AR Mobile Viewer

「エストポリス転生記 洗礼」
(第1部)[1/1]

[前話][次話][目次][][登録]
故郷が滅んだ俺はあてもなくさまようことを余儀なくされた。何故滅んだのかなんて理由はどうでもいいが厄介なことをしてくれたものだ。
寝床を探さねばならない。村中の金品がごっそりなくなっていたので、恐らくは強盗、世界観的に言うと野盗か。そいつらの仕業に間違いないだろう。

…しかし、面白いものだ。
死ぬことを考えていたはずなのに…生きるために思考を張り巡らせている。
心のどこかに生への執着があるのだろうか?
確かに、今のこの状況は多少面白いといえる。
世界も知らず、親も知らず、自身のことすら知らず…神、或いは運命は何故俺をこのような状況に陥れたのか。それを知るのもまた一興か。

「はは…」

自然と乾いた笑い声があがる。
その意味を知るまでは、死ぬわけにはいかない。

いいだろう。生きてやろうじゃないか。
俺の最期は如何なるものか。
それはまだ誰にもわからないが。
抗おう。泥をすすっても、這いつくばってでも。生きて生きて、その先には何があるのか━━今、とてつもなくそれが知りたくなった。

そこからは必死だった。
生きるために。
襲った。奪った。騙した。時には手痛い目にあうこともあった。命からがら逃げたした。
人間だけではない。
この世界、どうやら怪物の類もいるようだ。
最初は驚いたが、もう慣れた。
殺して、肉を喰らい、血を啜った。
死にかけたこともあった。
実際死を覚悟した回数は少なくない。
だが、そのような洗礼を浴びても尚、悉く命を拾った。
運命は俺を生かしたいのだろうか?

そして、十数年が経つ。
前世の記憶などもはや朧気だ。
だが、それでいい。
どのみちそんなものに執着はない。
怪物を倒すのも段々と慣れてきた。
幸い、それほど強いやつに今まで会っていないというのもあるが…。
俺は村や街に繰り出し、怪物を退治して生計をたてるようになった。

剣と魔法。
そう聞くと、心踊る者もいるだろう。
それを駆使して怪物をなぎ倒す。
俺も一度は夢見たことがある。
今ではそれが現実となっている。
大陸から大陸を渡り歩き、怪物(モンスター)を狩る。いつしか、そんな生活にも退屈を感じ始めていた。

「兄ちゃん!助かったぜ!」
「いえいえ、なんのことはないですよ。」
「お礼は弾むぜ!ところで、名前を聞いてなかったな。」
「名前…ですか。」
「おうよ!是非とも教えてくれ!アンタは恩人だ!」

「…レンと申します。また何かあれば。」

[前話][次話][目次][][登録]