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「EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話」
(第1部)[1/2]

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話しは変な方へ行きます。

ーーーーーーーーーー

 シンジは朝、寝苦しくって目が覚めた。何かで鼻が塞がれている。
 
「ん?」

 柔らかかった。目を覚ますと、全裸のアンズの胸に顔が埋まっていた。

「お姉ちゃん何やってんだよ」

 思わずアンズの頭を思い切り叩いてしまった。




 EVAザクラ新劇場版

 序の次 第一話


究極!!



「あうう、猫の姿で寝たのよぅ」

 とりあえず、シンジはアンズに服を着せた。

「起きたら、人間の姿になっていたのよぅ。これはお姉ちゃんは悪くないのではないかしら」

 叩かれた頭が痛いのか、アンズは頭を押さえて、涙ぐんでいる。
 
「じゃ、寝床は別」
「そんなぁ」
「何やってるの」

 ミサトがあくびをかみ殺して部屋に入ってきた。

「ミサトさん見えてます、大体ミサトさんがそうだから、お姉ちゃんがこうなるんです」

 ミサトのパジャマははだけて胸のポッチリが見えそうだ。実にだらしない。不思議にやらしくない。

「いいじゃないの、美人のお姉ちゃんに添い寝してもらって」
「そういう問題じゃないです」
「まあまあ、さ朝風呂は楽しいわぁっと」

 面倒になったのか、ミサトは部屋を出て行った。

「今日の朝食当番はミサトさんですよ」
「やっといてぇ」

 ミサトの声が遠ざかって行く。シンジはため息を付いた。

「あの、お姉ちゃんが作るのは」
「駄目、食材の無駄」
「あうう」

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「お姉ちゃん思うんだけど」

 葛城家の朝の食卓はなんのかんのとシンジが作る場合が多い。今日の食卓にはご飯にアジの干物に味噌汁に漬物と、実にトラディショナルな朝食が並んでいる。アンズは魚を出しておけば、それで満足なので楽だ。魚をおいしく食べたいが為に覚えた箸さばきも堂に入っている。

「レイちゃんは、まるで野良みたいな生活をしてるのよ。それはいけないわ」
「野良っていうのは変だけど、確かにひどい生活ですよ」

 朝食後、登校と通勤には時間の余裕があるため、お茶の時間となった。お茶はミサトが入れた。アンズだけ麦茶なのは猫舌な為だ。アンズはどら焼きをお茶請けに頬張っている。本来猫は甘みを味覚として感じないそうだが、人間になったらわかるようになったそうだ。やたら甘い物を食べたがる。一応ネルフで、生物学的、医学的、遺伝子的な検査をしたところ、ほぼ18歳ていどの人間の少女と変わらないらしい。ただ何らかの理由で、筋肉繊維の力が強く、神経の伝達速度も早いらしい。この原因が判ればレイやシンジの能力が上がるので、研究材料として重要だ。週一でシンジと一緒にネルフに行って検査を受けている。リツコなどは解剖したいところだが、シンジの精神安定剤として有用なので今のところそれは無い。

「レイの生活環境などはリツコの担当だわ。あまり口出しはできないけど、シンちゃんが友達としてなんとかしてあげるのはかまわないわよ」
「お姉ちゃんとしては、レイちゃんはシンちゃんのお友達だから、なんとかしてあげたいのよ」
「姉ちゃんは、まずは人間の社会常識を身につけてからにした方がいいよ」
「そうよねぇ〜。この前みたいに朝食にネズミを出されたら、私でも無理だわ」
「あうぅ」

 雑談をしているうちに時間となった。朝食の後片付けはアンズに任せて、シンジとミサトは出ていった。アンズはシステムキッチンのビルトインの食器洗浄機に食器を入れ、残飯を生ゴミの処理機に入れる。初めのうちは食器をいくつも割ったアンズだが、それなりにこなしている。後片付けを終えたらTVドラマの時間だ。今回の話は、ドラマの主人公が親友の誕生日プレゼントを選んで起こる騒動がメインだ。
 
「レイちゃんにプレゼントしよう。狩り頑張ったし、ご褒美だにゃ」

 アンズはいつも持っていろと言われた携帯電話を取りだした。短縮ダイヤルが登録してあるボタンを押した。登録ボタンには、シンジ、ミサト、ネルフの作戦課のダイヤルイン、そしてトーゴーの電話番号が登録してある。
 
「トーゴーさん、お願いがあるの」

 困った時はトーゴーに電話しろと言われているのでその通りにした。
 
ーーーーーーーーーー

「また?」

 今日は午前中ネルフの用があったので学校は休みだ。レイは午後ずっと本を読んで過ごしていた。マンションの戸を叩く者がいるので、カメラで見てみるとアンズが戸を連打していた。そのままにしておくと五月蠅いので戸を開けた。そこには興味津々で目を輝かせたアンズがいた。この所、暇になるとレイのところによく来る。今日はやたら大きいリュックを担いでいる。

「シンちゃんの狩りの仲間なら、お姉ちゃんの妹も同じなのよぉ」
「妹?」

 珍しくもレイはため息をついた。妹など自分には一番関係なさそうな言葉だ。もっとも何を言っても無駄な気がする。敵は無敵の脳天気だ。ミサトからアンズの事を聞いている。猫ならば仕方が無いのかもしれないと思う。
 
「入って」
「おじゃまします」

 アンズはそれなりに礼儀正しい。シンジの姉として恥ずかしくないように、猫の時もそうしていいた。レイのワンルームにはベッドの他には、座る物は蓋付きの小物入れ兼用の椅子だけだ。とりあえずそれをアンズに勧めた。アンズはその椅子の蓋をしゃくるように叩いてから座った。レイはベッドに座る。
 
「で、何?」

 レイは無敵の鉄面皮で、抑揚の無い声で聞く。普通の相手なら話しにくくなるだろうが、アンズには効かない。
 
「レイちゃんの部屋はまるで野良の巣よ。それじゃいけないわ」

 アンズは背負っていたリュックを二人の間に置いた。ファスナーを開くと、ビニール袋に詰められた衣服が大量に出てきた。トーゴーに頼んでレイのサイズの服を買い集めてもらった。お金はアンズ用としてトーゴーに渡されているカードで支払いを済ました。アンズは現金は理解できるがカードは判らないのでこうしている。

「最近お姉ちゃんは、服を着替えるのが楽しいのよ、これはレイちゃんにもと思ったの」
「そう」

 レイのところに来るたび裸か学校の制服で迎えられたアンズは、まず服だなと思った。猫だって時々毛が生え替わるのに、レイちゃんが同じ格好なのは、狩りの先輩として見過ごせないといったところだ。

「まず着てみて」

 色とりどりの衣服には、レイもそれなりに興味を持ったらしい。アンズが取り出した衣服のビニール袋を破いて広げてみる。いくつか見てみた後、白い飾り気の無いワンピースを手に取った。アンズの目を気にせずさっさと着替える。
 
「にあうなぁ、レイちゃん綺麗だにゃ」

 白い肌に、白い髪、白いワンピースに赤い瞳、薄暗い室内に白い花が咲いたように見えた。

「次は帽子だにゃ」

 ちゃんとツバ広の白い帽子も用意してあった。アンズが渡すと深めにかぶる。部屋の隅の姿見の前に行き、自分の姿を見た。
 
「残りの服もプレゼントだよ。狩りのご褒美」
「狩り?」
「あのでっかい獲物をシンちゃんと捕まえたでしょ。シンちゃんが感謝してたから、お姉ちゃんとしてはご褒美をあげようと思ったのよ」
「そう」

 それなりに嬉しいのか、レイは姿見の前でくるりと回って全身を見てみる。
 
「服が決まったら次は家具だわ。レイちゃんが綺麗になって綺麗なおうちに住んだらシンちゃん喜ぶにゃ」
 
 アンズは携帯を取り出すとトーゴーに電話をかけた。
 
ーーーーーーーーーー

 一方シンジはネルフの用もないので学校で学生の本分にいそしんでいた。前よりはクラスにもなじみ、普通に学生をやっている。今日は夜からシンクロテストがあるが時間の余裕もあり、のんびりとした一日だった。セカンドインパクトで社会もいろいろ変わったが、放課後の掃除などは変わらない。人類を救うより、掃除の方が向いてるなどと考えつつも、掃除当番を真面目に済ませた。

「この旧北極の鉱山で、大爆発があったってニュースがあっただろ、あれ使徒が出たって噂だよ、シンジ知ってる?」
「知らない」
「ほんま、ケンスケは情報はやいなぁ」

 最近、シンジとトウジとケンスケは、学校から一緒に帰ることが多い。拳は魂を表現する物だなどと大げさな台詞はともかくも、トウジとシンジ、ついでにケンスケは殴り合った後、仲良くなったらしい。そのメンバーにレイやヒカリ、サクラ、トモヨなどが加わる事もある。ルーシーは日本が物騒になってきたので家族そろって里帰り中だ。ともかくシンジがネルフに行かない日は一緒につるんでいる。
 使徒もこのところ現れないので、第三新東京市もにものんびりとした空気が漂っている。しばらく歩くと市の外縁部に来た。やたら広い屋敷の横に出た。大道寺家の屋敷、別名WWRの日本支部だ。

「じゃ、俺用があるから」
「わしもや」
「じゃまた明日」

 トウジとケンスケは門番に挨拶をして、大道寺家の正門から入っていった。

「二人とも最近何をしてるんだろう」

 シンジは首をひねりつつ家路を急いだ。

「「師匠お願いします」」

 普段着だが動きやすそうな服を着たトウジとケンスケは頭を下げた。ここは大道寺家の広い庭の中だ。目の前には黒マントの男が立っている。
 
「どうもおまえらに師匠と呼ばれるとむずがゆいな、兄貴でいい」

 そう言いつつ頭をかいているのは土門だ。

「師匠は師匠や」
「では師父」
「まあいい、では基本の型からだ」
「はい」

 トウジとケンスケは踏ん張ると、両手で中段の突きを繰り返した。土門はその二人を見ている。時々型のずれを修正している。実はずいぶん前から二人は土門に拳法を習っている。シンジのエントリープラグでの姿を見てから、トウジは何かしなくてはと思ったらしい。翌週ケンスケに打ち明けたところケンスケも同じ思いを抱えていたらしい。二人で話し合ったところ、大道寺家に拳法の達人がいて、トモヨ達のボディーガードをしているという話を思い出した。そこでトモヨを通して頼んでもらったところ、トモヨとサクラが屋敷にいる時なら問題ないと言うことになった。元々帰宅部だった二人は時間はたっぷりある。その為ほぼ毎日放課後大道寺家に訪れては土門に教えを請うている。もう二ヶ月は続いている。
 土門も結構二人を気に入っているらしい。
 
「やめ」

 土門の合図で二人は、型の稽古をやめた。

「おまえ達意外と筋がいい。体幹がぶれないし、それなりに筋力もあるしな」

 土門はそう言うと近くのテーブルにあった飲料水のボトルを二人に投げてよこした。
 
「「ありがとうございます」」
「おまえら固いなぁ」

 土門はなんとなく照れ笑いを浮かべた。WWRの隊員と違い純粋な拳法の弟子は初めてだ。まだしっくりこない。
 
「一分休んで、全力で屋敷を一周走ってこい」
「「はい、師匠」」
「だから、師匠はよせ」

 日々何かが培われていく感触がうれしく、毎日通っている二人だが、実はお目当てはもう一つあった。ズバリ女の子だ。トウジは以前助けてもらった美しいお姉様であるコノエと会うのが楽しみだったし、ケンスケはおたく趣味で似たり寄ったりのトモヨと話すのが楽しい。それに稽古の後は、大道寺家でお茶を出してくれる。お茶もお茶菓子も一級品で疲れた体に染みわたる。
 
「げ、イインチョ」
「げとはなによ、げとは」

 二人の稽古が終わった後、土門はトモヨのボディーガードのためいなくなった。それと入れ替わりにヒカリが訪れた。
 
「私は委員長として、二人が大道寺さんに迷惑をかけていないか、見に来たのよ」
「なんや、そないなことあるわけ無い」
「ま、そう言うことにしとこうよ、トウジ」

 ケンスケの少しからかうような口調にヒカリの目がつり上がる。
 
「相田くんなによ」
「何にも、じゃトウジ、委員長のご神託どおり帰りますか」
「そやな」
「それでいいのよ」

 まだ小言が足りないヒカリは、二人を睨みつつ二人の後を付いていった。
 
ーーーーーーーーーー

 その日夜、シンクロテストがあるため、シンジはネルフの本部に向かっていた。やたら長い下りのエスカレーターの前まで来た時、通路の反対側からワンピース姿の少女が歩いてくるのが見えた。夜屋内にもかかわらず、帽子を深くかぶっているため、顔は見えない。

「綾波?」

 近くまで来てようやくレイだという事に気がついた。ついまじまじと見てしまった。だいたい私服姿を見たことがない。

「変?」

 あまりにもシンジが見つめるので、レイとしては珍しく心配そうな表情をしている。

「そんなことないよ。似合っていると思う」
「そう」

 レイはそう呟くように言うと、エスカレーターに乗った。シンジも後ろに着いていく。

「服はどこで買ったの」

 レイが後ろを向く。

「お姉さんがくれた」
「綾波ってお姉さんいるの?」
「シンジ君のお姉さん」
「えっ、姉ちゃん……迷惑じゃなかった?」
「騒がしかった、でも嫌いじゃない」
「よかった」

 レイはまた前を向く。

「帽子邪魔じゃない?」
「大丈夫」
「姉ちゃんちょっと押しつけがましところがあるから」
「お姉ちゃんがいるってどんな感じ?」

 レイは振り向くと、エスカレーターを一段上がった。白い顔が近づいてきた。
 
「どんな感じと言われても、お姉ちゃんはお姉ちゃんだし」

 それなりに整ったレイの顔がずいぶん近くなって、シンジは少し照れくさくなった。視線を斜めに向けて頭をかいた。
 
「大体、ちょっと前まで猫だったし」
「猫も人も大差ない」
「そうかなあ」
「使徒に比べれば」
「そうだけど」

 レイは前を向くと、黙った。もう興味が無くなったようだ。シンジはそっとため息をついた。

ーーーーーーーーーー

 翌日は土曜日で学校は休みだ。もっとも休日でもシンジはシンクロテストなどで忙しい。アンズはシンジがネルフに行った後、国語のドリルをやっていた。本を読めるのが姉っぽいのではと思ったのでシンジに相談したところ、小学生のドリルから始めることになった。まずはひらがなとカタカナを書けるように練習している。食い気と直結していた箸の使い方と違い、文字を書くのは難しいらしく苦戦している。

「なんか疲れたなぁ」

 ミサトは徹夜仕事で昨日から帰ってきていない。勉強も飽きたが、一人だとやることが無い。暇だ。そこで遊びに行くことにした。レイは今日はネルフに行って留守なのはシンジに聞いていたので、サクラの家に行くことにした。トモヨとサクラは猫又であることを知っているので、気が楽だ。アンズはお出かけ用のいくつかある帽子のうちお気に入りを被ると、家を後にした。
 
「こんにちわぁ」

 比較的近所にあるため、屋敷にはすぐ着いた。門番も顔なじみで、すぐにトモヨの部屋に通された。部屋にはトモヨとサクラがいた。こちらの世界でもトモヨはサクラの着せ替えが趣味な為、試着の最中だった。
 
「わあ、可愛いなぁ」
「その通り。サクラさんは何を着ても可愛いので困ってしまいますわ」
「えへへ」

 義理の姉と言えなくも無いアンズに言われて、サクラは少し照れていた。

「実はアンズさんのもあるので、後で着ていただけますか?」
「お姉ちゃんぽい服?」
「はい、もちろんですわ」

 トモヨのちょっと変な笑い方に珍しくアンズが引いていた。
 
ーーーーーーーーーー

「そうなの、レイちゃんの部屋はまるで野良の住処なのよ。お姉ちゃんとしてはなんとかしてあげたいわ」

 アンズはお煎餅を囓りながら熱弁している。シンジの狩り仲間であるレイの生活環境の改善をしてあげたいらしい。

「レイちゃんって真っ白で他人とは思えないのよね」

 自分の白い毛並みとレイを比べて親近感を持っていることを何度も繰り返す。
 
「シンちゃんはレイちゃんの事を心配してるから、お姉ちゃんとしてもなんとかしてあげたいのよ」
「碇さんは、綾波さんの事をよく話すんですか?」
「うん、そうよ」

 サクラも気になるのかアンズとレイの事を話し出した。日常のシンジの様子も話してくれるため、サクラとしても嬉しい。
 
「あら、こんな時間ですわ。今日は銀行に用がありますの。アンズさんはお昼ご飯は召し上がっていってくださいな」
「トモヨちゃんのうちのご飯は美味しいから、お姉ちゃん大好き。お魚ある?」
「もちろんですわ。サクラさん、午後一時頃には帰って来ますのでアンズさんと先に召し上がっていてくださいな」

ーーーーーーーーーー

「コノエさん」
「大丈夫です、急所は外れてますから。ただ身動きがとれません、不覚です」

 崩れ落ちたコノエは傷口をハンカチで押さえた。見る間にハンカチが血で染まっていく。
 トモヨは秘書とボディーガードを兼ねているコノエと二人で、第三新東京市の外れにある銀行を訪れた。銀行や学校はジオフロントの上からは外れたところにある。使徒戦でいちいち壊れたらたまらないからだろう。大道寺家の銀行口座について相談するため二人が銀行に入り、窓口に並んだ丁度そのときだった。いきなりコノエは後ろから拳銃で撃たれた。別にコノエを狙った訳ではない。乱射した小口径の拳銃弾がコノエの左太ももの後ろに食い込んだ。32口径の低速弾は貫通もしないで、太ももに残りかえって始末が悪い。WWRの制服を着ている時ならば防弾防刃なので問題ないが、今日のコノエは普通のスーツだ。軸足に拳銃弾が食い込んでは自分の身も守れない。不幸中の幸いと言うべきか、コノエ以外は撃たれていない。
 
「死にたくなかったら、動くな」

 目の部分だけがくりぬかれた覆面をした一団が銀行に入ってきた。銀行強盗だ。
 
「手当をさせてください、出血で死んでしまいますわ」

 トモヨが大声で叫んだ。
 
「人間はそう簡単には死なねえ、黙ってろ」

 強盗団の一人がそう叫び返して、拳銃をトモヨに向けた。コノエは痛みを無視してトモヨの前に移動し盾となった。トモヨは身をすくめる。脅しだけで撃たれなかった。コノエは無理に動いたので、出血が酷くなった。痛みで歯を食いしばり、床に伏せている。トモヨはこの傷口を押さえて呟いた。

「師匠がいればこんな強盗なんて」

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 第三新東京市から外れた場所で、ネルフメンバーが巻き込まれた訳ではないので、ネルフは動かない。土門を初めとする、一般のもめ事担当の隊員もたまたまほとんどWWR本島にいる。サクラもこの前の使徒が出たとき無理したため、魔力が尽きている。大規模災害対策を優先するWWRも手一杯で動けない。ともかく対応は普通の警察がすることとなった。

「何が起きてるんだろう」

 ケンスケはトウジの家に行く途中でこの騒ぎに出くわした。警察による整理の隙間をぬって、人ごみの出来るだけ前に出る。銀行のガラス張りの一階内部が見える隙間があった。カメラを向けた。。

「トモヨちゃんだ。コノエさんが怪我してる」

 普段から持っている望遠レンズ付きの一眼レフには二人が写っていた。慌てて大道寺家に電話をかけようとするが、警察があたりの電話とネットを封鎖しているらしく繋がらない。しばらく見ていると犯人は人質を銃で脅して二階へと移っていった。

「どうしよう」

 銀行は雑居ビルの一階と二階を占めていた。ケンスケは銀行の周りを調べてみると、なんと隣のビルとの隙間に壊れた換気扇を見つけた。警察も気づいていないようだ。プロペラもとれていて細身のケンスケなら通れてしまう。昔のケンスケなら警察に知らせて、後は任せたのだが、土門に鍛えられて、少し自信が付いているケンスケはなんと自分で何とかしようと思った。
 銀行に入ってみるとそこはロッカールームだった。妙に女臭い所を見ると、女子更衣室らしい。何か武器に成りそうな物を探してロッカーを開けていると、その音を聞いた見廻りの一人が更衣室に入ってきた。

「鳩尾」

 反射的に出た一撃は、毎日土門に鍛えられている中段の突きだった。訓練は裏切らないとの言葉通り、見事に覆面男の鳩尾に決まった。男は崩れ落ちた。

「これでよしっと」

 ケンスケは覆面男に化けて潜入することにした。気絶している男の服と覆面を脱がして、自分が着ることにした。素早く着替えて、あとは落ちている覆面をつければ完成だ。
 ケンスケは落ちている布切れを拾って頭からかぶった。

「あれ?」

 覆面にしては何か違う。妙にフィットする。ロッカーの戸の裏の鏡を見てみた。

「げっ、これパンティーじゃないか、間違えちゃった、これじゃ変態だよ、かぶり直さなきゃ」

 なぜかロッカーの下に落ちていたパンティーをかぶってしまったらしい。

「ふぉ」

 パンティーを取ろうとした瞬間何かがケンスケを貫いた。

「何だ、この皮膚に吸い付くようなフィット感は」

 ケンスケの身体を震えが走った。

「この刺激、これがパンティーという物か。な……何だか下着ドロボウの気持ちがわかる気が。あ……ああ、そんなことを思うとますます感じていく……はっ、今はそんな事をしている時じゃ無いのに」

 ケンスケは蹲る。体の震えが大きくなる。

「でも、もう!ぼくもう!!」

 その瞬間何かが弾けた。

「気分はエクスタシー」

ーーーーーーーーーー

「ATFが検出されたの」

 徹夜二日目の眠い目を擦りながら、リツコはマヤに聞いた。マヤも徹夜二日目だ。


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