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「鉄鍋のジャン! ジャン×キリコ ss」
(第0部)[1/1]

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鉄鍋のジャン! ジャン×キリコ ss




ザバァァァァァァッ。

彼は、シンクの中に手を突っ込むとーーーアコーディオンのように、中から数十枚ともあろう皿の山を引き上げた!


「カカカカカカカーーーッッ!」


 彼の名は、秋山醤(ジャン)!

 ここ銀座、「五番町飯店」の見習いである。



「相変わらず、仕事が早いよなァ」

「ほんと嫌味なやつだぜ、アイツ」

ばんっばんっ!

「……!?」

「こらっ望月っ、見てないで早く仕事しろ!」

 彼女の名は、五番町霧子(キリコ)。

 「五番町飯店」の創始者(オーナー)、五番町睦十の孫であり、跡取り娘である!

 
「す、すいません、キリコさん……」

「……」

「おうおうどうしたキリコ! 今日はやけにイラついてんなぁオイ」

「ふん、無駄口叩いてないで仕事しなさいよ。ジャン」

「そろそろ認めたらどうだーーー「秋山」の方が「五番町」よりも優れているってことをよォ」

「……飽きないわねぇ、またその話?」

「お前、ビビってんだかなんだか知らないがーーー全然俺と“勝負“しようとしねぇじゃねぇか」

「……」

「白黒付けるのがコワいのか? ああん?」

「……ふん、バカみたいなこと言ってないで、さっさと終わらせなーーー」

「俺は“失望“してんだぜキリコォ!」

「……」

「おかしな話だぜ、キリコ。「秋山」の名をもつ俺が……どうしてこの店で“月給12万“で雇われてんだ?」

「……それは、「見習い」だからでしょ」

「嘘つけ。俺はそこにいるクソバカの望月よりもよっぽどいい腕してるぜ」

「なんだと!」

「それはそうね。……で、何が言いたいの」

「キリコさんまで……」

「お前は“「秋山」“から逃げてるってこったよ」

「……」

「お前だけじゃねぇ。この「五番町飯店」そのものがそうーーーこの俺様に恐れをなしていやがる!」

「なんだとォ……!」

「なに馬鹿げたことを……」

「その証拠に……最初に言わなかったか? 俺は「五番町睦十を倒しに来た」って」

「……」

「それをお前らーーー睦十もそうだ。俺と正面からぶつかろうともせず、あくまで飼い殺すことしか考えていない」

「……」

「いや、「それしか出来ない」と言った方が正しいかーーーてめぇとの力の差をハッキリさせるのが怖えぇんだからよ!」

「てめぇ、ジャン!」

「金が欲しいだけだろ!」

「カカーッ!! 「中華の頂点」が聞いて呆れるぜ。お前らにプライドってもんは無ぇのか? ええ?」

「……」

「ふん、キリコ。黙ってるだけか?」

「……」

「まぁ、お前なんかどーせ“敵“じゃないがな」

「……ふん、どうかな」

「あん?」

「そんなこと言って、実は怖いのはそっちじゃないのか? 山ザル」

「……んだと、デブ女」

「そっちこそーーー「見習い」の立場に甘んじて、黙々と働いてるだけじゃないか」

「……」

「「「秋山」が怖い?」冗談じゃないわよ! あんたなんてちっとも怖かないわ」

「……」

「いいわ。そんなに「勝負」がしたいんならーーー“土下座“しなさいよ」

「……」

「キリコさん、そいつは言い過ぎじゃーーー」

「ふんだ、できないわよ。どーせ……こいつは料理で“人を打ち負かす“ことしか考えてない料理人のクズだからねっ」

「……けっ」

「……」

「……ふん、じゃあ仕事に戻るから。あんたも早くやんなさーーー」

「キ、キリコさん、あいつ……」

「……えっ」

 キリコが振り向くと、そこにはーーー。

「……」

「あーあ、あいつ、マジでやってるよ」

「キレーな土下座だこと……」

「……ちょ、ちょっと、なにやってるんだよ! ばっかお前っ」

 キリコは、ジャンに走り寄る。

 その時、ジャンはおもむろに頭を上げーーー。

「これでいいか? キリコ」

「……」

「ぬかったなーーーキリコ。この俺に頭を下げさせておいて「勝負しない」なんてナシだぜ?」

「こ、こいつ……っ」

 ばたんっ。

「お前たち、今日は終いだ」

「そ、総料理長!!」

「……」

「ジャン、立て。調理場の床を汚す気か」

「ちっ……」

「キリコも。仕事さぼってる場合じゃないぞ」

「べ、別にさぼってたわけじゃあ……」

「さぁ、早く片付けるんだ。“例のお客さん達“が表で待ってるからなーーー」

「……」
 
「ふんっ」

「ふんだっ」


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