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「特級賭博師の領土争奪戦記」
(第0部)[1/1]

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もし別の時代に生まれていたら、もし別の政治の元に生まれていたら、もしこの国であの戦争が起きなかったら。答えもなく、極限までに意味不可解な問いに神が答えてくれるわけがなかった。

私の人生はこのルートをたどってこなければ、多分歴史に名を残すような偉業を立てることも難しくはなかっただろう。これといった屈折もなく、幼い頃から神童と称えられることも、世界的な賞を取って人生を権力と富に包まれ謳歌することだって出来た。


なのに、効率が悪い行為の象徴である戦争を憲法前文で許可しており、今見事にオリヴィア海第三次世界大戦中のこの国に生を受けてしまったとは・・・。
こんなの異世界転生小説でも笑えないぞ。

ディアーニャ王国というのはなぜかしらないがこの世界にて先進国としての扱いを受けている。戦争を許可しているようなバカ王国、ついでにいってしまえば王が税金を独占し、国民は税を納めるという義務に囚われ、一部の人間しか教育を受けられない、革命が起きる予感しかしない遅滞的な政治を行っている国が先進国など、阿保らしいにもほどがある。
ここまで聞くとこの世界崩壊しているなと思われるが、一応理由というものはある。
単刀直入に言ってしまうと、世界全体で行われているバカみたいなシステムに関して世界的に一二を争うほどの強者がいるということ。とはいえそのシステムも考えが斜め上すぎるし、生産性が悪いとしか言いようがない。

『国の領土と金を賭けて、国代表の賭博師にギャンブルをしてもらう』

なんて・・・・・。
リターンは良い、だけどリスクがでかすぎる。今まで何回も国と領土をギャンブルで奪い合ってきた。ギャンブルとは運というのもあるがそれさえコントロールしてしまうのがギャンブラーである。心理による駆け引き、勝負勘、才覚一つで国の運命が左右される。ディアーニャが先進国と呼ばれるのは、その賭博師の素質、そして強さがトップレベルなのである。
今行われているディアーニャとオリヴィア海を挟んだグレート・アリス帝国の各自領土と現・ディアーニャ領海のオリヴィア海を賭けて大争い中なのである。
元はグレート・アリス帝国がディアーニャ宣戦布告を仕掛けてきて、ディアーニャの頭御花畑のバカ国王、エース・ディアーニャがそれを承諾し、大事な領海と領土を賭けて明日ギャンブルをするという。
これはもう三回目の話であり、二回すべてディアーニャの勝利で終わっている。一回目はオリヴィア海を、二回目は帝国の半分を植民地に、まだこりていないのかとどちらの国民も思っているだろう。

なので、大戦と言ってもMP16が窓の外で鳴り響いてたり、都市のど真ん中で爆弾が落ちてきたり、国民が強制的に徴兵に駆り出されるということはないのである。
ただ、小学一年生女子(賭博師適性は女性の方が男性より30倍多いので、近頃女性のみが適性検査を受けることが義務化された)で受けることを憲法で定められている賭博師適性検査にて合格基準を超え、国から名誉ある賭博師の勲章を与えられたえりすぐりのエリート達の中でも天賦の才覚を持った一人の賭博師が国の命運を賭けてギャンブルをするだけの戦争である。

そして・・・・
私の目の前でや食後のデザート名義のチョコレートパフェに舌鼓を打ちながら、10歳の年甲斐にあった青の生地で出来たひらひらとレースのついたワンピースを着ている少女。
明日帝国とのギャンブルを行うことを命じられた賭博師、ディアーニャ賭博師連盟特別幹部会会員、特級賭博師勲章を授与した、ローズ・シャンデリア伯爵である。

そして、紹介が遅れたが、私は彼女の管理を賭博師連盟から直々に任された、王立ディアーニャ賭博師研究科所属、アリーシャ・ロマネスクだ。親がこんな女性っぽい名前を付けたというところは口をつぐんで欲しい、何を言おう、私は男である。
管理など硬い言葉で言っているわけだが、実際はこの少女の身の回りの世話をするいわゆる執事的な立ち回りだ。研究科に入っている時点でこの国のシステム的にはエリートの分類に入るらしいのだが、賭博師になれるのは女だけという法律のせいで念願の賭博師になることはできなかった。賭博師になれば国からの補助も受け、エリート街道まっしぐらだったのに。
ただでさえ、この国では科学者や文豪はいらないものと扱われているし、金が欲しいなら外国とギャンブルをすればいいので、一番簡単に歴史に名を残せるのは賭博師しかいないのである。
ああ・・・・、女に生まれたかったなあ。

「ん・・・美味しい。」

そんな俺の思惑の裏腹、弱冠10歳で賭博師界の最高峰へと駆け上がった天才は自分の才能にも気づかず、そこらのファミレスで売ってそうな簡単なパフェをほおばっている。小学一年生の賭博師適性検査で史上最高の点数を叩き出し、今まで何十回という領土を賭けたギャンブルで連勝し、彼女の取った領土はあともう少しでかつてグレートブリテンが支配した植民地と同等になる。ポーカー、丁半博打、どんなギャンブルでも神の業ともいえる才覚を発揮し、今世紀最強の賭博師として知らぬ者はいない。
とはいえ、見た目はただのバカな幼女である為、世話をしている私からすればこんな女を国から押し付けられたなんて迷惑極まりない話なのである。見た目だけじゃない、中身もギャンブルをしている時以外は、食事にはいちゃもん付けてくる、一緒に寝なくちゃ泣き叫びまくる、毎日頭が痛い思いをしなくてはない人生の厄災の元凶なのである。

「ローズお嬢様!明日は国の領土と領海を賭けたギャンブルですよ!?少しは焦燥感を持ったらどうですか!」

「帝国とか言ってる割には弱い賭博師しか持ってないバカ国にね。安心して、勝てるわよ。アリー。」

自信満々でこう伝えてくるローズ。とはいえ、今までこういって負けたことはないので彼自身何かいう事もできないのである。

「でも早いなあ、宣戦布告したのが二カ月前でしょ?二カ月って早いなあ、夏休みも終わっちゃう。」

10歳が座るには少し高い椅子からぴょんと降りて、こちらの方へ寄ってくる。『ベッドに連れてけ』という意味である。
もう眠たそうな顔をして、明日のギャンブルの事にも全く関心を示さず、勉強もせずに寝ようとしている。
ため息をつくも、少しでも睡眠欲がギャンブル中に存在すると集中力が切れるので呆れながらも彼女を抱きかかえて寝室へと持っていく。
伯爵として、賭博師として国から与えられた二人に住むには大きすぎる屋敷を一人で歩くのは10歳からすれば相当な恐怖らしい、私にしがみついて目をつぶっている。

「明日・・・・本当に自信はございますか?」
「うん。帝国の賭博師なんかには負けられない。

この国の為に、アリーの為にもね!」

相変わらず呆れることしか言わないなと思いながらも、この子を見捨てることはできない。いつも見ててイラつくけど、守るしかない。
いつ死ぬかわからないのだから、残酷で残虐でしかないが、今幸せを与えることしかできない。

ーーーーたった一回でも負けてしまえば。
賭博師というのは処刑という道しかないのだから・・・・。

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