい考えでも浮かんだのか?……
「私たちの団体でジュノに居る方がいますのでその方に頼んでみます」
ショーテルは耳をピコピコさせながらロッドを前にだす。
「でさその伝説のセイバー・チェイルメインの自画像持ってきてもらうのさ」
ロッドはパチンと指を鳴らす。
「いいの?そんなにしてもらって?」
私はすまなさそうな顔ををしていると、ロッドはウインクしつつ、
「お互い様でしょ?」
「それじゃ明日この場所に来てくださいね」
ショーテルはそういい残しロッドとモーグリハウスに帰っていく。
サヨナラの挨拶をすませた私は、今日収穫したアイテム類を全て競売場に出品し、帰宅することにした。

四.(モーグリは働き者のこと)

「レイピア、起きるクポ〜」
う〜ん五月蝿いもう少し寝かせて……頭痛いし……
「今日はジュノからお客さん来るんだクポ?」
あ〜そういやそうだった。昨日ショーテルとロッドから競売場に来いって……
がばっと、あわててベッドから起き上がる。
そうだ、親父の真相が分かるかもしれない。
「うぅ、頭割れそ……」
昨日は流石に飲みすぎた、完璧に二日酔いである。
「ごめんモーグリお水頂戴」
パタパタと羽をはばたかせ宙をとびキッチンへ向かう奇妙な動物。子豚を直立させ羽が生えた姿をしたモーグリ、一応モンスターの類になる。
人語を理解し、冒険者の面倒を見てくれるお手伝いさんといったところか……
冒険者は、モーグリハウスと呼ばれる部屋で寝泊りをする。
部屋がアイテムの倉庫にもなっており、その番人もしてくれている。
「お待たせクポ〜」
モーグリからコップ一杯の水を受け取り、一気に飲み干しテーブルへ置いた。
「そうだポストどうなってるかな」
モーグリにポストの中身を確認してもらう事にする。
「了解だクポ」
モーグリはびしっと、私に敬礼しポストの中身を調べ始める。
私は空になったコップを片付ける為キッチンへ向かう。
「昨日は大活躍だったクポね」
リビングからモーグリの声がする。
「あ〜そう言えば謝礼もらったっけ?」
コップを洗いながら受け答えする私。
いくら入ってるんだろうか二ー三万ギル位が妥当だろう。
「レイピア〜大変だクポ〜」
モーグリはキッチンへすっ飛んできた。
「なによ?どうしたのよぉ?」
血相を変えている何が起こったのか……
「かっかっか」
モーグリはあわててるせいか舌がまわってない……
「完売だクポ〜」
何?完売だぁひょっとして……
「昨日と一昨日出品したやつが?」
コクコク頷くモーグリ。
私は慌ててポストへ向かう。
ポストのリストを確認するが確かに出品した物が全てリスト上から消えている。
『魔法のポスト』
一般家庭にもある私たちが俗に言う倉庫である。
中に物を入れるとある空間に物体を保管してくれる便利な物。
さらに競売場で得たお金や品物も届くのだ。
「モーグリお願い」
私はモーグリに金額を調べさせる。
冒険者用ポストはモーグリの魔力にしか反応しないように設定されている、いわゆる鍵なのだ。
「で?どう、いくら来てるの?」
少し興奮気味にモーグリをそそのかす。
出品物が即効で売れることはしばしばある、が完売は稀にしかないのだ。
競売場のシステムは一番安い値段で出品した物から先に落とされる。
簡単に言うと一ギルで出品すれば真っ先に落とされるということ。
私の読みががあたった。最近落とされずに返品が続いて困っていたので、全て相場の三分の一で出品したのだ。
「五万ギルクポ」
モーグリの言葉に私は小さくガッツポーズをとる。ほぼ相場で全て売れている。
「おろすクポ〜」
モーグリはそう言うと、ポストから紙幣をとりだした。
普通に暮らしていると一日辺り千ギルで暮らせてしまう。
ワーパーはオイシイ職業なのだ。
「じゃ四万は村に送っていいクポね〜」
送金準備を始めたモーグリを私は止める。
「まだ謝礼が有るじゃない」
「そうだったクポ」
モーグリはそういうとテーブルにおいていた謝礼金の入った封筒を持ってきた。
さてといくら入っているのやら。ちょっと楽しみだね。

五.(謝礼にビックリのこと)

テーブルに向かい合い正座し、唖然としている私とモーグリ。

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