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「恋煩い」
(第0部)[1/1]

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恋煩い




 ポチポチ。

「「すいません、気分を害するかもしれないですが、投稿してもいいですか」」

「……」

「「今日、会社でセクハラを受けましたーーー」」






 カタカタ。

「……」

「おい、ちょっと……君。これもやっといてね」

「……」

「ほい、これもね」

 無神経に積まれる書類の束。

 新入社員の彼女は、ここ最近、忙殺されつつある。
 

「なあ、あいつなんかいい匂いしねえ?」

「だよな。乳もでかいし」


 コピー機の置いてある辺りから、今日も何かが聞こえる。

「頼んだらやってくれそうじゃね?」


「……」







「……あーーーー! くそっ!」

 彼女は、布団に倒れ伏した。

「……」

 感情が収まると、彼女は思い立ったようにスマホを取り出す。

 ポチ、ポチ。

「「最近、誰かに見られてる気がするんだけど。何これ」」

 彼女の渾身の“つぶやき“が、今日も炸裂したーーー。

「「まあ、おおよそ見当ついてるけどなぁ……」」

 えっ。

「「本当、最近ろくなことがない」」

 ………。

「……」



 私の名は市原歳史。

 否、そんなことはどうでもいい。

 問題はどこでバレたかだ。

 どうやら、私がスマホを使い、ソーシャルネットワークサービスで彼女の日常をウォッチングしていたことが彼女にバレた。

 いいや、先に、“彼女“のことを話しておく必要があるまい。

 彼女の名は、梅箸和子。

 私の学生の頃の知り合いで、

 ぴろりんっ。

「「あーあ、マジで上司許せん」」

 よし、バレてない。





「ふう、心臓に悪いな……」


 ラインッッッ。

 突然の轟音に、私は携帯を落とした。

「ああっ、もう、なに! こんな時に……」 


「「お前、ちょっと大学来いよ」」


 それはーーー数年ぶりの、“彼女“からのメッセージだった。

 高鳴る胸。

 私は、はやる気持ちで返信を打ち返すーーー。



「「久しぶり(笑) 元気だった?」」





「「お前、潰すわ」」



2へ続く……

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