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「EVAザクラ 新劇場版」
(第0部)[1/5]

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前書き PCを新調した記念に。前作 EVAザクラを読んで無くても判る様に書きましたが。ちなみにここ makkoukuzira.synology.me

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「砂だらけ。変わらないなあ」

 魔法使いは長生きだ。小さい頃は、おとぎ話に出てくる数百年生きている魔法使いを、うらやましいと思った。ただ自分がそうなるといささか不自由だ。何より辛いのは、周りに知人がほとんどいなくなる事だ。愛する夫が死んでから百年たったある日、彼女は窓から火星の大地を眺めながら呟いた。年の頃なら二十代半ばに見えるが実年齢は遙かに上だ。生きてきた暦の長さで言ったら人類の歴史とそれほど変わりはない。
太陽系の再発見の後、テラフォーミングされた火星は、赤道付近ならば気温は地球と変わりがない。気圧は半分程で湿度はほとんど無い。人の居住区と農地、漁場は大き目のドームに覆われている。砂嵐対策と若干の加圧、加湿のためだ。ただ彼女の家はドームの外にある。彼女程の超常能力者は銀河に広がった人類の版図にも他にほとんど例がなく、存在には恐れと噂が付き纏っている。そのため幾度かテロに襲われた。周りを巻き込まない様にドームから離れて住む事にした。ドームに数人は知人もいて普段はあまり寂しくは無いが、時々昔を思い出しため息をついてしまう。そんな気分が落ち込んだ時は動き回るに限る。そこでドームに向かうことにした。
 まず保温性が高い服に着がえると、ヘルメットを被る。呼吸さえ出来ればいいので服の気密性はそれほど高くは無い。自分の名前と同じく桜色で統一した外出着は、随分前にデザイナーの娘が設計した物だ。娘の家族は銀河の反対側の太陽系にいる。娘には魔力に関する能力は遺伝しなかったため、50年ほど前に他界している。今は遺伝子工学でほぼ不老不死は実現しているが、適合しない人も、選ばない人も多い。そのため彼女の知人は、ドームに数人を残すのみだ。鏡の前で外出着を整えるとエアロックへ向かった。

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 小型のサンドモービルで、一番近いドームには一時間ほどかかった。夫が生きていた時は自動車の妖怪も一緒に住んでいた。彼なら10分でドームに着いただろうが、今は彼女の願いで、彼女の孫達のもとで孫達の家族を運んでいる。彼女専用のエアロックで係員にサンドモービルを預けた。未だに名目上の太陽系の所有者は彼女だ。実際は碇財団が管理している。彼女はその総裁でもあり、当然一般人と扱いが違う。そこにはテロに周りを巻きこまないためという意味もある。崇拝と恐怖が彼女の銀河系での通り名、magical queenには込められている。銀河系全体で通用する通り名を持つ者は、他には数人いる。超人やラブリーエンゼルなど様々だが、どれも恐怖の影がつきまとう。彼女自身は自分の身は守れるが、孫達は特異能力も無いため、護衛として親友兼恋敵の女性型アンドロイドが一緒に住んで守護している。彼女は専用の更衣室に向かうと、クローゼットから桜色のワンピースを取り出して着替えた。400年ほど前に、最愛の友がデザインした物だ。これに着替えると今ではカードになり自分と一体化した友のうきうきとした気持ちがわき上がり、彼女も元気になれる。姿見の前でくるりと一回転するとセミロングにした髪が広がった。遙か昔に生きていた親友の母親が見たら、彼女の母親に似てきたと目尻を下げて喜ぶだろう。どちらかといえばボーイッシュと言えた子供時代と比べて、母親に似た穏やかで豊かな美貌が姿見に映っている。
 更衣室を出ると、ドーム内部のエアロックに向かう。途中出会う財団の職員に挨拶をしつつ進むとすぐにエアロックに着いた。

「ふぁ〜」

 このドームの内側のエアロックをくぐるたび、何度でも変な歓声が口からこぼれてしまう。目の前には入り組んだ水路とその隙間に佇む町が見えた。半径が100kmもあるこのドームは、この時代の言葉で「ベノチア」と呼ばれている。昔地球にあった水の都の名前らしい。現在は火星大気の水分を大量に集めて、擬似的な海を再現し、火星における漁業を担っている。観光地としても人気だが、ドーム都市はそれほど住める人間の数は多くないため、観光客のキャンセル待ちが数年分はある。
 彼女はエアロックの側の岬の先端に向かった。そこには小さな建物が水路の横に佇んでいた。地球なら海辺の釣り宿といったただずまいだが、このドームでは釣りは禁止されている。魚は皆の共通の資源で、漁業免許が必要だ。そのため釣り宿ではない。可愛いピンクの建物は言うなれば水上タクシーの駅だ。観光用の小舟をレンタルしてくれる。水先案内人も一緒に付いてくる。

「こんにちわぁ」
「はぁーい」

 店の入り口で挨拶をすると、オープンデッキ風の店の奥から声がした。どこか間が抜けたような、安心させてくれるような優しい声だ。

「ARIAカンパニーへようこそ、サクラさんお久しぶりです」
「お久しぶりです。アカリさん」

 ケープ風だが、体にぴったりとあった白い制服をきて、水兵帽みたいな制帽を被った女性が奥から出てきた。声と同じくのんびりとした風貌の長髪の女性だ。カウンターでのほほんとした笑顔を見せているが彼女はこの店の主だ。前の主から店を引き継いで三カ月ほどたっている。

「今日は空いてますか?」
「はい。今日は予約はないので一日中平気です」
「じゃあ、一日中貸しきりでのんびり出来る?」
「はい。では一日貸し切り、と」

 アカリはカウンターにあるカレンダーに予定を書き込んだ。予定欄は空いている場所も多い。水先案内人としては独り立ちしたとはいえ、まだ固定客は少ない。サクラのように一日中予約してくれるのはとても助かる。

「早速、カフェへ頼むわ。朝食べてないの」
「あらあら、では早速、アリア社長」
「ぶいにゅ」

 アカリが店の奥に声をかけると、変な鳴き声とともに、白い塊が歩いてきた。青い瞳のぷにぷにした白いネコは、この店の社長だ。個人向けの船を出す店は風習として青い瞳の猫を社長兼マスコット兼お守りとしている。アリア社長はこの店、「ARIAカンパニー」の社長をここ数年つとめている。

「アリア社長、こんにちは」
「ぶいにゅ」

 サクラの挨拶を分かっているのかいないのかはともかく、アリア社長は店の外に出て行った。盗られる物がないのか、この時代の風習か分からぬが、戸締まりもせずに、二人はアリア社長の後を付いて行く。水路の脇まで行くと、ゴンドラがぷかぷか浮かんでいるのが見えた。

「じゃあ、サンラルク広場までおねがいします」
「はい。お客様」

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「ここのカフェオレは絶品ね」
「はい。私は何杯もおかわりして朝から夜までいた事がありますよ」

 サンラルク広場のオープンカフェ・カフェクロリアンでサンドウィッチをつまんだ後、二人は何杯もカフェオレをおかわりしておしゃべりをしていた。アリア社長もホットミルクを二人の横で楽しんでいる。建物の影にある樫の丸いテーブルは丁度よい大きさで二人と一匹の間を空けて、何時までものんびり出来そうだ。長らく話していると、日が高くなってきた。おかげでテーブルは日向に出てしまった。二人はテーブルを日陰まで動かしてまたカフェオレとおしゃべりを楽しみだした。このオープンカフェは太陽の動きとともに日陰に移動するのが風習となっている。ドーム都心とはいえ、空に蓋はない。電磁的なフィールドが上空1km程度の高度で、物質とエネルギーをほぼ遮断している。特定周波数の電磁波や音は通すので、日の光や風の吹く音は楽しめる。

「そう言えば、定期検診はどうだった」
「不老不死ではないけど若いまま長生きできます。当分サクラさんとお茶を楽しめます」
「それはよかった」

 アカリは両親が望んだため、デザイナーベイビーとして不老不死として生まれる予定だったが、処理が完全には適合しなかったようだ。デザイナーベイビーとして生まれた場合、火星ではある程度の年齢までは定期検診が義務づけられている。未だに遺伝子情報の暴走により怪物化する例もありそんな規則がある。最近サクラはドームに来ていなかったためは話題はいくらでもある。何度もテーブルを動かしては、何杯もお代わりをして二人と一匹は話し続けた。

「ぶいにゅう」

 少し退屈し始めたのかアリア社長が欠伸をした。アカリは立ち上がるとアリア社長を抱き上げ、日向に出た。サクラに微笑む。

「こんな日が続くといいですね」

 願ってはいけない。サクラはふと思った。願うと夢は壊れてしまう。なぜかそう思った。銀河一の魔法使いの勘は正しかった。

「えっ」

 次の瞬間辺りの日差しが強くなったような気がした。上を向くと何かが地球の方から迫ってくる。ほぼ光速だ。それは物体ではなく何かの場のようなものだった。上を向いたサクラを不思議そうにアカリが見つめた時、それは火星に到着した。思わずシールドの魔法で辺りを覆った為かサクラの素質なのかサクラに変化は無かった。だが周囲は違った。見慣れたドームの全てが崩れていく。違う世界の法則に触れて元の火星の風景に、人類がテラフォームする前の風景に戻っていく。シールドの魔法で覆った部分も例外ではなく、辺りよりゆっくりだが変わっていく。

「アカリさん」

サクラは叫ぶとアカリに駆け寄った。遺伝子操作で生まれたアカリとアリア社長も火星の風景の一部だ。アカリとアリア社長は呻き声を上げながら崩れていく。やがて原形質の塊となり混じり合った状態になった。ただシールドの魔法の中にいたせいか原形質は生きているようだった。とりあえずタイムの魔法で二人の成れの果ての時間を止めた。どうしようと悩んでいる間に周囲は完全に火星の砂漠に成りはてた。

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「やはり何もない」

 火星の土から魔法で鉄とガラスと紐を作り出し、アカリーアリアをおさめる容器を作るとそれに納めた。背中に背負うと火星の調査を始めた。不幸中の幸いと言うべきか、今のサクラは陽光と月光があれば食事も酸素も要らない。光の力場で出来た翼を生やして火星を飛び回る。火星には何もなかった。人類が都市を築いた跡は何も無かった。地表にキラキラと輝く金属の輝きを見つけて降りてみると、はるか昔に火星を探査した火星探査機の部品だった。置き去りにされ風化した部品が折れて金属光沢が見えていた。サクラはその部品のそばに座り込むとしばらく動けなかった。

「誰か聞こえる?」

 超能力者にとってはテレパシー、魔法使いにとっては遠耳の術、そんな物で銀河中に声を上げ、耳をすませた。誰からも何も帰ってこない。以前なら「超人」「疫病神」などの二つ名を持つ者からすぐに返事があった。彼らはサクラ同様不死身だ。となると現状では元から存在していなかったということかもしれない。

「あっ」

 微かに地球の方から声が聞こえた。声というより思念、思いそのようなものだ。空を見上げると、地球が見えた。赤かった。何かが変わっていた。

「行ってみよう」

 サクラは呟くとふわりと浮き上がり赤い地球に向かって行った。

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 今では超光速を出せるサクラも背中のアカリーアリアが心配でそれほど速度は出せなかった。地球までは光速の3割程度の速度で30分程かかった。

「なに、これ」

 地球は赤い海で覆われていた。夕日が当たっているわけではない。海水自体が赤いのだ。サクラは地球の周りを回ってみた。サクラが知っている緑と海に覆われた星は無くなり、赤い海水と砂漠と朽ち果てた都市の残骸が有るだけだった。都市の残骸もサクラがここ最近慣れてきた1万世紀の地球の物では無く、サクラの子供の頃、100万年前の物が朽ち果てていた。
 サクラは月まで一旦戻ることにした。海から訳の分からない思念波がサクラにたたきつけられ、気持ち悪くなったからだ。それは人間の物とも他の動物植物の物とも見当が付かなかった。月に近づくと、月に何かが刺さっているのが見えた。近づいて見ると赤い二股の槍だった。それは地球の朽ち果て方とは違い作りたての様な光沢を放っていた。

「何かが起きた。それもはるか昔、私が子供の頃に」

 何かが時間に干渉しそれがさかのぼって今の結果となったように感じた。サクラは時間をさかのぼってみることにした。夫と時間に干渉することはしないと約束していたが今は非常事態だ。背中のアカリーアリアも気になる。ともかく誰かに相談したい。サンとムーンのカードはほぼサクラの自我と一体化しているため相談相手にはならない。サクラは月面の槍を小さくすると、手に取った。何か重要な気がしたからだ。そして月面に横たわると目を閉じた。11日と13時間ほど眠ると太陽と月の位置が丁度良い場所に来た。時間をさかのぼる魔法となると簡単にはいかない。太陽と月の力がいるため、時を待った。サクラは魔法の杖を取り出すと、リターンの魔法で過去へ戻って行った。

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「初号機だ、でもなんか違うような」

 過去への旅は初めは何も起きなかった。月の軌道に合わせて動くサクラには地球はほとんど変化はみれなかった。後1万年でサクラの少女時代になるところまで来ると宇宙の彼方から紫の塊が飛来してきて地球の衛星軌道に乗り回り始めた。初号機だ。サクラは時間遡行の速度を緩めた。遡行速度はすぐには変えられないので、通り過ぎない様にだ。

「この初号機も同じ槍を持ってる」

 サクラは初号機に近づくと一旦時間遡行をやめた。時は順行し始めた。サクラはゆっくりと初号機に近づいていく。もう少しで初号機に触れるところでそれは起きた。初号機が手の槍を振り回して、サクラを叩いた。初号機もしくは中に乗る者は、単にサクラに触れようとしただけかもしれない。ただ初号機の巨体が振り回した槍が迫ってくるのを見て、サクラはとっさに手にあった槍を大きくして盾代わりにした。結果としては最悪の選択だったのかもしれない。サクラのスピードなら避けるだけで十分に間に合う。槍と槍は激突した。接触部を中心に眩い光とエネルギーが発生しサクラと背中の物をはるか彼方の次元と空間にはじき飛ばした。その瞬間サクラは気絶した。


EVAザクラ 新劇場版



私は猫である

 私は猫である。名は無いと言いたいところだが、アンズという立派な名前がある。どこで生まれたかは見当がつかない。アンズの木の下にあった割れたガラスの容器の中でニャーニャー鳴いていたところを拾われた。私はここで初めて人間というものを見た。しかも後で知ったのだが、それは小学生という人間の中で最も凶暴な種族だったらしい。この小学生というのは時々猫を捕まえては、遊びまくって殺してしまうらしい。しかし当時はそんな事はちっとも知らず、小学生の手のひらでニャーニャー鳴いていた。ここで初めて人間を見たはずなのだが、何か懐かしい気がした。昔、人間と話したり、遊んだりした様に思えた。
 そのうち小学生は飽きたらしく壊れたガラスの容器に私を戻すとどこかに行ってしまった。しばらくすると困ったことにお腹がへってきた。私が入っているガラスの容器はツルツルとして自慢の爪も歯が立たない。このままでは飢え死にしてしまうが、どうしようも無い。そのピンチを救ったのは私の初めての飼い主である、お母さんだ。夫が近所の小学校の教師をしているその女性は、初老の背が低い優しそうな顔をしていた。私を優しく抱きかかえると、家まで連れて行った。家にはお母さんの夫であるお父さんがいた。やはり優しそうな小柄の男性だった。その家で私は、人間の子供の様に可愛がってもらいスクスクと大きくなった。名前は拾われた傍にあったアンズの木にちなんでアンズと名付けられた。
 セカンドインパクト後の混乱した世界でも、私はそれほど苦労しなかった。自分達の食い扶持を削っても父母は私に食べさせてくれた。私は猫なので野鼠や野鳥を捕まえては、両親に見せてから食べて二人の食料の節約に努めた。もっとも両親は、野鼠を枕元において自慢げに座っている私を見ては苦笑いを浮かべていた。そんな生活を続けて数年が経った。私は美猫と言ってもよいと思う。つがいになって欲しいと近寄って来る雄がいっぱいいたが全てはねつけていた。食糧事情は中々好転しない中で子猫を生んだら、両親に迷惑がかかるからだ。ただ数年経つと雄は近寄ってこなくなった。猫は人間より早く育つ。私が年寄りというわけではないが、もっと魅力的な野良猫は沢山いる。私は両親の飼い猫で一生過ごそうと思った。

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 ある日の事だった。縁側で風に当たってのんびりしていた私にお母さんが近寄って来て、横に座った。私を抱き上げると、頭を撫でながら、何とはなしに話し始めた。最近は私も人間の言葉が分かるので静かに聞いていた。

「アンズ、今度うちで子供を預かることにしたのよ。お母さんを事故で亡くした子でね。お父さんがとても忙しい人なので、知り合いのうちで面倒をみることにしたのよ。碇シンジ君て言うの」

 そこで言葉を句切ると、お母さんは私の脇の下に手を入れて持ち上げ、顔の前に近づけた。

「アンズは少しシンジ君より年上なので、お姉さんになってあげてくれないかしら」
「ニャー」
「そうかい、ありがとう」

 お母さんは私の言葉は分からないはずだが、言っていることはわかったようだ。私はもちろんと答え、お母さんは微笑んだ。
 それからは、友達に聞いてまわったり、お父さんについて小学校に行き人間の男の子達を研究したりした。もっともその頃は私は単なる猫だったので、それほど知識は得られなかった。そんなこんなしているうちに、シンジが我が家へやって来た。第一印象はおとなしい子だった。自分には一緒に生まれた兄弟がいたかは分からないが、もっと賑やかだろう。アル君に似ていると思ったが、そのアル君が誰かわからず悩んでしまった。私が悩んでいると、シンジは玄関のたたきから、家に入ってきた。

「ニャー」
「アンズ、こんにちは」

 お母さんから聞いていたいたらしく私の名前は知っていた。ただ弟なのに呼び捨てとはけしからんということで、肩に飛び乗り頭の上によじ登って、肉球で叩いてやった。

「ありがとう」

 私が慰めたのと勘違いしたらしい。まあ私はお姉さんなので許してあげることにした。

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 シンジは家に来てから泣いてばかりだった。当時の私はお姉さんになったとは言っても単なる猫だったので、人間の子供がお母さんがいなくなることの重大さはわからなかった。ただ、泣いているのが可哀想で仕方が無かった。だからどこへ行く時もついて行き、慰めることにした。シンジが小学校に行く時もついていったので、シンジは学校では猫使いとあだ名がついたぐらいだ。そのうちシンジは私の存在に慣れ、私の前では笑ったり泣いたりと表情を見せるようになった。

 猫にとってはとても長いが、人間の子供に取っては時間は早い。シンジは中学二年生に成った。

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thunderblave are go!!

「救助隊規則第一条 全世界救助隊はthunderblaveロケットの秘密を他に漏らしてはいけない。間違って使えば……」

 自転軸の変化により今では赤道近くになってしまったその島は、太平洋の日本に近い場所にあった。セカンドインパクトの影響で地殻変動が起きて出来たいくつかの島は、国連の管理下に置かれていたが、その島はある富豪が資金力と祖父の政治力で手に入れた。富豪と言っても、見た目はモデル並みの容姿と実用的な身体を持った見目麗しい女性だ。ただ目つきがキツイ美人で美丈夫と言うのが一番しっくりくる。
 その美丈夫は桜色のガウン姿でその島の自室で、書類を読み返していた。彼女が全ての私財をなげうって作ったwwr(World wide rescue)の準備はほぼ整っていた。セカンドインパクトで愛する夫と最愛の従姉妹とその家族を失った哀しみが繰り返されないように作った組織だ。彼女が隊長を務めている。

「ん」

 彼女の自室は島の中央の建物の最上階にある。窓の外を明るい流星が流れたので目を向けた。次の瞬間、島の短い滑走路の辺りから閃光がきらめいた。室内にアラームが鳴り響く。

「マリエルどうしたの」
「人が光ってます」

 一番上の養子の名前を言うと、本人のインターコムに回線がつながった。彼女はWWRの隊員の一人だ。名はマリエル、姓は花右京だ。

「人が光る訳ないでしょう」
「でも光ってます」

 部屋のスクリーンに光景が映し出された。マリエルが身につけているカメラの光景だろう。確かに、滑走路の上で倒れている少女が光っていた。

「ナデシコ」

 思わず隊長は、大道寺ソノミは立ち上がった。滑走路には、時空を超え、初号機とふれあったためか13,4ぐらいに若返ったサクラが倒れていた。

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 この島の地下には一応尋問用の部屋がある。尋問用と言ってもホテルの一室にしか見えない。ただ壁の一面に大きな鏡があり、隣り合った部屋から監視が出来る。サクラはその尋問用の部屋に収監された。島に常駐している医師の花右京タロウの見立てだと、生物的な年齢は15歳ぐらいで至って健康だそうだ。島には最新の医療設備が揃っているが、そのどれでも全くの健康体だ。

「ちょっと気味が悪いぐらい健康です」

 タロウの言葉だ。島の医療設備は高性能過ぎて、どんな人でも一つや二つの健康の偏りが見つかるのだが、それがないそうだ。ただその割に目を覚まさない。ともかく今はWWR立ち上げの大事な時期だ。もしかしてスパイだったらということで、尋問用の部屋で軟禁と言うことになった。隊長の娘たちのうち、実子のトモヨのサイズが近かったので彼女のパジャマを着せて寝かせてある。ついでに世話係もしている。トモヨもWWRの隊員ではあるが、まだ見習い扱いなので、それほど仕事はないのでうってつけだ。何よりトモヨ自身がサクラに一目惚れ状態で、進んで世話をしている。

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 一週間後サクラは目覚めた。尋問はマリエルとタロウが担当した。隊長のソノミは、最愛の従姉妹ナデシコにそっくりのサクラの前では、頭の働きも鈍るということで、副隊長格のマリエルが担当した。タロウは、体調が急変した時のためにいる。尋問部屋のベット脇でサクラが話す昔話を聞いていた。トモヨもお世話係として側にいる。
 サクラは先ほど魔法の実演もして見せたが、時や次元を超えたせいかほとんど魔力は失われて、威力は無くなっている。何かするにもWWRの道具を使った方が手っ取り早いぐらいでしかない。しかもサンとムーンのカードの反応が無い。自分の中にいるのは分かるが呼びかけても返事が無い。そのためサクラは相談する相手もいない。魔法使いとしては八方ふさがりだ。

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